表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

記述主義者と狂騒の夜。-D-

作者: ほんの未来

 3夜連続更新チャレンジ、3夜目。


 この夜を、Dに捧げる。

 2022年10月28日の夜。

 この狂騒の夜のことを、私は当分忘れられそうにない。

 しかし、あの時、感じた情熱を、衝撃を。

 そして、その後の静かな余韻と、新たな葛藤について。

 記憶が薄れることさえ、耐えがたい。

 ならば、どうしよう?


 私は、記述主義者だ。書けばいい。いつも通りに、悪い冗談を書き連ねよう。


 さて、勘の良い読者はサブタイトルのDと、日付でぴんと来ているかもしれない。

 あるいは、結構なゲーマーなのかな? 音ゲーは好き? それとも、あのシリーズが好きなのかな?

 または、ツイッターで、とあるゲームタイトルへの感謝が世界トレンド1位に輝いたことをちらと記憶している方も居るかも知れないね。


 その日は、東方Project、初の公認スマホ向けリズムゲーム。

 東方ダンマクカグラの、サービス終了日だ。


   †


 細工は流々、事前の相談、根回しどんとこい。

 1ヶ月を超える残業フェスティバルに耐え、迎えたこの日。


 私はお世辞にもリズムゲームが得意とは言えない。だが、音楽好きが高じて東方曲もいくらかは聴いていた。森羅万象というサークルのアレンジが特に好みで、大好きな曲のひとつ、有頂天ドリーマーズが初期曲として入っていたことで強く惹かれ、配信日当日にゲームをインストール。当初からYoutubeで音楽ライブ放送などが行われ、同人畑らしい熱気にあふれていた。サービス前は、知ってる好きな曲だけやり込めれば、なんて軽々しく思っていたが、そんな気持ちは軽く吹き飛んだ。なんなら、ぶん殴られたと言ってもいい。数多くの名曲たちが待ち構えていたからだ。私は誘惑に負けた。ああ、当然のごとく完敗だ!


 それから1年3ヶ月。とうとうサービス終了を迎えてしまった。

 売り上げが想定と乖離した、うんたらかんたら。お決まりでありがちな文言はさておき、何故、一体どこが悪かったんだ……?

 正直な所感を申し上げる。


 ――分からない。


 サービス終了が予告された以降も、イベントの開催ペースは変わらない。

 先んじて課金機能が停止されるが、楽曲の追加ペースはむしろ増える。

 特にラストイベント、ダンマク文化祭ファイナルのストーリーは非常にエスプリの効いたもので、物寂しさを含みつつも未来へ繋いでいく見事なものだった。


 ――何故だ、何故こんなことに?


 いやまぁ、大体分かってる。

 どこが悪いとかそういう次元ではなく、全体的に『狂気を感じる』(褒め言葉)

 何故かセガのゲーム機を連想してしまった私も、大概おかしいのだろうか?


 その日は、朝4時に目覚め、ペットボトルの茶を一口含むと、早速ダンカグを起動――ではない、プレイしたまま寝落ちている。既に起動済みだった。

 先月(9月)の頭にスマホを買い換えたばかり。GoogleのPixel6aだ。OSはAndroid12が入っており、追加アプリ無しでプレイ動画を保存できる。

 動画は非常に綺麗で、容量は案の定どか食い。1時間も撮影すれば10ギガが埋まる。なお、空き容量は残り57ギガだったが、前日夜には残り50ギガ。

 ここから、お気に入りのイベントなどの動画を記録し、集めたカードも全てではないもののおおよそ撮影。曲一覧画面も撮影。何故って? 収録曲のサビが流れるからだよ! 1曲ずつ切り替えてメドレーを作りたいんだ。ちなみに収録曲が多すぎて1ファイル当たりの動画サイズ限界を超えてしまい、最後の数曲は別ファイルになったよ! やり直す時間なんてないようわあああああ!

 失礼した。そんなこんなで出社時間。コンビニでコーヒーを買って飲みつつ、時間ギリギリまでプレイした。ダンカグのメインテーマ曲・幻想に咲いた花、東方原曲・幽霊楽団~Phantom Ensemble~、そして有頂天ドリーマーズ。難易度は基本ハード(5段階の内、3番目)だが、有頂天ドリーマーズはエクストラ(上から2番目)でさらにもう1回やった。ハードならパーフェクト(ブリリアントではない、ノーツ6個はグレート評価が混じっていた)、エクストラはファスト2、バッド2、ミス12が混じる。クリアはできているが完全にはほど遠い。


 ちゃんと出社。ゾンビのような顔で朝礼。担当は私。うえーい。がんばろー。

 事情を察している先輩(「~狂騒の夜。(無印)」で心配してくれた先輩。大明神と崇め奉ってる)が応援に来てくれ、定時上がりを実現する。1ヶ月以上に渡る、無茶を押し通した成果だ。まぁ、この日も昼休みは取れなかったけど! 血涙。


 帰宅。時間は18時前。奇跡か。

 サービス終了は20時であり、まだ2時間強ある。

 しかし、サービス終了に合わせたライブ生放送が18時からだ。始まる前に、有頂天ドリーマーズの通常譜面・裏譜面それぞれ最高難度ルナティックをプレイ。当然クリアはできない……が、石を割ってプレイ再開連打。強引にクリアマークを付ける。こうすることでオートプレイが可能になるのだ。この泥臭いリトライも動画に収める。

 ラストライブを鑑賞しつつ、有頂天ドリーマーズの通常譜面・裏譜面、全難易度のオートプレイ動画を撮影。他、気になるカードの専用ストーリーなども撮影。生放送で気に入った曲……というか、最高難度曲、Re:UnknownXを撮影。

 残念ながら、プレイしていない曲が結構ある。最後の狂気じみた大量曲追加も、残業地獄と重なって1曲もやれていなかった。心残りばかりだ。


 サービス終了まで、残り17分。

 やれることは、およそやり尽くした。やり尽くした?


「……なぁ、見てるんだろう? 私をどう思う?」


 加速する思考が、現実を追い越していく。陶酔的没頭感。

 最初にこの感覚を味わったのは、仕事の時だ。以来、時折襲われる。機械の動きを、人の流れを、ひたすら観察し、どうなるかを予想する。トラブルは起きそうか? 良い未来がやってくるのか? 悪い未来になりそうか? 避けるにはどうすれば? 状況に先んじて手を打つ……現在と想定未来を行ったり来たり。

 地面がぐらつく。あくまで主観的な、ただの錯覚。私が今、『いつ』に居るのかが、ぼやける。確度の高い未来。望む未来。ほんの未来を手繰り寄せる。


 それは必然。確定的未来だ。私なら、ほんの未来の記述主義者(わたし)なら。

 この時間に見たモノを、感じたコトを、記述しないはずがないんだ。


 世の中には、理不尽なんていくらでもある。

 最近(無印)だって、過去(ZERO)を辿ったって、そんなんばっかりだ。

 信じていた場所が、いずれ失われるということ。

 ちいさな世界の寿命は、人間のそれよりよほど短い。

 履歴(おもいで)攻略法(アイディア)、人との繋がり、抱いた感情。

 大切なものを巻き添えに、夢の残骸(しずく)(はなむけ)に。


 ――『今一時への尊重が足りないんじゃないか?』


 錯覚だ。未来の自分からのメッセージだなんて。

 ただ、ほんの未来の私ならそう考えると、確信めいた直感があった。


 スマホの保存容量は、まだ20分前後(±2分)残っているはずだ。

 詳細を確認する時間が惜しい。

 残り時間は、13分とすこし。もう手慣れた操作で録画機能を起動する。


 選んだのは、幾たび挑んでも、パーフェクトが取れなかった、大好きな曲。

 森羅万象『有頂天ドリーマーズ』通常譜面、難易度エクストラ。


 ファスト1、バッド0、ミス7。


 序盤から中盤に差し掛かるところで、苦手なノーツがひとつ。後半はそもそも難易度が高い。見たか? 覚えたか? 残りは10分ぐらいのはず。


 ファスト5、バッド0、ミス9。


 かえって悪い。もっと冷静に、と言い聞かせる。リトライ。


 ファスト3、バッド1、ミス12。


 スコアが低い? あ。パーティ1(曲属性汎用)からパーティ2(特化)に変更忘れてた。

 各種スコア表示から、曲選択、パーティ決定画面、合間合間のローディング時間。

 視界の隅には、爆速で流れる、ライブ放送のコメント。

 続編として、スタンドアローン版の情報? そうか良かったな。リトライ。

 もう、残り5分を切る。ラスト1回。


 ファスト6、バッド1、ミス7。


 ハイスコアは微更新したものの、初回トライにさえ届かない。


 残り1分。1プレイ3分ほどだ。1ひく3は? タイムアップ。

 だからどうした? リトライ。


 プレイ中にサ終するんだろう、分かってるよ。

 本当にただの自己満足。精々ハードでパフェ取るのが限界だ。それでもエクストラ。


 この大好きな曲で、こんなひどいプレイングをしたのは初めてだった。

 当たり前だ。

 涙を拭く間さえ惜しんでパーフェクトが取れるほど、音ゲーは甘くない。


 案の定、スコア画面は出ず、ポップアップウィンドウが開く。

 20時をもってサービスは終了。ご愛顧への感謝と、有償石払い戻しの案内。

 タイトル画面に戻る。タップ。当然ながら、ローディング画面には移動しない。

 払い戻しの案内を蹴り、アプリを閉じた。


「……ああ、たのしかった!」


 こうして、ひとつの世界が終わっていく。


 ライブ放送はいよいよ佳境、代表者からの挨拶、感動のスタッフロールへ。


 ただ、相変わらず最後まで良い感じに狂っている。

 ゲームのプレイヤーネーム、10万9215人を全部流すという狂気の沙汰だ。

 1ページに80名ずつ、1366ページにわたって2時間以上流れ続けるという。


 822ページ目に、自分の名前を見つける。プレイヤーネームは「みお」だ。

 自作小説のヒロインで、反射神経や動体視力に優れているキャラクターであることからこの名前にした。フルネーム、猫屋敷みおにしなかったことが悔やまれる。なにせ、この名前でプレイした人は42名いるので、どれが私なのやら? というかむしろ、ペンネームのほんの未来にしておけば良かった。

 スタッフロールに名前が流れるのは事前告知されていたが、残業続きだったかで、名前の変更などはしそびれていたのだ。やり残したことといえば、これもそうか。まぁ、後の祭りである。

 そうこうしている内に、友人の名前を見つける。ああ、やっぱりその名前だったか。重複していないのが正直羨ましい。


 スタッフロール窓を開きつつ、スタンドアローン版の情報を調べる。

 クラウドファンディング……Steam版で提供だが、1500万円集まったらSwitch版も開発? 悩ましい。環境的に、Switch版の方が助かるのだが。

 やっぱり音楽プランだろうか? 2万8800円とお高めではあるが、ベストアルバムが付くというのはやはり魅力的――?

 そして、小さな文字に目が止まる。


 大満足プラン。4万9800円、内容中略、『クレジット掲載・中』


 なん……だと……。


 いや、掲載・大は99万9999円プランと150万円プランだから流石に論外なんだ、そこまで贅沢は望んでいない。いやだがこれは。

 この会社、商売が上手いのか下手なのかさっぱり分からない!?

 いやいや、音楽CDさえあればいいよ、やっぱり音楽プランで――。

 大満足プラン(49800)ひく音楽プラン(28800)は? 2万1000円。何計算してんの私!?


 いやいや、ちょっと待ってよ?

 無印でも書いたが、私は音楽が好きだ。

 サンホラの前作がこないだアプリ化されたし、来年には新譜がブルーレイで出るんだよ!? 特装盤の予約期間なんて1ヶ月ぐらいで締め切るし、通常盤も気になるし!?

 計算する。

 アプリ版(4900)たす、特装盤(38500)たす、通常盤(22000)は? 6万5400円。

 これに、大満足プラン(49800)をたすと? 11万5200円。


 いやいやいやいや!? 流石に、こんな金額を急に用立てるのは――ん? 最近、なんかこんな数字を計算したような?


 先月の給与明細。残業代と休日出勤手当の合計額が11万6000円ほど。


 ちょ、ちょ――待って待ってどういうこと!?


 筆者(わたし)困惑中。しばし、猶予を。


   †


 ふう。


 読者の皆様に、深くお詫び申し上げます。


 私は一昨日、「記述主義者と狂騒の夜。」でこんなことを書きました。

 残業代を貯金したら、その分、日本の財政赤字が増える。世のためになってないと。

 あれは嘘だ。真っ赤な嘘だ。


 昨日、「記述主義者と狂騒の夜。-ZERO-」でこんなことを書きました。

 10割ノンフィクション。実際にあったことを簡単にまとめただけだと。

 つまりこれも嘘だ。愚にもつかぬ嘘っぱちだ。


 世界は面白おかしくできている。それを記述するのは、たまらなく楽しい。


 私も微力ながら、日本経済の活性化に協力したいと思うんだ。

 え? どうせいつもの悪い冗談だろうって?


 そう思うなら、是非ゲームを買ってクレジットを確認したらいいんじゃないかな?(にっこり^^)

 そういえば、このクラウドファンディングの開始が今日からですね。(目を逸らしつつ)


 こんなダイレクトマーケティングオチを思いついてしまったがために、3夜連続更新と相成りました。仕方ない。これは仕方ない。

 クラウドファンディングネタの短編(学生ローンで困らないための、たったひとつの冴えたやり方。)も書いていたし、個人的にも良い切っ掛けかなと。

 やるつもりではありますが、クレカ登録etcで手続きトラブルとかしてたら申し訳ない。


 なお、57ギガあったスマホの空き容量は現在、残り2ギガ。どうしてこうなった。

 あと、自作のメドレー動画ですが、そんなものより完璧なメドレーを公式が上げています。(例の2時間超のスタッフロールで、全曲流れます)一体あの時間はなんだったんだ……。


 ゲーム実況小説も書いてみると面白いものです。なるべくリズムゲーム一般に使われる用語を多用し、曲はタイトルのみ、歌詞は厳禁とし、大きな問題が出ないよう配慮したつもりではあります。

 遠慮ばかりで書きたいことが書けないのも問題ですし、著作権に反するのも問題です。等しく尊重できればと思っていますが、『まずはやってみる』。そうでないと可否の判断さえできません。

 問題あれば取り下げも視野に入れますが、はてさて。


 さて、次回は『そして誰もいなくなった。ついでに、お金もなくなった。』経済ミステリー、4夜連続は厳しいかな?

 あとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが爆上がります。よろしくね!^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ