第六話 ダンジョンブレイク
零さん!外ですよっ!」
「あぁ、だがここでお別れだな。生憎おれはここにいちゃ不味いんだ」
「そ、そうですか…。ありがとうございました!」
そう言って香織は頭を下げた。そして、俺はそれを横目で見た後家に帰った。
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「ただいまぁ〜」
「あ!おかえりお兄ちゃん。ご飯できてるから食べよっ」
「あぁ、そうするよ」
俺は靴を脱ぎ、手を洗ってうがいをし、席についた。
「いただきます」
「召し上がれ」
今日はカツカレーだった。相変わらず俺の量は馬鹿みたいに多かった。
「やっぱり咲が作った飯は美味いな〜」
「えへへ、ありがとっ。あっ、今日A級ダンジョンがEX級ダンジョンに変化したらしいよ」
「うん、俺も聞いたよ。恐ろしいな」
「うん…死者も出たんだってね。はぁ…」
「おいおい、咲がそんなに思い詰める事ないだろ?仕方のない事なんだ。みんなそれ相応の覚悟を持ってダンジョンに潜ってるんだ」
「そうだよね。ありがとうお兄ちゃん」
「おう」
晩飯を食べ終わった俺は自分と咲の分の皿を洗って風呂に入り寝た。
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俺はEX級の3倍のステータスをD級にまで落とし、金稼ぎをしていた。今はその休憩中で公園のベンチに座っていた。
「あっ!零さんだ!」
「香織か。昨日ぶりだな」
「はい!いきなりで申し訳ないのですが、どこか良いギルドってないですかね?」
「ギルドか…香織のステータスはまぁまぁ高かったよな。そしたらアマテラスとかいいんじゃないか?ちょうど明後日が入団試験だし」
「アマテラスですか…そこにします!早速手続きをしてきますね!あっ!ついでに零さんの分もしておきますね!」
「あっおい!…何で俺も何だよ…」
特に追いかけて止めるまでの事でもないのでほったらかしておいた。それに行かなかったら良いだけの話だしな。
「よし、そろそろダンジョンに戻るか」
そして俺はまた、金を稼ぐ為にダンジョンに潜った。
だか、ダンジョンに行く途中に地上に魔力が漂っている事に気づいた。
「…ん?まさかっ!?」
俺は魔力の濃い方へ全力で走った。すると、そこにはB級ダンジョンがダンジョンブレイクを起こしていた。
「これは不味いぞ」
ダンジョンブレイクとは、本来ダンジョンの中にしかいない魔物が外に出てくる事だ。しかも魔物達はダンジョン内よりも強くなっているのだ。さらに不運な事にここは家の近くだった。
「頼む…無事でいてくれよ…咲!」
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「今日は何作ろっかな〜」
ダンジョンブレイクが起きる前、咲は夕食の材料を買いに近くのスーパーまで来ていた。
「今日は魚のフライにでもしようかな」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「な、なに!?」
「ダンジョンブレイクだぁ〜!!」
それを聞いた咲は一目散に家に逃げ帰った。しかし、近所のダンジョンで起こったので近くに魔物が徘徊している。見つかって襲われでもしたら大変な事になる。そう思いながら咲は家の中で息を殺して潜んでいた。しかし、ここで心配した友達から電話がかかってきてしまったのだ。着信音が辺りに大きく鳴って魔物達が集まってきていた。
「どうしよう…」
見つかるのも時間の問題だと考えた咲は裏口から外へ出て逃げ出した。しかし、すぐに見つかり追いかけられてしまう。魔物と戦ったことがない人間が逃げられる筈もなく咲は魔物に捕まってしまった。
「…っやめて!はなして!」
「ギエ、ギエ!」
「その子を話しなさいっ」
「ギエ?」
「えいっ」
剣で斬りかかられた魔物は真っ二つにされ息絶えた。
「大丈夫?」
「はい、ありがとうございます」
「私は香織。あなたは?」
「咲…です」
「咲ちゃんか!私と一緒に避難しよ?」
「はい」
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「クソッ…どこだ、咲!どこだ!」
俺は相当焦っていた。両親に続き咲まで失ってはもう俺には何も残らなくなってしまう。家の近くまで来た時、香織と一緒にいる咲を見つけた。
「咲!無事だったか!心配したぞ!」
「お兄ちゃん…会いたかったよ…」
俺は咲の側まで駆け寄り抱きしめた。出来るだけ優しく包み込むようにした。
「あの〜零さんの妹さんなんですか?」
「あぁ、咲だ。」
「お兄ちゃん香織さんと知り合いなの」
「あぁ、色々あってな」
「零さんは私の命の恩人なんですよ!」
「えぇ〜?お兄ちゃんより強そうですけど」
「まぁまぁそれより避難するぞ」
「避難するって言っても囲まれてるから無理だよ」
「クソッ」
俺達は知らぬ間に魔物達に囲まれていた。その者達はダンジョンブレイクによってA級まで強くなっている。
「お兄ちゃん…」
「心配するな、お兄ちゃんに任せろ」
俺は新しく覚えた雷撃魔法を使う事にした。
「ライトニング」
その瞬間、目の前がピカッと光って魔物達は焦げて死んでいた。
「え?え?」
「説明は後だ。早くいくぞ咲」
その後俺達は安全な場所へ避難し、ダンジョンブレイクも収まったので家で香織と咲と夕食をとっていた。
「ねぇ、お兄ちゃんって強いの?」
「あぁ、一応な。どこから話そうか…」
俺は香織にも聞かせるように荷物持ちとして参加したレイドでダンジョンが変化し、一人取り残され魔物に殺されかけた時にスキルが覚醒し、何とか生き残ったことや、それを機に魔物を倒しては魔石を換金してステータスに割り振ったりしていた事を話した。
「香織と会ったのはEX級ダンジョン内だ」
「え!?前A級ダンジョンがEX級ダンジョンに変化したって言ってたやつ!?」
「そうですよ!そこで魔物に殺されかけていた私を助けてくれたんですよ!あの時の零さんはかっこよかったです!」
「や、やめてくれよ…恥ずかしい」
「そうだったんだ…」
「まぁ、そう言う事だ。これからはもっと裕福な暮らしができるぞ」
「ありがとうお兄ちゃん」
「それはこちらのセリフだよ」
「うん!兄弟っていいですね!」