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27話 おめでとう

「おめでとう、シルフィーナ」


 まず最初にお祝いの言葉を直接かけたのは、父さまだ。

 にっこりと優しい笑みを浮かべている。


 普段は、公爵として厳しく、自分にも他人にも厳しい人なのだけど……

 家にいる時はどこにでもいるような普通の人だ。

 いや。

 娘にとても甘い、親バカな父さまなのだ。


「あ、ありがとうございます……」

「今日はシルフィーナが主役なのだから、そんなに緊張しないでくれ。ほら。これは、プレゼントだよ」


 フィーは恐る恐る、両手よりも大きなプレゼントボックスを受け取る。

 目で、開けていい? と父さまに問いかける。

 父さまがゆっくり頷いたのを見て、フィーはそっとプレゼントボックスを開けた。

 中に入っていたのは……


「わぁ……綺麗なお洋服。それに、髪飾りも……」


 白のワンピースと花を模した髪飾りがセットになっていた。

 どちらもシンプルなデザインではあるが、それ故に、フィーの魅力を最大限に引き立てるだろう。

 それに素材も高級品が使われているらしく、キラキラと輝いて見えるほどだ。


「私達のプレゼントよ」


 母さまが、補足するように言う。

 さては、父さま……年頃の娘にどんなプレゼントを贈ればいいかわからず、母さまと一緒にするということで、難を乗り切ったな?

 やれやれ……と思うものの、父さまなりに、フィーに喜んでほしいと考えた結果だ。

 現に、フィーは瞳をキラキラさせて喜んでいるし、悪い選択ではない。


「次は俺の番だな。シルフィーナ、誕生日おめでとう! これは、俺からのプレゼントだ」


 アレックスが元気の良い笑顔と共に、フィーに手の平サイズのプレゼントボックスを差し出した。


 彼がなにを買ったのは、聞いていない。

 聞いても教えてくれなかった。


 しかし、乙女ゲームにもメインヒロインの誕生日イベントは用意されており、ヒーロー達からプレゼントをもらうことができる。

 そのイベント通りに世界が進むのだとしたら……


「えっと、その……ありがとう、アレックス」

「気にするなよ。俺達、友達だろう?」

「うん……開けてもいい?」

「ああ、もちろんだ」


 フィーは、父さまと母さまのプレゼントを、一度テーブルの上に置いて、それからアレックスのプレゼントボックスを受け取り開封する。


 中から出てきたのは、ブローチだ。

 高級品というわけではなくて、一般に流通している普通のもの。


 でも、その色、その形はフィーにピッタリと合っている。

 父さまと母さまがプレゼントした、服と髪飾り以上に、フィーの魅力を引き立てている。


 さすが、幼馴染。

 見る目は抜群らしく、フィーの好みを一番に捉えたプレゼントだ。


「わぁ」

「あー……どうだ?」

「うん、すごくうれしい。ありがとう、アレックス」

「そっか……うん。シルフィーナが喜んでくれて、俺もうれしいぜ」


 フィーのキラキラとした笑顔に、アレックスはやや目を逸らしつつ、そう言った。

 照れているのだろう。

 まったく、と思わないでもないが、こういう仕草がたまらない。

 乙女ゲームをプレイしていた時は、照れながらも祝福してくれるアレックスの姿に、萌え死ぬかと思ったほどだ。


 フィーも、同じくらいに感動しているのだろう。

 どこかうっとりとした様子で、アレックスを見ている。


 むう。


 メインヒロインとヒーローが結ばれる定めであることは理解しているものの、やはりおもしろくない。

 フィーの姉として、彼女の一番でありたいのだ。

 メラメラと対抗心と嫉妬心が燃え上がる。


「次は、僕の番かな?」


 次に名乗りをあげたのは、ジークだ。


「シルフィーナ。誕生日、おめでとう」

「あ、ありがとうございます。まさか、ジークさまも祝ってくれるなんて……」

「ひどいな。その言い方だと、僕が薄情者みたいじゃないか」

「あっ、いえ、その!? そ、そういうつもりはなくて……」

「冗談だよ。うん。きみはきみで、ちょっといじめたくなってしまうね」

「あぅ」


 ジークは優しそうに見えて、クールでドライで……ついでに言うと、Sだ。

 乙女ゲームの展開通りに、フィーに目をつけているようだ。


 私のかわいいフィーに色目を使うな!


 ムカッとするものの、我慢我慢。

 今はフィーの誕生日なのだから、今日だけは堪えないと。

 普段だったら、絶対に邪魔するけどね。


「僕のプレゼント、受け取ってくれるかい?」

「は、はいっ」


 先ほどと同じように、アレックスのプレゼントを一度テーブルに置いて、ジークのプレゼントボックスを受け取る。

 アレックスのものより更に小さい。


「えっと、その……」

「うん、開けてもいいよ」

「は、はい」


 小さなプレゼントボックスには、綺麗な細工が施された小瓶が入っていた。

 中に琥珀色の液体が収められている。


「これは……?」

「香水だよ。シルフィーナの歳なら、香水も当たり前かな、と思ったんだ。匂いはきつくないし、むしろさわやかなものだから、きっと気にいると思うんだ」

「あ、ありがとうございます」


 フィーは年頃の女の子だ。

 おしゃれに興味がないなんてことはなくて、香水というプレゼントに、うれしそうに笑ってみせた。


「改めて、おめでとう。きみがウチの娘になってくれたことは、とてもうれしいよ」

「ええ、そうね。これからもよろしくね。それと繰り返しになるのだけど、おめでとう、シルフィーナ」

「これで、シルフィーナも十六歳か……ちぇ、俺が一つ下になったか。でもまあ、俺達の関係が変わるわけじゃないか」

「これからも、よろしくね。きみ達姉妹は、とても興味深い。仲良くしてくれるとうれしいな」


 父さまと母さま。

 アレックス。

 そしてジークが、それぞれに祝福の言葉をかける。


 えっと……


 フィーを祝福するのはいいんだけど、まだ私の番が残っているのだけど?

 私、まだプレゼントを渡していないのだけど?

 それなのに、もうクライマックス、みたいな雰囲気を作るのはやめてほしい。

 ぷんぷん。


「……」


 ふと、フィーの様子がおかしいことに気がついた。


 さっきまで笑顔を浮かべて喜んでいたのだけど、今は真逆の表情をしていた。

 なにかを必死に我慢しているようで……

 迷子になった子供のようで……

 とても儚く、寂しく、脆く見えた。


「……どう、して……」


 フィーの頬を涙が伝う。

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新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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