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26話 誕生日パーティー

「ただいま戻りました」

「戻りました」


 家に帰り、二人で挨拶をする。


 普段なら、すぐにメイドが出迎えてくれるのだけど、今日はそれがない。

 サプライズパーティーのため、あえて出迎えはなしにしているのだ。


「あれ? みなさん、どうかしたんでしょうか?」

「もしかしたら、全員で買い物に出ているのかもしれませんね。ほら、屋敷が静かでしょう?」

「あ、そうですね。物音だけじゃなくて、話し声も聞こえません」

「ですが、よくよく考えてみると、全員がいないのはおかしいですね。少し探してみましょうか。書き置きなどがあるかもしれません」

「はい」


 よし。

 うまい具合に、フィーを誘導することができた。


 フィーは、人の言葉を疑うことのない、とてもピュアな心を持っているから、誘導できるという自信はあった。

 でも、ここまでうまくいくと、将来、悪い男にたぶらかされないかと不安になる。


 大丈夫よ、フィー。

 私はずっと一緒にいて、守ってあげるからね。


「フィー、誰かいましたか?」

「いいえ、誰もいません。書き置きの類も見つかりません」


 すぐに、パーティー会場である部屋に移動しては怪しまれるかもしれないと思い、まずは玄関ホール付近を見て回る。

 誰もいないことを不安に思っているらしく、フィーは少し怯えた様子だ。


 怯えているところも、なんだか小動物みたいでかわいい。

 そんなことを思ってしまう私は、とことんフィーに惚れ込んでいるらしい。


 少し申しわけなく思うものの、サプライズが順調に進んでいることを確信する。

 マイナス方面の感情を抱いた分、驚きは喜びに変わるはず。


「少し奥を見てみましょうか」


 いよいよ本番だ。

 フィーは驚いてくれるだろうか? 喜んでくれるだろうか?


 もしも、落胆させてしまったら?

 こんなものは望んでいないと、拒絶されてしまったら?


 かわいいフィーにそんなことをされたら、私は、ショックで死んでしまうかもしれない。

 でも。

 怖いからと逃げるわけにはいかない。

 心の壁を取り除くために。

 私達が本当の姉妹になるために。

 ここでがんばらないと意味がないのだ。


「あら? ドアノブが硬いですね……フィー、ちょっと開けてみてくれませんか?」

「はい、わかりました」


 ドアノブが回せないフリをして、フィーと場所を交換する。

 開かないのは、もちろん演技。

 フィーはあっさりと扉を開けて……中が真っ暗なことに気づいて、不思議そうな顔になる。


「あれ? どうして、明かりが点いていないんでしょうか? それに昼なのに、カーテンも全部閉められていて……」


 不思議そうにしつつ、フィーが部屋の中に入る。

 よし。

 内心でうまくいったと喜びつつ、私も部屋の中へ。


 そして、合図として指を鳴らす。


 パチンという音と共に、部屋の明かりが点いた。

 さらにカーテンが一斉に開かれて、陽の光が差し込む。


「ふぇ?」


 花などが飾られた会場には、たくさんの料理が並べられていた。

 その手前に、華やかに着飾った母さま。

 ピシッと決めた父さま。

 そして、アレックスとジーク。


 フィーはなにが起きているかまったく理解していない様子で、半分くらい混乱している。

 そんな彼女に向かって、みんなはクラッカーを向けて、


「「「誕生日、おめでとう!」」」


「ぴゃあ!?」


 クラッカーの音に、フィーがびくりと震える。

 気の弱い妹、かわいい。

 怖いと、私に抱きついてもいいよ?


「えっと……こ、これは?」

「ふふっ、驚きましたか?」

「お母さま、お父さま……それに、アレックスにジークさまも。えっと、えっと……あ、アリーシャ姉さま?」


 まだわからないらしい。

 助けを求めるような感じで、フィーがこちらを見る。


 そんな妹に、私は笑顔で告げる。


「誕生日おめでとう、フィー」

「たん……じょうび?」


 未だ実感がないらしく、理解できていないらしく、フィーはキョトンとしたままだ。

 うーん、ちょっと鈍いのかしら?

 まあ、フィーはメインヒロインだから、鈍いとしても理解できる。


「忘れたのですか? 今日は、フィーの誕生日なのでしょう?」

「……あっ」


 どうやら、本当に忘れていたらしい。


 自分で自分の誕生日を忘れるなんて。

 私の妹は、変わった子だ。


 ……いや。


 もしかしたら、それすらもフィーの心が関わっているのだろうか?

 誰にも必要とされていないと思いこんでいるから、誕生日も意識することはなかった。

 どうでもいいものだと、そう考えるようになってしまった。


 だとしたら……ううん。

 推測とか答え合わせとか、そういうのは後。

 今は、たくさんフィーに楽しんでもらって、そして、私の気持ちを知ってもらわないと。

 もう二度と、妹に寂しい思いなんてさせない。

 虚しさなど感じさせやしない。


 これからはずっと、幸せでいてもらうのだから。


「おめでとう、フィー」


 改めて、台詞を繰り返した。

 そこでようやく、サプライズパーティーであることに気がついたらしく、フィーがあわあわと慌て始める。


「えっ、そんな、まさか……こ、これ……私の?」


 もちろん、というようにみんなが頷いた。


「……」


 ようやく理解はしたみたいだけど、でも、実感が湧いていないらしく、フィーは目を丸くしたまま動かない。

 主役がそんな状態では、私達もどうしていいのやら。


「ほら、フィー」

「あ……アリーシャ姉さま」

「あなたは主役なのだから、あちらへ」

「は、はいっ」


 私に背中を押されて、フィーはパーティー会場の中心に……みんなの輪の中に入った。

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新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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