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22話 買い物

「……なんで、こんなことになっているんだ?」


 放課後。

 一緒に街を歩いていると、アレックスが不機嫌そうに言う。


「なんのことですか?」

「買い物に付き合う約束はしたが……でも、コイツがいるなんて聞いてないぞ?」


 アレックスが睨みつける先に、ジークの姿が。

 彼は睨みつけられているのだけど、気にすることなく、涼しい顔をしていた。


「シルフィーナは僕の友達でもあるからね。誕生日とあれば、もちろん、祝うよ」


 さも当然のように、ジークは言う。


 うんうん、わかっているね。

 かわいいフィーのプレゼントを選ぶというのだから、直接、自分の目で確認することは当たり前のことだ。

 だから、一緒に買い物へ出るのは当然のこと。


 ……なのだけど、アレックスは不満そうだ。

 ジークは王族なので、そのことに不満を抱いているのだろうか?


「では、行きましょう」


 二人の仲は悪そうだけど、心配はしていない。

 彼らヒーローは、最終的に、どのルートでも悪役令嬢を断罪するために一致団結して、かけがえのない友達になる。

 今は衝突していたとしても、やがて仲良くなるだろう。

 だから心配不要。


 それよりも今は、フィーのプレゼントを選ぶことの方が大事だ。

 かわいいかわいい妹が心から喜んでくれるような、そんなプレゼントを選ばなければ。


 歩くこと少し、商店が並ぶ通りに到着した。

 金細工からぬいぐるみまで、色々な店がある。

 放課後とはいえ、これだけたくさんの店を全て見ることはできない。

 かといって、どの店に良いプレゼントがあるかわからない。


「なあ、アリーシャ。そこのぬいぐるみ店に入ってみようぜ」

「アリーシャ。そこのアクセサリーショップに入らない?」


 アレックスとジークの意見がバラバラに。


「おいおい、あんたの目は節穴か? ぬいぐるみの方がいいだろうが」

「きみの目こそ節穴かな? 女の子は、アクセサリーの方が喜ぶよ。ぬいぐるみが悪いとは言わないけど、子供の趣味じゃないかな」

「あんだと?」

「なにか?」


 にらみ合う二人。

 このヒーロー達、本当に後々で和解するのだろうか?

 協力するのだろうか?

 今の二人を見ていると、少し不安になる。


 でもやっぱり、今はフィーのプレゼントを優先しないと!


「とりあえず、二つ共、見て回りましょう」

「まあ……」

「アリーシャがそう言うのなら」


 二人共、納得してくれたようなので、まずはぬいぐるみ店へ。


 広い店内に、猫、犬、亀、鳥……などなど、様々なぬいぐるみが陳列されていた。

 大中小のサイズに分かれていて、それぞれ値段も異なる。

 二体セットで一つという、珍しいぬいぐるみもあった。


「色々な種類がありますね。こんなお店なら、フィーが喜んでくれるようなぬいぐるみもあると思います」

「だろ?」

「くっ……」


 アレックスが得意そうな顔になり、ジークが悔しそうな顔に。

 本当にこの二人、対照的だ。


「少し見て回りましょうか」


 店内を歩いて商品を見る。

 フィーにプレゼントするとしたら、どのぬいぐるみがいいだろう?

 子供っぽいかもしれないけど、でも、時折幼い仕草を見せるなど、反則級のかわいさを見せている。

 そんなフィーなら、ぬいぐるみも喜んでくれるかもしれない。


「なあ、アリーシャ。俺達で、最高のプレゼントを探そうぜ」

「そうですね」

「ぐっ」

「でも……せっかくだから、アクセサリーショップも見ておきたいですね。せっかく、ジークさまが選んでくれたのだから」

「ぐっ」

「ふふん」


 悔しそうな顔になるアレックス。

 得意げに笑うジーク。

 そんな二人と一緒に、一度ぬいぐるみ店を後にして、それからアクセサリーショップへ。


 こちらは、ぬいぐるみ店に比べると少し狭い。

 でも、取り扱っている商品がアクセサリーなのでスペースをとらないため、特に問題はないようだ。

 ブレスレット、ネックレス、指輪、イヤリング……たくさんの商品が陳列されている。


「色々あって迷いますね……ジークさまは、どれがいいと思いますか?」

「そうだね。僕なら、このネックレスがいいんじゃないかと思うよ。シルフィーナによく似合うと思わない?」

「あぁ、なるほど。確かに。フィーによく似合いそうですね。ありがとうございます、ジークさま。とても参考になりました」

「ううん、どういたしまして。アリーシャの役に立てたのなら、よかったよ」

「ぐぐぐ」


 ジークがニヤリと笑い、それを見てアレックスが歯がゆそうな顔になる。

 さきほどと立場が逆転しているのだけど……

 それにしてもこの二人。

 さきほどから、なぜ対立しているのだろうか?


 フィーのプレゼントを選ぶのは自分だ、と張り合っているのだろうか?

 さすが、フィー。

 メインヒロインだけあって、争わせてしまうほどに、ヒーロー達の心を虜にしているのだろう。


 姉として鼻が高い。

 でもやっぱり、お嫁には出したくないから、その対策も今度考えておかないと。

 フィーは、私と一緒に、ずっと仲良くイチャイチャして過ごすのだから。


「でも……うーん、迷いますね」


 ぬいぐるみか、アクセサリーか。

 どちらもとても良いものだけに、なかなか決断ができない。


 いっそのこと、二つともプレゼントしてしまおうか?

 それくらいのお金はあるのだけど……

 いや、でもそうしたら、フィーは遠慮して困ってしまうような気がする。

 あの子、妙なところで一歩引いているというか、わがままを言ってくれないのだ。

 妹なのだから、多少のわがままは、むしろ歓迎するのだけど。


「ふむ?」


 考えてみると、おかしなことに気がついた。


 フィーはわがままを言わない。

 それどころか、自己主張をすることすらない。


 例えば、夕飯はなにが食べたい? と聞いても、自分の主張を口にしない。

 私の好きなものとか、なんでも大丈夫ですとか……決して自分の望みを答えない。

 夕飯のリクエストに限らず、他の場面でも、同じく自己主張をしていない。


 遠慮している?

 そういう性格だから?


 でも、それだけではないような気がした。

 そんな言葉で片付けてはいけないような、なにか、が隠されているような気がして、落ち着かなくなる。


「なあ、アリーシャ。もう一度、ぬいぐるみ店に行ってみないか?」

「ぬいぐるみよりも、アクセサリーの方がいいよ。ここで決めてしまおう」

「……ごめんなさい、二人共。私、急用を思い出したので、ここで帰りますね」

「「えっ」」


 フィーのことが気になって気になって仕方なくなった私は、急いで家に帰ることにした。

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新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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