表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/29

21話 誕生日

「お金……ですか?」


 予想外のお願いをされて、ついついぽかんとしてしまう。


 アレックスは教会の子。

 確かに、お金はないかもしれないが……

 だからといって、幼馴染の姉にお金の無心をするなんてことは似合わない。


 そうしなければならない、よほどの理由があるのだろうか?


「いくらぐらいですか?」

「なんとも言えないが、そんなに高い金額にはならないと思う」


 アレックスが提示した金額は、言葉通り、高い金額ではなかった。

 家を買えるほどの金額を勝手に動かすようなことをしたら、さすがに怒られてしまうが、それくらいならば問題はない。


 ただ、なにに使うのか?

 それをはっきりさせないことには、お金を貸すようなことはしない。

 友達だからこそ、お金のやりとりはしっかりしないといけないのだ。

 決して、悪役令嬢だから意地悪をしているのではない。


「それくらいなら、私の裁量でどうにでもなりますが、目的を教えてくれませんか?」

「あー……なんていうか、その」


 なぜかアレックスの顔が赤くなる。

 照れているみたいだけど、どうして?


「……なんだよ」

「すみません、よく聞こえませんでした」

「だから……誕生日、なんだよ」

「誕生日?」

「もうすぐ、シルフィーナの誕生日なんだ! だから、プレゼントを買ってやりたいんだよ!」

「っ!!!?!?!?!?」


 アレックスの言葉に、私は強い衝撃を受けました。

 ともすれば気絶していたのではないかと思うほどの、強烈な精神的ショック。


 そんな、まさか、こんなことが……


 私は、がしっ、とアレックスの両肩を掴みつつ、間近で問い詰めます。


「フィーの誕生日が近いのですか!?」

「お、おいっ、アリーシャは別の意味で近い!?」

「いいから答えてください! もうすぐフィーの誕生日なのですか!?」

「そうだよ、三日後だ」

「そ、そんな……」


 まさか、三日後にフィーの誕生日があるなんて。

 国の建国記念日に匹敵……いや、それ以上に重大なことを見逃していたなんて。


 ショックのあまり、全身から力が抜けて、がくりと両手と膝を地面についてしまう。


「うぅ……私は、フィーの姉失格です……」

「まさか……アリーシャは、フィーの誕生日を知らなかったのか? 姉なのに?」

「うぐっ」


 アレックスの言葉が矢のように私の心に突き刺さります。


 たぶん、彼は悪意はないのでしょうが……

 それだけに事実が強調されて、余計に辛いです。


「私は……姉、失格です。大事な妹の誕生日を知らないなんて、そんな愚かなことを……ごめんなさい、フィー。姉は、どうしようもなく愚かな存在でした……やはり、私は悪役令嬢なのですね」

「お、おい。そんなに気にするなよ、落ち込みすぎだろ」

「ですが私は、大事な妹の誕生日を知りませんでした……大事なのに、それなのに……やはり、姉失格です……」

「最近、姉妹になったばかりなんだろ? なら、知らなくても無理はないさ。俺だって、シルフィーナと知り合ってから、三年後くらいに知ったくらいだからな」

「……アレックス……」

「っていうか、アリーシャが姉失格なんてことないだろ。絶対にねえよ。悔しいが……アリーシャは、誰よりもシルフィーナのことをわかっているように見えるし、これ以上ないくらいに立派に姉をしているよ」


 もしかして、私を励ましてくれている?

 まさか、悪役令嬢の私がヒーローに助けられる日が来るなんて。


 その事実がおかしくて、少し元気が戻ってきた。

 立ち上がり、頭を下げる。


「ありがとうございます。アレックスのおかげで、落ち着くことができました」

「あ、ああ。それは……うん、よかったな」


 なぜか、アレックスの顔が赤くなる。


 ひねくれている彼のことだ。

 先ほどは、フィーにプレゼントを買うということを恥ずかしく思い、照れていたのだろう。

 でも、今度は、なぜ照れているのだろうか?

 そんな要素はないはずなのだけど……うーん?


 まあいいか。

 それよりも今は、フィーの誕生日のことを考えなければいけない。


「アリーシャが知らないっていうことは、両親も知らないのか?」

「その可能性は高いですね。父さまも母さまも、フィーを大事にしていますが、共に忙しい方。引き取ったばかりということもあり、失念しているのでしょう」

「ったく、これだから貴族は」

「安心してください。私が知った以上、このままにしておくつもりはありません。さっそく、パーティーの準備をしましょう」

「パーティー?」

「パーティーの来賓の選別に、案内状の作成。一流のシェフを集めて、料理も考えてもらわないと。それから、イベントも開催したいですね。舞台に立つ歌姫などのスケジュールは、今から押さえることは……」

「待て待て待て」


 フィーの誕生日パーティーについてあれこれと考えていると、アレックスが急にストップを出してきた。

 どうしたのだろう?


「いきなり、そんな大規模なパーティーを開こうとするな」

「なにを言っているのですか? フィーは、公爵令嬢の娘なのですよ? これくらいのことをして当たり前なのですよ」

「そうかもしれないが……今回はやめておいた方がいい。シルフィーナも、まだ貴族っていう環境に慣れたわけじゃないだろ? それなのに大規模なパーティーなんて開催されたら、ショックでどうにかなるかもしれないぞ」

「それは……」

「大規模なパーティーは、来年、開催すればいい。今年は、身内だけのパーティーにした方が無難だ。その方が、シルフィーナも喜ぶ」

「むう」

「どうしたんだよ、むくれて」

「だって、私よりもアレックスの方がフィーについて詳しいみたいで、悔しいです。私は、フィーの姉なのに」

「なら、これから詳しくなればいいだろ。それこそ姉なんだから、色々と機会はあるはずだ」

「……アレックスは、優しいですね。ありがとうございます」


 私がにっこりと笑うと、


「や、優しくなんてねえよ。これくらい……まあ、普通だ。気にするな」


 やや早口に、アレックスはそう言うのだった。

 照れているのだろうか?


 いや、そんなことはないか。

 フィーならともかく、悪役令嬢の私に照れる理由がない。


「わかりました。フィーの負担になってしまっては意味がないので、今年は身内だけのパーティーにしましょう」

「ああ、そうした方がいい」

「私と父さまと母さまとアレックス。あと……ジークさまも、呼べば来てくださるかしら? フィーの交友関係はよくわからないから、今度、さりげなく聞き出すとして……

「……なあ」

「はい?」

「俺も参加者に入っているのか?」

「もちろんですよ」

「だが……俺は、平民だぞ? 孤児だから、ある意味で平民以下だな。そんなヤツを招いたりしたら、クラウゼン家の名前に傷がつくんじゃあ……」

「そのようなことで傷つくくらいならば、いくらでも傷つきましょう」

「っ」

「フィーの大事な幼馴染を招くことができない誕生日パーティーなんて、意味がありません。私は、どのようなことをしても、アレックスを招待しますよ」

「……ったく、かなわないな。そうだったな。アリーシャはそういうヤツだ」

「どういう方ですか?」

「秘密だ」


 いたずらっぽく笑いつつ、アレックスはそう言うのだった。

 よくわからないけれど、バカにされているとかそういう雰囲気はないので、特に追求しないでおいた。


「アレックスも、パーティーの準備を手伝ってくれませんか?」

「ああ、もちろんだ。あと、最初の金の件だが……」

「はい。もちろん、貸しますよ。あ、そうだ。今日の放課後、フィーのプレゼントを一緒に買いに行きませんか? 幼馴染であるアレックスの意見を参考にしたいので」

「わかった。なら俺は、姉であるアリーシャの意見を参考にさせてもらうよ」

「約束ですね」


 こうして私は、放課後、アレックスと一緒に買い物をする約束をしたのだった。

作品を読んで「おもしろかった」「続きが気になる!」と思われた方は

下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けますと、

執筆の励みになります。

長く続くか、モチベーションにも関わるので、応援、感想頂けましたら幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ お知らせ ◆
新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ