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20話 二人の対立とどうでもいい夢

「シルフィーナ、アリーシャ。おっす」


 朝。

 学舎に到着すると、アレックスと出会う。

 彼は太陽のように明るい笑顔を浮かべていて、それを私に対しても向けてくれている。


「おはよう、アレックス」

「おはようございます」


 フィーと一緒に挨拶を返しつつ、この様子なら告発イベントはまだ発生しないかな? と一安心する。


「なあ、アリーシャ」

「はい、なんですか?」

「あー……その、なんだ。またお菓子を作る予定はないのか?」

「え? どうしてですか?」

「いや、大した意味はないんだが。まあ、味見役くらいはしてやろうかな、って思ったんだよ」

「アレックス、もしかして、アリーシャ姉さまの作ったお菓子を食べたいの?」

「そ、そんなわけないだろっ。また気まぐれに作ってこられて、まずいものを食べさせられたらたまらないから、今のうちに練習をしとけ、っていう話だよ」

「まあ、失礼ですね。でも……そうですね。お菓子作りは楽しかったですし、また作ってみようかしら?」

「アリーシャ姉さま、その時は、私、お手伝いしますね!」

「はい、お願いしますね」


 すぐに手伝いを申し出てくれるフィー、マジ天使。


「じゃ、俺は毒見役だな」

「毒味という言い方、やめてください。まるで、失敗することが前提みたいではありませんか」

「なら、せいぜいがんばって、俺の期待を良い方向で裏切ってくれよ」


 アレックスがニヤリと笑う。


 最近は、こんな風に、軽口を叩いてくれるようになった。

 友達……と言えるか微妙なところではあるものの、そこそこ良好な関係を築けていると思う。

 好かれている自信はないが、嫌われていることもないだろう。


「おはよう、アリーシャ、シルフィーナ」


 アレックスと軽口を叩いていると、どこからともなくジークが現れた。

 いつも通りというか、微笑みの仮面を身に着けている。


 ただ……気の所為だろうか?

 今のジークは、素の表情を見せているような気がした。

 つまり、心の底から笑っている。


 フィーがいるからだろうか?

 メインヒロインの魅力に、早くもやられてしまったのだろうか?

 ダメ。

 フィーはまだ、私の妹。

 付き合うなんてこと、認めませんからね!


「それにしても、ジークさまと朝に会うなんて奇遇ですね」

「……ジーク?」


 なにが引っかかったのか、アレックスが眉をひそめた。


「偶然じゃないよ。僕は、二人を……正確に言うと、アリーシャを待っていたんだ」

「私ですか? どうして、また?」

「大したことじゃないんだけどね。途中まで、一緒できないかな、と思って」

「ですが、教室まで五分とかかりませんけど」

「それでもいいんだよ」

「はあ……」


 ジークはなにを考えているのだろうか?

 人間不信のせいで、ぼっち気味だったから……

 私という友達ができて、うれしいのかもしれない。


 それなら、友達として一緒にいてあげるべきだろう。

 友達は友達を放っておかないものだ、うん。


「なあ、ちょっといいか?」

「うん?」


 不機嫌そうな顔をして、アレックスが会話に割り込んできた。


「あんた、王子さまだよな? 第三王子のジーク・レストハイム」

「そうだけど……きみは誰かな? 知り合いでもないのに、いきなり名前を呼び捨てにするなんて失礼じゃないと思わない?」

「俺は、アレックス・ランベルトだ。シルフィーナの幼馴染で、アリーシャの友達だよ」

「へぇ、友達……」

「ああ、そうさ。友達だぜ」


 なぜか、二人は共に不敵な笑みを浮かべた。

 バチバチと睨み合い、火花を散らす。


 この二人、なんで争っているのだろう?

 フィーの前だから、良いところを見せたいのだろうか?

 自分の方が、男としての格は上なんだぜ、みたいな。


「奇遇だね。僕もアリーシャとは友達なんだ」

「なんだと?」

「そうだよね? アリーシャ」

「え? はい、もちろんです」

「ぐっ……俺も友達だよな!?」

「はい、そうですね」

「むっ」


 再び、二人の間で火花が散る。


 だから、さきほどからなにを争っているのだろうか?

 フィーの前だから、良いところを見せたいのだろうか?

 わかる。

 私の妹はメインヒロインというだけじゃなくて、天使のようにかわいいから。

 男としてアピールしたくなることは当たり前だろう。


 でも、いくらフィーがメインヒロインとはいえ、嫁に出すなんてダメだ。

 私の妹として、ずっと一緒に……


 って、それはそれでまずいのだろうか?

 ある意味で、メインヒロインとヒーローの恋路を邪魔していることになる。

 そうなると、バッドエンドに繋がってしまうかもしれない。


 うーん。

 私としては、ずっとずっとフィーと一緒にいたいので、その辺りがどうなるのか、機会があれば確認した方がいい。


「って、こんなことしてる場合じゃないんだよ」


 ふと、アレックスが我に返った様子でこちらを見る。

 そして、小声で言う。


「……後で、少し時間をくれないか?」

「……構いませんが、なにか話でも?」

「……けっこう大事な話なんだ。頼む」

「……わかりました。では、休み時間に中庭で」


 そんな約束をして、私はフィーと一緒に校舎内に移動した。




――――――――――




 そして、休み時間。

 約束した中庭へ行くと、すでにアレックスの姿が。


「おまたせしました」

「悪いな、呼び出したりして」

「それで、大事な話というのは?」

「それなんだけど……」


 アレックスが気まずそうな顔になる。

 そんなにも話しにくいことなのだろうか?


 もしかして……フィーと付き合っています、とか!?

 あるいは、フィーをお嫁さんにください、とか!?


 そんな!

 フィーがアレックスルートに突入したら、私は、どこで妹とイチャイチャすればいいの!?

 バッドエンドになることの心配よりも、そっちの方が重要だ。


「フィーは渡しませんよ!」

「シルフィーナ? なに言ってるんだ?」


 あれ? 違う?


「いや、まあ、シルフィーナに関係することだが……すまん! 金を貸してくれないか!?」

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新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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