第31話 ドジっ子エリス
31話目です。ドジ属性の本領発揮?
ワクワクしながらダンジョンへの扉を開こうとすると、エリスに呼び止められ、役割分担を言い渡された。
「じゃあ私が前衛やるから後衛はグリア、お願いね?」
「儂が後衛?それではお主が魔物を全て片付けてしまうではないか?」
「さぁ?よっぽど強い魔物と当たったら私の後ろに抜けられちゃうかもね~。まぁ、ここはダンジョン経験者の私に従っときなさい。」
後衛で魔物に魔法を撃つ機会が減るのは残念じゃが、まぁここはエリスの言うとおりにしておくか。
エリスの言うよっぽど強い魔物が出てきてくれればいいんじゃがのぉ~‥‥。
でないと面白くないのじゃ。
「さ、じゃあ行くわよ~。」
そんな儂の気持ちを知ってか知らずか、エリスは意気揚々とその扉に手をかけゆっくりと押し開いていった。
そして開けた扉の向こう側に待っていたのは薄暗い迷路のような空間だった。
それを見たエリスが愚痴をこぼす。
「うわ~‥‥最初から迷路エリアかぁ~。私ここ嫌いなのよね。」
「なんじゃ、迷路なんぞ儂にかかればちょちょいのちょいじゃ。」
薄暗い迷路の入り口で儂は魔法を詠唱する。
「反響 エコーロケーション」
儂を中心に迷路の中に音の波が広がり、どこが行き止まりで、どこが罠か、そして迷路の出口までの経路までも把握することができた。
「ん、なんじゃ。この迷路の中には魔物が一匹もおらんのじゃ。」
この迷路の中にあるのは罠ばかりで魔物の反応は一切無い。その事をエリスに伝えると彼女は深くため息を吐いた。
「はぁ~‥‥なんだ。魔物がいないんじゃ憂さ晴らしもできないじゃない。」
ひどく落胆しながらもエリスは今は一本道の迷路を突き進む。
そう‥‥罠がある方向へと向かって。
「む!?エリス待つのじゃその先には‥‥」
「えっ!?」
儂が声をかけると同時にエリスが踏んだ床がガコリと音を立てて少し沈む。その瞬間儂らの後ろからドドド‥‥とけたたましい音と地鳴りを響かせながら何かがすごい勢いで向かってきた。
その正体とは‥‥
「み、水じゃ~~~ッ!!エリス走るのじゃ!!」
「え、あ‥‥あわわわわっ!!」
後ろから迫り来る濁流から逃げるために迷路の中へと足を踏み入れる。幸い出口へと繋がっている道はわかっているから問題はない‥‥問題はないのじゃがッ!!
「エリスッ!!そこに罠じゃ!!」
「えっ!?ど、どこ?‥‥あっ。」
またしてもエリスの足の下にあった床が凹み罠が発動してしまう。
今度はなんじゃ!?
確実に迫り来るであろう罠に身構えているとそれはヒュンと風を切りながらやって来た。
「む!?」
横から聞こえた異様な音に危険を感じ咄嗟に首を曲げて回避行動をとると、儂の横のレンガ造りの壁にビィィィン‥‥と音を立てて矢が突き刺さった。
そしてそれは刺さった先のレンガをジュクジュクと音を立てて溶かしている。
「エリス!!今度は毒矢じゃっ喰らうでないぞ!?」
「わかってるわ‥‥よっ!!」
エリスは持ち前の剣で飛んで来る矢を叩き落としながら進んでいる。並みの剣士であればできぬ芸当。つまり、普通の剣士がここに来てこれを踏んだら死が待っている。
エリスの方は大丈夫そうじゃから今度は儂の身を守らねばならんな。
「防壁 プロテクトフィールド」
魔法を唱え儂の周りを魔力でできた強固な壁が覆う。ひとまずこれで安心じゃ。‥‥まぁエリスのほうは後ろからは濁流が迫り周りからは屋が飛んできておるから気が気ではないと思うがの。
まぁ、どれもこれも自業自得じゃな。
「ほれほれ、エリスあともう少しじゃ~。頑張って走るのじゃ~。」
「ったくもうっ!!私にもその魔法かけてくれてもいいんじゃない!?」
そしてようやく迷路の出口に着いた頃にはエリスはへとへとになってしまっていた。この先もまだあるのにそれでは‥‥と思い仕方なく疲労回復の魔法をエリスにかけてやるのだった。
はいと言うことでドジっ子全開だったような気がします。それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~




