護衛兼遊び相手
ガイルさんが部屋から出ていった後、メイドさんが料理を持ってきた。
今はお昼頃らしい。だからサンドイッチなのか。美味しいサンドイッチだ。もぐもぐ
食事を取った後、メイドさんはすぐにいってしまった。どうやら僕はこの部屋から出ていくっては行けないらしい。仕方ない。ベッドに座る。
どうやら僕は記憶喪失っていうものらしい。
さっきのガイルさんとの話で気づいた。
何故か僕はなんとかなるんじゃないかと思っている。人の良さそうなガイルさんなら大丈夫な気がするのだ。
だが、油断はいけない。
何より僕は何故この屋敷(多分)にいるのか分からないのだ。
ガイルさんは、僕の事を知らなかった。
なら何故僕はこの屋敷に?
犯罪。
その可能性も捨てられない。
だとしたら僕はどうなるんだろう。
そんな事を考えていると、また廊下から声が聞こえた。
「ね、ね、お父様。どんな子なの?」
「あぁ、いい子だよ。………………多分ね。」
「?お父様何かいった?」
「あぁいや、なんでもない。ほらこの部屋にいるよ。」
コンコン、ガチャ
「やあ、家のランチは美味しかったかな?」
「あっはい、美味しかったです。ごちそうさまでした。」
「おっ、礼儀正しいね。リーナ。見習いなさい。」
ガイルさんの後ろからひょこっと女の子が顔を出した。
可愛い。金髪碧眼の可愛い女の子だ。
「!?………………………そっそちらの方は?」
少し、いや、かなり動揺しながらガイルさんに尋ねた。
「娘のリーナだ。」
「よっよろしく。」
声まで可愛いかった。
「君にね、提案があるんだ。今の君の状況は、分かっているかい?」
「……………………………………………………かあいい。」
「ん?」
「!はっはい!えっと状況ですね。記憶喪失でガイルさんと僕は顔見知りでは無い。という所までは。」
「驚いた。君は聡い子だね。そうだ。付け足すと、君の身寄りは分からない。さっきの騎士、レルドというのだが、彼がこの街の外で倒れていたのを連れてきたからだ。」
身寄り無しまで追加された。もうお腹一杯です。
「そんな君に提案がある。この子、リーナには3つ上の兄がいてね。その子が今までこの子の遊び相手をしてあげてたのだが。今度、帝都の学校に行かなければならないんだ。」
つまりこの天使………リーナさんの遊び相手がいなくなってしまうのか。可哀想に。
「そこでね。君にこの子の遊び相手になって欲しいんだ。護衛という形になるがね。引き受けてくれるかね?身の回りは保証する。」
「引き受けます。」
はっ!つい即答してしまった!
こんな返事をしたらリーナさんに嫌がられる!
そう思ったがリーナさんは嬉しそうな顔をしていた。ホッ
「そう言ってくれると思っていたよ!宜しくね!」
「はっはい!」
二人とも気づいていなかった。よかった。
「じゃあ早速、マーク!来てくれ。」
ガイルさんの声に 失礼します。と返事がくる。
そして、70代ぐらいのおじいさんが入ってきた。服装から執事………だろうか。
「この子がリーナの新しい護衛だ。屋敷での生活を教えてやってくれ。」
「かしこまりました。ご主人様。」
「マークはこの屋敷の執事長だ。マークからこの屋敷のことや、礼儀作法について教えてもらいなさい。」
執事長だった。確かに何処か凄みを感じさせる。
とりあえず、よろしくお願いしますと挨拶をする。
「ふむ、戦闘についてはレルドから、魔法については、そうだな、シルエスカ、という魔女に教わるように。」
「魔法ですか。」
「当たり前だ。君はリーナの、侯爵令嬢の護衛なんだ。それぐらいは出来なければ。」
まあ、あの子の護衛になるなら訓練もまんざらではない。
逆に何かあった時に守れなかったらガイルさんに殺されるかもしれない。
ん?侯爵?
「さっき言っただろう。私は帝国東方担当の貴族で侯爵だ。」
「その娘さんのリーナさんに何かあったら………」
「私が許さん。守りきれなかったでは済まない。何かあったら、恐らく死罪だな。」
「そんな…」
「大丈夫だ。守ればいいだけだ。簡単だろう?」
簡単って…。
「話は以上だ。マーク、何か服を見繕ってやれ。君はマークについて行きなさい。」
「かしこまりました。君、行きますよ。」
半ば強制的に話が終わらされてしまった。僕が講義するまもなく。
しかたない。なるようになれ。そう考えることにした。




