表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕天使の下克上   作者: あかねこ
22/35

半端な殺意

「待ってるんだけど。」


ロイは不機嫌そうな顔でそう言った。

実際不機嫌なのだ。ギルドに入ってくるなり怒声が聞こえてくるし、言い争っているのが受付の前なので何も出来ない。

仕方ないので待っていたのだが、中々収まらないので不本意ながら、でしゃばって来たのだが、


周りを見て、状況を考察する。


「なるほどな。おいお前。」


ロイの言葉に、叫びながら狂人は答えた。

「ア゛ア゛?なんだよ。お前も俺に文句があんのかぁ!!」

「うるさい。叫ぶな。お前に話してんじゃねえんだ。」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛?」

「はぁ、もういい。おい、そこのお前。」

ロイは、ソフィアに話しかけた。

「ひ……………い………?」

すっかり怯え、うまく話すことも出来ないソフィアにロイは短く問う。


「助かりたいか?」


「えっ……………?」


「助かりたいのかって聞いてるんだ」


ソフィアは答える。そりゃあ怖くて、声も出すのも辛かったし、よく分からなかったけど。

それでも、頑張って答えた。


「たっ、助けて!」

「おい!なに勝手な事言ってんだぁ!」


狂人が何言ってようが関係ない!助かりたい!

ソフィアはただそう考えていた。

そんなソフィアの願いに、ロイは、


「わかった。貸し1つな。」


ロイの金眼の光が輝きを増し、黒眼の闇が深くなる。

そして、凄まじいプレッシャーが、その場にいた全員に降り注いだ。


「ひいいいいっっづ!!!?」


恐らく、この威圧感を最も受けている狂人が動かなくなった。

周りの冒険者達の声も消える。


そのプレッシャーの原因となっている白髪の少年は、


「おい、そのまま、その娘を離せ。」


静かにそう狂人に言った。


狂人はよほどのプレッシャーがかかっているのかしばらく固まっていたが、ソフィアを掴んでいた手の力が徐々に抜けていく。

少しずつ腕が下がっていき、ソフィアは自由になった。

腕がそっと掴まれ、優しくカウンターの上に引っ張られる。

乗ったカウンターからそのまま飛び降り、少年の胸に飛び込む形で着地した。


「ふ、ああああああああぁぁぁ……………」


今までの緊張感と恐怖。そこから脱出した安心感から、脱力してしまった。彼の腕に抱かれる。

その腕の中に例えようのない安心感があり、ついに泣き出してしまった。


「うっ…………ぅぅぅぅぅぅぅ……………ヒック、ぅぅうう………」



周りのプレッシャーも、既にない。


「おいおい……こわかったのは分かるが、泣かないでくれよ。」

「ぅぅうう……………ごめんなざい…………うぅぅうぅぅぅ………」

「もう大丈夫だからな。」

頭に優しく手が乗せられた。ポンポンと頭を撫でられる。

その事に、顔を上げた。目に映り込んでくるのは、少し身長の高い彼の顔。

その顔は!先程までの不機嫌そうな顔ではなく、とても優しい、穏やかな顔。


ドキリ


その顔を見た時、胸がキュッとするような、苦しいような、そんな感覚がして、


「ふっ、ふざけんじゃねぇぞおぉぉぉぉぉぉ!!!」


狂人が叫ぶ。カウンターを乗り越え、ソフィアの方へ手を伸ばした。そして、彼に剣を向ける。


「ひっ!」

「チッ!」


彼がソフィアを突き飛ばした。


次の瞬間。ドスッ。という音が背後から聞こえた。


ソフィアはぱっと、振り返る。目に飛び込んできた景色は、狂人と彼が重なっているところだった。


そして、彼の、背中から、『剣が生えていた』。


「えっ?」


自分の目が信じられなくなり、ゴシゴシと目をこする。


もう一度開いた視線の先にいたのは、先程と変わらず、狂人が彼の胸に剣を刺している光景。


「嘘だろ………」


誰の声だったのか、だが、この場にいる全員の気持ちの代弁だった。


彼の背中から生えている剣には、べっとりと血がついていて、ぽたぽたと床に垂れている。

次第に出血量も増え、ぽたぽたはダラダラに、そしてブシャア!になる。



全員が理解した、彼は助からないと、ならばこの勇者の為にも、自分も戦わなければならないと。


全員が武器を手に取り、罪人を取り押さえようと動き出した。


その時______。



ドグシャアアアアアッッッッッ!!!


罪人の頭は、木造の壁の床にめり込んでいた。


「「「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」」」


全員が、そう間抜けた声を出した。


その原因を作った彼は、剣を胸に刺したまま、不敵に笑う。


「たりねえな。そんな半端な殺意。届くわけないだろ。」




















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ