ギルドにて 2
「まだかなぁ。」
リーナはついさっきギルドの奥にいったギルド職員が自分のステータスプレートを手に奥から来ないか、キラキラした目で待っていた。ワクワクという文字が見えそうな程である。
「そんな見てて面白い物じゃないぞ?」
「ん、そうかもしれないけど。」
表情をキラキラさせて、でもねとリーナは続ける。
「やっぱり自分の力がさ、文字になって分かるようになるのは嬉しと思うの。いつもロイに護られていたからね。私もロイを護れるようになりたいの。」
リーナが可憐に微笑む。その微笑みに僕は見とれてしまった。
「それに解析魔法のLvが上がって『看破』が使えるようになれば、ロイの浮気にもすぐに気づけるしね。」
「浮気なんてしないよ!絶対。」
「ホント?」
「ほんとさ!僕の心はリーナだけのものだ。」
「ロイ………」
「リーナ………」
はっ!いけない。2人だけの世界に入ってしまっていた。
リーナも気づいたのか顔を真っ赤にしている。
「そっ、それより遅いね。」
「うっ、うん。そうだね。どうしたんだろう。」
どうやらギルドの奥が騒がしいようだ。
おかしい。
ギルドが騒がしいのは、普通、冒険者同士の諍いだ。
バースは魔族領土からかなり離れている。そのため付近には魔物は出現しない。
冒険者達は主に魔物の討伐で生計を立てて生活している。だから、魔物の出現がないこの地域には、冒険者はほとんどいない。
このギルドだって、商工ギルドの側面が強いのだ。諍いや喧嘩はまず無いはずだ。
なのにどうして?
どうしてそんな平和なギルドが騒がしいのか?
そんな疑問を抱いていると、先程対応していた若い男性ではなく、顎にひげをたくわえた男性がやってきた。
「リーナ・イースト様。このようなむさ苦しい所においで下さってありがとうございます。ここでギルドバース支部支部長をしております。マヤと申します。」
わざわざギルド支部長が来ての対応にリーナも不安と疑問が混ざった視線を送ってきた。僕はリーナの疑問を代弁するように質問した。
「何故、ギルド支部長のあなたがリーナに何の用ですか?」
「はい、リーナ様は特殊なジョブをお持ちになられております。ですのでリーナ様には早急に帝都に向かっていただきたいと。」
「帝都に?」
ジョブを持っているだって?リーナはまど14だ。ジョブを持っているはずがない。
まさか、
ロイの顔が驚愕に染まっていく。
「ロ、ロイ?どうしたの?」
「……………」
そんな僕を見て不安に思ったのか、リーナが僕に訪ねてくるが、僕は答えられない。
僕はこれから長い間、リーナの質問に答えられなかったことをひどく後悔することになる。
「!!!!!」
『何か』が西から凄まじいスピードでやってくる。
僕は混乱しているリーナをおいて、ギルドの表にでた。
金木犀の花の匂いがやけに鼻に残った。
金木犀の花は秋に咲きます。
常識かな?