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第4章 子猫の散歩と運命の出会い

また、ほんの少しですが流血表現がありますので、苦手な方はお気をつけください。血なまぐさい小説で、すいません・・・・・・。

 深夜0時、影浦水穂は起きていた。

 ――なんなのあの美人いきなり日向に抱きついてさ日向絶対同意してなかったよね顔見ればわかるわよ驚いた顔してたものいやそれ以上にうれしそうだった結局日向も馬鹿なんだわそんな日向も好きだけどそれよりあの美人絶対高校生じゃ無いでしょ老け顔だもの老けてるっていっても大学生に見えるだけだけど結局女は顔なのねいや胸もおっきかったし足は細かったしどうせあたしはAカップよ恨めしい恨めしい恨めしい――

「水穂ー、メシとか聞こえるけどこんな夜中に腹減ったのかー?」

 水穂ははっと我に返り、部屋のドアの前にいるらしい父親に

「ううん、オリジナルのラップ考えてただけー!」

 と返事をした。

「そうか、早く寝るんだぞー」

 とツッコミ不在で親子の会話は終了した。

――あー、むかつく。

 水穂は、いつも10時半には眠りにつくことにしている。昔テレビで、「夜の10時半からはお肌の美容タイムだからいつも寝てます」というタレントの言葉を鵜呑みにしたからである。おかげで水穂の肌はいつもツルツルだが、テスト期間前でさえ決めた時間に寝るので、脳みその方もツルツルであった。


 しかし、今日は眠れなかった。何度も、頭の中で昼間見た光景がフラッシュバックする。――ええい、こうなったら不良になってやる!

 水穂は、着替えて静かに家を出た。向かう先は、歩いて30分の繁華街だった。


――ふーん。案外普通の人ばかりだなー。

 繁華街についた水穂の、最初の感想はこれだった。

 確かに酔っ払ったサラリーマンや、派手な髪色をした学生などもちらほら見かけるが、遅くまで開いている本屋やスーパーもあるせいか、真面目そうな格好をした人もよく見かけた。

――とりあえずゲーセンよね。不良と言えば。

 水穂は偏った知識で、自分の行き先を決めた。適当に遊んで、すぐに帰るつもりだった。


――なのに、なんでこうなるのかしら・・・・・・。

「ねー。キミかわいいねー。俺らと一緒に遊ばねえー?」

 目の前には、金髪の青年がいた。日に焼け、ピアスを耳に数え切れないほどつけ、鼻にまでつけていた。

「ね、そんなおびえなくていいから。5千円くれるなら消えてもいいよ」

「5千円って! お前、いくらなんでも安すぎじゃねー!」

 金髪ピアスの左右には、緑の髪色をした少年と、この寒いのにタンクトップ姿で、肩の入れ墨を見せびらかしている青年がいた。

 3人とも、ゲラゲラと笑い声を上げた。水穂は、今すぐ家に帰りたかった。

「ご・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

「え? 俺らまとめて相手してくれるって? やっさしー!!」

 そして男どもは、またケタケタと耳障りな笑い声を上げた。

――誰か、助けて・・・・・・!

 水穂が泣きそうになりながら思い浮かべた顔は、幼なじみの顔では無かった。


 前世の結婚相手の、はっきりとした勇者の顔だった。


「・・・・・・おい、お前ら、俺がみらくる・ユウカちゃんのフィギュアの保護をしようとしているときに、ゲラゲラうるせーんだよ」

「ん? なんだ、お前」

 不良達が、後ろを振り返った。そのとき、水穂にも、声の主が見えた。

「勇・・・・・・じゃない、 夏樹君!?」

「ん? なんだ、影浦か。なんでお前、不良に絡まれてんだ?」

 水穂は混乱した。なぜなら、さっき思い出した勇者の顔が、この少年――日向の友人であり、水穂のクラスメイトの――夏樹小太郎と全く一緒だったからである。


 不良達は水穂と夏樹を路地裏に無理矢理連れてきた。

「なんか知んねーけど、俺ら暇だから、そのオタクがケンカで買ったらお前逃がしてやるよ。ちなみに3対1だけど」

 彼らは水穂に向かって言った。水穂は、卑怯だと思ったが、口には出せなかった。

「ごめん、夏樹君・・・・・・。こんなことに巻き込んじゃって・・・・・・」

 夏樹は荷物を慎重にアスファルトに下ろすと、水穂に向かってニカッと笑い、こう言った。

「え? 大丈夫だよ、こんなヤツら。楽勝だって。それに、影浦を・・・・・・、いや、ちがうな」

 夏樹の次の言葉に、水穂は泣き出しそうになった。


「前世の俺のお嫁さんを助けるためなら、俺はなんでもするっての!」


 夏樹は不良達を殴り続けた。彼らも反撃を試みたが、夏樹はすべての攻撃をまるで最初から知っていたかのように避けていた。

「チッ・・・・・・!おい、やべえぞ!」

「痛ぇ!」

「覚えてろ!」

 捨て台詞を吐いて、不良達は逃げていった。

「影浦、大丈夫か?」

「うん。ありがとう・・・・・・。なんかあの人達、殴っただけなのにすごく痛そうにしてたけど・・・・・・」

 ああ、と夏樹は、手のひらを見せた。

 血に染まった鍵があった。

「もしかして・・・・・・、それ握って殴ってたの?」

「ああ。防犯テクニック。影浦も覚えてた方がいいぞ」

 水穂は感心した。そして、そんなことよりも大事なことを夏樹に尋ねた。

「夏樹君。あなた・・・・・・勇者様なの?」

「ああ。前に学校で、ヒーラーだったのなんだの日向に話してたろ。すげえ電波話だな、って最初は思ってたんだけど、だんだん思い出してさ、ボクシングもしてないのにケンカのやり方とかもわかったんだ」

「夏樹君、その・・・・・・私たち、前世では夫婦だったけど、今は関係ないと思う?」

「あー、その事な」

 水穂は返事を待った。

「その、俺的には、影浦と付き合いたいと思うんだけど・・・・・・。影浦、日向が好きなんだろ?」

「な、なんでそうなるのよ! 日向は幼なじみなだけ! 勇者様のことを思い出してから、私はずっと会いたいと思ってたのに!」

「はー、そっか。」

 しばらく考える仕草をしていた夏樹だったが、水穂にニカッと笑って言った。


「じゃあ、俺たち、付き合おうか」


第4章<了>


いきなり新キャラ出てきてすいません。伏線張り忘れてました。

お読みいただきありがとうございました。

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