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6話 クズ三人組、最悪の自己アピールをする

 

 外を見ると夕方だが俺達がこの世界に来たのは朝、ここに来る前は昼過ぎだ。時間的にそろそろ眠くなってくる頃だな。


「で、国を乗っ取るって言っても具体的に何するの?」

「策はあるが、お前は何も考えてないのかよ」


 彩華は本当にもう、自由というか、世界が自分を中心に回ってると思ってる。今も欠伸をしながら考える事を放棄して俺に全て押し付けてる辺り本物の女王様だ。


「私は楽しければなんでもいいのよ」

「愉悦勢かな?」

「何言ってるの、筆頭よ」


 しかも自覚があるのだからなおさら質が悪い。


「零、この世界の法律、秩序について載っている本はあるか?」


 黒崎君がいつもの仏教面でそんなことを言ってきた。勿論ある、割と大量に貰ってきたからな。


「ほい、何故に法律?黒崎君意外と勤勉だったりするん?」


 俺も眠気で思考がカラッカラ。軽い酒が入ったかのような甘いテンションで質問すると突然黒崎君の口角が上がってにやけ始めた。


「殺人と法律は切っても切り離せない大事な事だからな」

「あ、あー……なるほどね……」


 そう、黒崎君は人殺しが大好き、臭い冗談じゃなくてマジもんの殺人鬼だ。正直親友じゃなかったら泣いて逃げ出すレベルで怖い。

 日本での殺した人間は数えるのをやめるほど、その一つ一つが巧妙で着実に外堀を埋める手立てから今まで捕まったことはおろか手配書すら出されていない。家柄の関係で政治のお偉いさんと繋がっていたらしく他国を引き入れた大権力で痕跡一つ残さないらしい。

 どうしてそんな事が可能になったのかを聞いたことがあったが「俺は卑怯なだけだ、逃げる手しか知らん」とはぐらかされたので実は俺も知らない永遠の闇だ。

 因みに人を殺す理由は死に際に見る表情が過去の自分のトラウマを払拭してくれて気分が良いから、と言っていた。言葉で表すのは難しいが実際殺ってるところを見れば間違いなくコイツが快楽殺人犯の頂点だと確信せざるおえなくなる。


「そういえばこの世界って人間以外にもエルフとかドワーフとかいるんでしょ?ふふ、あらやだ。ちょっと楽しくなってきたじゃない」


 んで、その黒崎君が殺した相手を解剖して他の被害者に食わせたり、生のままグロテスクな実験を行って満面の笑みで日常生活を送っているこの彩華とか言う女は間違いなくやばい。なにが一番やばいかって解剖の知識も技術も無ければ生きてる人間を相手に素手で腹の中に手を突っ込んだりとマジで青ざめるレべル、普段やってるゲームでも人を見下すわ勝てなければ金と機械で解決させるわ更には「なんか人間って面白いわよね」とか意味わからん哲学ほざいた挙句「パパってもしかして私を産んだんじゃ?」とか理解不能なサイコパス発言を仄めかす疑う余地のないサディストの頂点だ。


「あ、おい。捕まえたらちゃんと俺に一発ヤらせろよ。お前らの後じゃ壊れた人形か死体しか残らないからな」


 平然と欲望をぶちまける俺はクズの頂点だ。……それだけだ。おう、なんとでも言えや、人間の本能だろうがッ!


「別にいいわよ、どうせ大量にいるんだから足りなくなることはないでしょ。と言うか零っちって結構アクティブなのに彼女とかいなかったの?」

「あ?オタクの俺にそんなのいるわけねーだろ。俺が不自由なく出来てんのは黒崎君の完璧な外堀埋めと彩華の資金力のおかげだからな。ってか彼女とかいらなくね?なんで同じ奴とばっかいなきゃならねーんだ飽きるわ」

「清々しいほどのクズね」

こんなお嬢様(サディスティック令嬢)に言われるなら誉め言葉だよ」

「あらやだっ、そんなに私の事がお好きかしらっ!」

「誰だお前」


 ついに眠気が限界突破した彩華がアホみたいに間抜けな声でしゃべりだした。品性の欠片も無い。

 そんなこんなでわちゃわちゃしていた俺と彩華、だいたい数分経った辺りでパタンと本が閉じる音が聞こえ、二人してそちらを向くと黒崎君が満足した表情をしていた。


「……終わった」

「もう読み終えたのか?早くね?」

「難しいところは飛ばしているからな、大まかに分かればそれでいい」


 まぁここにいる奴ら全員頭いい訳じゃないしな、専門分野になると天才的になるが。


「で、どうだった?」

「俺達が住んでいた日本とほとんど同じだ、細かなものは知らんが大雑把に言えばある程度予測できる範囲だった」


 当然だろうな、どこの国でもどこの世界でもルールが無ければただの無法地帯だ。逆にここがルール無しの無法地帯だったら俺達は全員召喚された瞬間人生終わっていただろうな。

 ルールがあるからこそ守られる秩序、それはつまり


「人を殺せば?」

「捕まる」

「黒崎君は?」

「捕まらない」

「素晴らしい答えだ」

「いやそこはツッコミなさいよ」


 黒崎君が捕まらないと言っているのなら捕まらないのだろう、間違いなく。そこを信用できないんじゃ何も始まらないしな。


「よーし、もう今日はこのくらいでいいだろ。明日から行動を始めようぜ」

「明日から本気出す族?」

「俺はオタクだがニートじゃねぇ勘違いすんな怒るぞ」

「えっなんで」


 眠気で訳の分からないキレ方する俺と眠気で訳の分からないテンションで涙目になって縋る彩華、めっちゃくちゃ可愛いけどなんだろう。根本から親近感と恐怖しか沸いてこない。


 黒崎君はまだまだ余裕そうだが明日の為にと言って俺達はそれぞれ眠る事とした。

 一瞬で爆睡した彩華に釣られて俺と黒崎君も静かに眠りにつく。


 ──だが、俺達はこの時重要な問題を忘れていたのだ。それはもう、ここにきて最大級の重要イベントを。



「おかしいのう、確かに今日は勇者殿の誕生祝いとして席を用意したのじゃが、一向に来る気配がないわい」

「主役が来ないんじゃ盛り上がらないぜ~」

「せっかく素晴らしき勇者様達をこの目で拝見できると思ったのに、一体どうしたのかしら」

「もしや勇者殿の身に何か!?」

「こんな時に王はどこで何をしておられるのですか!」


 俺達勇者を迎える盛大なパーティ会場はそんなざわめきで一晩埋め尽くされていた。

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