41話 クズ三人組、自分達を異世界に召喚した理由の核心に迫る
「お前、円卓の騎士の連中と顔を合わせていなかっただろ」
「……はい」
体育座りで俯いている様子のソフィアは一瞬顔を上げるとか細い声でそう返事を返した。
「つまり、ソフィアが正常だったのは円卓の騎士とやらに会っていなかった。守りの加護と称した洗脳を付与されていなかったからってこと?」
断片的な情報を紡いで彩華が問う。
「その通りだ。だが問題はそこじゃない、今重要な答えが一つだけ見つかった」
そう、重要な答えが一つ。
「──俺達を召喚した理由だ」
「魔国を滅ぼすために召喚された。って答えではなかったという事ね」
「ああ、それはヴェタイン国が考えた……いや、洗脳されて出した間接的な答えだ」
ふとユナを裸にしたままなのを忘れて服を着ていいと命じ、軽い咳払いをして黒崎君の方を見る。
何かを察したのか、黒崎君は首を軽く鳴らして不気味な笑みを浮かべた。
「俺達の潰す国はヴェタイン国でも魔国でもない。──潰すのはここだ」
その言葉にソフィアが顔を上げ、シンシアは目を見開いている。
「ヴェタイン国の連中はこう言った。『この世界とは違う、俺達が住んでいる異世界の知識を使って魔国を倒せ』と。だがそれは洗脳した連中が言った言葉なんだろう。となれば? 洗脳した連中は魔国と対立していて、自分達が被害を被りたくないためにヴェタイン国を利用して俺達を召喚させたって事になる」
俺の言葉に彩華は深く頷き、否定した。
「私も最初はそう思っていたわ。でも実際は違うのね?」
「ああ違うな。恐らくだが、洗脳した連中は魔国と対立なんかしていない、むしろ"組んでいる"と捉えるべきだ」
「円卓の騎士が……魔国と……? なんでそう言い切れるの!?」
首都に住んでいると情報が多いのか、シンシアは両方の名を知っているらしい。そしてその二つが結託している事に疑念を抱いている。
「そもそも常識的に考えてみろよ、異世界の知識を使って国を亡ぼす。アニメでも漫画でもない現実でそんな事が可能か? 例え可能だとしてもそんな子供みたいな思考には陥らないだろ。そもそもなぜ俺達が異世界の知識を使わないといけないんだ? 魔法を持っている世界から来たら、剣豪や超能力者だったらどうしていたんだ? 何も"知識"という単語ひとくくりにする必要はないだろう?」
まさか、と何かに勘付いた彩華がこちらを見る。
「円卓の騎士は魔国を滅ぼす事なんて最初から望んでいないし出来るとも思っていない、何故なら俺達の知識だけでは魔国を滅ぼすのは不可能だと知っているからだ。恐らくこの二つは最初からグルで、魔国がヴェタイン国を襲ってヘイトを向けさせ、そこに現れた円卓の騎士が心に取り入る隙を作って洗脳を仕掛けたんだろう。弱っている人間や感情的になっている人間は理性を失いがちだ、言葉で洗脳する事も可能な状態で魔法なんて使ったら確実だろうしな」
事実を知るまではあくまで仮説にすぎない。だが、ユナの意見は彩華の折り紙付きだ。記憶に支障がない限り言っていることに間違いはないだろう。
彩華も全てを理解した様子で口を開いた。
「となれば残る問題は円卓の騎士と魔国がなぜ私達を召喚したのかだけど。……そういうことね、私達を異世界に召喚したあの魔法陣、あれは意図的に日本を狙っていた可能性もあるわね。言語が一致する理由もそれで通る、そして召喚するのは一般人であれば誰でもいい。例え妊婦でも子供でも、"異世界の知識"があればいいわけだもんね。魔国なんて最初から倒せないんだから」
そう、魔国なんて倒せない。この事実を知っているのは洗脳した円卓の騎士と魔国だけだ。
呼ばれてくるのは一般人、この世界で使えるのは未知の存在である自分達が持つ異世界の知識のみ。そんな状況に陥れば当然自分達の持つ全力の知識を使って魔国に挑むだろう。勝敗はともかく、異世界の知識を使った戦争のようなものが魔国と初めてぶつかるわけだ。
──異世界の知識が初めてぶつかる、その事実を知っているのはヴェタイン国と円卓の騎士と……魔国だけ。他の国がそれらの情報を手に入れるのは当分先になるだろう。
「何が言いたいか、もう解ってるって顔だな。零」
黒崎君も武器の加工を再開し、身に滾るその戦意を露にする。
そう、全ての伏線は繋がった。俺達が呼ばれた理由も、その裏に隠された真意も全て。
俺は窓の外で歩く街の人々を一瞥して、ゆっくりと振り返りその答えを放った。
「あぁ、奴らが望んでいるのは武力でも武具でもない。奴らが望んでいるのは──俺が、俺達だけが持つ"異世界の知識"だ」




