表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/45

38話 クズ三人組、少女を殴ったり、少女に釘をぶっ刺したりする

 

 部屋にシンシアを運び終えた俺達は暇を持て余していた。

 彩華の調教が終わるまでこれ以上先に進むことは出来ない。

 とは言っても現時刻は夜中の3時辺り、普通なら寝る時間だが俺達は根っからの夜行性でもある。


 だが一般人は夢を見る時間帯だ。監視という意味でも今日ずっと連れて回っていたコイツはもう眠くなってもおかしくはないはずだろう、それでも顔を俯かせ未だに眠ろうとしない。

 俺はその表情を鑑みて声を掛ける。


「悩み事なら相談に乗るぞ、ソフィア。最も悩む対象が俺達だった場合は知らんがな」

「……いえ、自分で解決します」


 迷っていた瞳をキリっとさせはっきりと断る。

 かなり深刻そうにしていたが、この様子ならまだ大丈夫そうだな。


「…………ぱ………ぱ……」


 不意に訪れた聞き慣れない声に俺達はふと振り向く。

 装備の点検をしていた黒崎君も手は止めないものの顔は向ける。


「パパ……私、わた……く、し……」


 どうやらシンシアの寝言のようだった。


「寝言でも死んだ親のことを引きずってんのか、随分愛されてたみたいだな」


 そういって悪戯にソフィアへ一瞥する。


「大丈夫です、もうそのことは気にしていません。 私の親はもう手遅れだった人ですから」


 あれだけトラウマを受け付けられればそうもなるな。

 シンシアは未だにぶつぶつと寝言を言っている様だが、段々と声に生気が宿ってくる感じがして──


「わ……、た…………諦め、……た、く……」

「ん?」


 シンシアの周りを青白いオーラのようなものが纏われ、意識のないその体が微かに宙を浮き始めた。


「──……ない」


 殺気を感じた。

 ヴェタイン国で瀕死の国王が豹変したときと似たような、この世界特有の殺気。

 瞬時にやばいと判断した俺はシンシアの肩を掴もうとするが。


 ──バチン!


「ッ!?」

「零!」


 手から全身へ電気が流れ伝わるような痛みが襲う。

 そして突き飛ばされるような反動を受け、俺は部屋の壁へと吹き飛ばされた。

 明らかに膨張していくオーラと無意識の状態のシンシア。

 このままの状態にしておくと危ないと感じた俺はすぐさま指示を出す。


「黒崎、腕!!」

「チッ」


 買ったばかりの奴隷に傷を付けたくはなかったが致し方ない。

 黒崎君はすぐさま拳銃を取り出し計5発、シンシアの両腕に命中させる。


「これで収まってくれるとありがたいんだがな……」


 意識が無いため効いているのか判断がつかない。


「コイツは魔法が使えないんじゃなかったのか」

「素質はあると言っていた、無意識下で潜在能力が出たんだろう。夢の中で引き金でも引いたか」


 両腕から血を流しているシンシア。

 だが次の瞬間──その傷がまるで逆再生でもしているかのように塞がっていった。


「おいおいなんだあれ、治癒の魔法ってやつか? 腕の神経を弱らせれば魔法は使えないんじゃなかったのかよ」

「情報に間違いはないはずだ、いくら治癒の魔法だろうとな。全ての魔法は全身から腕、そして手に伝っていき放出させるものだ。体から出そうとすると魔力の供給が不安定になったり暴発したりする危険性があるため、意識的に拒絶反応が出るはずだ」

「じゃあ無意識なら可能だってか……だがあの回復の仕方はゲームやアニメで不死身がするような再生だったぞ」


 シンシアは再び腕を上げ、魔法を打とうとしている。

 それが何の魔法なのかは想像がつかないが、少なくとも攻撃的なものであることは一目瞭然だ。


「はぁ……ったく。しょうがねぇな」


 壁に横たわっていた俺はゆっくりと起き上がり、そのままシンシアへと歩み出す。


「零!?」

「大丈夫だ、何かあったら頭に叩き込む準備だけしとけばいい」


 シンシアの張っているバリアのような障壁の目前まで迫り、俺は平然とした声色で尋ねる。


「聞こえてるか、シンシア」


 返事は返ってこない、目も閉じたままだ。シンシアは未だに手のひらから魔法を打つためのエネルギーを溜めている。

 だが……


「シンシア」

「…………っ」


 ほんの僅かに空いた口元を見据えて、俺は何度もその名を問いかける。


「お前はその力で何を願い、何をしたい。その攻撃の意図は何を意味している? 教えてくれ、シンシア」


 殺傷力のある魔法を前に、俺は一切怯まず問いかける。

 問いかけるほどの価値があると思ったからだ。

 黒崎君は常に撃てるように標準を構えている。ソフィアは声を出さないものの部屋の片隅で息を呑んでいる。

 俺はシンシアの名を幾度口に出しただろうか。ある時を境に、意思なき口がついに動いた。


「死にたくない……諦めたくない……。奪わなきゃ……奪われる……。奪わなきゃ……殺される……!」


 それは夢の中の出来事なのだろうか。

 眠っている時に魔力を暴走させたことがある、なんてことセバスは言っていなかった。

 つまり、俺達に関わったことで潜在意識が引き出された。引き金は引かれたというわけか。


「奪わなきゃ……奪わなきゃ……」


 セバスの話では、両親は魔族との戦争で他界したと言った。

 それが本当なら、悔やむ気持ちはあれど憎しみをもつ理由にはなり得ない。なり得るのならその対象は両親を殺した魔族になるはずだ。


 "奪う"。 それはなんだ。魔族の命か?不特定多数のモンスターに対してか?

 奪わなきゃ奪われるとは、殺さなきゃ殺されるって事か?


 ……違うな、そうじゃない。そうじゃないだろう。なぁ、シンシア?


「奪いたいか? ソイツから」

「……」


 シンシアの表情を見て、俺は確信した。

 目を瞑っていても分かる、口から血が流れているのを見れば分かる。


「やっと舌を噛んだな。やれば出来るじゃねぇか」


 それほど悔しかったのだろう、それほど我慢してきたのだろう。

 この世界で一番殲滅しなきゃいけない種族は魔物じゃない、俺達だ。

 俺達のような──"人間"だ。


 きっとその感情は復讐なのだろう。

 くだらない一匹のガキから漏れた心情なのだろう。

 知ったことじゃないさ、そんなことは。知ったことじゃない。

 だが、それが恐怖を塗りつぶす殺意だと言うのなら。それが俺の求めた意思に近いものだと言うのなら。


「いい"覚悟"だ。その気持ち、目が覚めても忘れんな」


 シンシアの魔法が眩く光り、その矛先が俺に向けられた瞬間。俺は大きく手を振りかぶってシンシアに殴りかかった。

 バチバチと迸る痛みを無視して、手から流れる血を無視して。


 俺はシンシアの顔面をぶん殴った。



 ◇◇◇



「……お前は」


 起きると見知らぬ牢獄のような場所に閉じ込められていた。

 両手両足には手錠が掛けてあり、なぜか体中の魔力が正常に流れていないのを感じた。


「あら、起きた? おはよう、えーと。ストーカーちゃん?」

「誰がストーカーだ!野蛮人共が!」


 目の前にいたのは私と歳がそんなに変わらない見た目をした金髪の少女。

 あの時、私の顔を蹴り飛ばした時に背後で拘束していた奴か……!


「こんなことまでして、一体何が目的だ!」


 声を荒げるも、金髪の少女は無視を続ける。

 バッグから手袋を取り出し、何やら大きな釘の様な物をじゃらじゃらと並べている。


「お、おい。何だそれは……!」

「何って、釘だけど。知らない?」

「何故そんなものを持っているのかと聞いている!」

「なぜって、そんなのあんたにぶっさすために決まってるじゃない」

「は……?」


 まるで当然とばかりに、平然とした顔つきで少女はいった。

 身の危険を感じた私は、口元を引きつらせながら制止するよう問いかける。


「ま、待て。ふざけているのか? こんなことをすることに何の意味がある!」

「零っちがね、あんたに"仲間"になってほしいんだって。 だから零っちに逆らわないように調教するの。が、私。 おーけー?」


 頭から溢れ出る魔国の憎しみを上回る何かが、恐怖感を越えた何かが流れ込んでくる。

 少女は私に一切の猶予を与えないまま上半身の服を脱がし、臍の下を気持ち悪く摩る。


「は、何を……一体何を言ってるんだ……。母を殺したお前らの仲間になんて、ま、まて──!」


 錯乱し始める私に少女は一切反応せず、自分の言葉を好きなだけ並べ始める。

 まるでネジの外れた悪魔の様だった。


「いい?これから私が言うことが正しいと思ったら『その通りです、零様』と言いなさい。いいわね?」

「やめ、ろ、やめろ……!!」


 私の叫びなど些細な事でしかない、そんな表情で少女は私の腹に釘を当てる。

 チクッとした感覚に全身から冷や汗が溢れ出ていき。予想できるこのあとの事態に、また助からない自分の状況に涙までもが溢れてきた。


「"お前はこれから子宮に釘を刺されるが、それは至上の喜びだ"」


 そう言って少女は押し込めるように釘を刺した。


「やめろ……やめてくれ──!! ──あガッッ──!!?」

「『その通りです、零様』だろーが。 言えるまで何度でも刺すからね」


 容赦なく2本目を刺され、それでも痛みと恐怖に叫ぶことしかできない私は3本目も容易く皮膚を貫かれた。


「ぁあ"あ"あ"あ"あ"ッ!??っが……ああああああああ"あ"っ"っ"──!!」


 笑顔も悲哀も見せず、まるで仕事をこなすかのように真顔のまま釘を刺していく少女。

 本当に人間なのかを疑うほどに、いいや人間じゃないのだろう。 それほどまでに義務的思考、私の口からその言葉が漏れるまで何度も何度も釘を打ち付ける。

 途中からは手が疲れたのか金槌のようなもので叩き始め、どうして今自分が生きているのか分からなくなるほど私は苦痛に苛まれた。


「そ……と、り……でぅ……い……さま……」

「聞こえない、もう一本行くわね」

「ぉぶッ……」


 口から大量の血だまりを吐血させ、私の意識はそこで途切れた。

 そして今後、その意識が正しく戻ることは無かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者に餌をお与えください 小説家になろう勝手にランキング
ブックマーク、評価、↑↑↑を押していただけると嬉しくなって投稿ペースが速くなります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ