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36話 クズ三人組、ツンデレ風な貴族娘の奴隷を買う・後編

 

「そういえば」


 ラノベ展開でひとつ思い出した事をセバスに質問してみる。


「コイツを縛る魔法とかはオプションで付けて貰えないのか?」

「と言いますと?」


 奴隷と言えば奴隷紋、魔法がある世界ではよく使われる手段だが──。


「例えば主人に暴行を与える危険性を認知したら強制的な抑止力が働く奴隷紋みたいなものだったり」

「確かにそう言った物は一考していますが残念なことに今の私には出来かねます。あくまで奴隷を買った後のお客様の身の安全はお客様自身の負担となりますので」


 考えてはいるが出来ないときっぱり言い切るセバスに少しだけ現実感が湧いてきた。


「そりゃ現実的な回答だ、当然だろうな。分かった、こっちで色々模索してみるわ。黒崎君もそれでいいか?」

「ああ。ただ一つだけ」


 腕を組みながら壁に寄りかかってる黒崎君、ついさっきまで一切の存在感を消していた彼にシンシアも驚いたように振り向く。


「コイツは現段階でどんな魔法や技能が使えるんだ? 出来れば殺傷力のある類の技は知っておきたい」


 的確な危険点を消していくのは流石黒崎君だ、昔から過剰と言う程外堀を埋めるのだけは欠かさない。


「彼女の母親は高位の魔導士、風の魔法を得意としていました。その素質を受け継ぐ可能性は非常に高いでしょう。ですが現段階では魔力が乏しく自発的に魔法を使うのは困難でしょう」

「そりゃあいい事を聞いた」


 俺達が最も警戒し恐れるのは窮鼠猫を噛むことだ。

 どんなに弱くても命の危機に立たされれば破滅を覚悟で特攻してくるもの、それが俺達の様な外道に対してならなおさらだ。

 今回俺達が異世界に来て学んだことは自分達が常に弱者側であること、魔法と言う即死級の攻撃に対抗できる手段がない。そして今回の奴隷もセバスが強いだけでシンシアが俺達の束縛から逃れられないと決まったわけじゃない。

 今の俺達は本当に弱者だ、強くなる算段も立ててはいるが絶対とは言えない。仮に先日ソフィアが言っていたようにレベルの概念があったとしても魔物一匹に俺達が対抗できるとも思えない、ましてやそれが可能ならこの世界の一般的な住人は皆レベルカンスト勢だろう。

 だからこそ今シンシアが何一つ魔法を使えない事実を聞いて俺は非常に安心した、そして歓喜した。


「まぁ力があったら奴隷にはならないわけだしな」

「いざという時は腕を削ぎ落とせばいい」


 危険要素はある程度絶たれた。そう判断した俺達はシンシアに手を伸ばす。

 まるでその人物の人権を掌握するかのような手のひらがシンシアの頭へと向けられる。

 だが、その手は退けられた。


「触らないでっ」


 手錠をかけられ両手を背中に回されてなければ強く弾かれていた。そう感じるほどに拒絶した彼女は決意を決めたような表情で俺へと反論した。


「あなた達の物になるくらいならこの場で命を絶つわ!」

「ほう、ならやってみろ」


 しかし即二つ返事をした俺にシンシアは驚く。

 金貨18枚もの値が付いた自分がこの場で死ぬと言っているのに平然とした顔つきで返された。そう言った反応だ。


「……っ」

「どうした?舌を噛むくらいやってみろ」


 馬鹿にするように見下す俺の視線に上目遣いで睨み返すシンシア。

 実際に舌を噛んでも死ぬことは無い、むしろこの状況で自殺を図れる手段が存在しないはずだ。それを踏まえたうえで俺は返事をした。

 まぁその脅しで実際にやってことのある奴なんて俺の知る限り一人もいやしないが。


 瞬き一つせずにシンシアの愚行を見下ろしてる俺に涙目になりながら睨み返すだけの無様。はっきりいって年相応の反応といっていいものだった。

 ただただその無意味な膠着状態が続き、何もする気が無いと悟った俺はこれ見よがしに鼻で笑った。


「はっ。所詮子供か」

「馬鹿にしないでっ!」


 口だけは達者だな。


「金貨18枚確かに確認しました、このままお持ち帰りくださって大丈夫です。そしてこちらが彼女の両手両足を拘束している開錠用のカギです」


 ちょうど袋の中身の金貨を数え終えたセバス。両手と両足用の鍵を2種類手渡された。開錠が魔法とかじゃなくて割と安心した。


「よーし、じゃあ持って帰るか。黒崎君」

「ちょっと!ふざけないでよ私は行かないって言ってんぐっ!?」


 気配を消して背後に回った黒崎君が第二関節をむき出しにしたグーパンをシンシアの延髄に直撃させる。

 終始目を開けたまま気絶したシンシア、命令した俺も流石に生々しくて恐れ入った。

 黒崎君がしたのは所謂首トンというやつだが現実は想像以上に強烈な一撃、漫画とかで見るようなトンっとした手刀などではなく本気で気絶させようとしてるパンチだった。

 人には波長がありもっとも緊張している時に感覚が鋭くなるという、黒崎君は的確にその瞬間を狙って叩き込んだ。

 勿論彼の事だから後遺症の残らないように手加減はしているはずだ、俺みたいな初心者の蹴りで脳震盪の危険性が出たり等はしないだろう。


「んじゃ"また来る"。次はもっといいモノ揃えてる事を期待しているぞ」

「かしこまりました、最高の一品を捕まえてきましょう」


 俺は心の底から溢れ出る笑みを浮かべながら商人に手を振り、シンシアを黒崎君に担がせながらその場を後にした。


 さぁて、これからこのツンデレお嬢様をどう料理してやろうか。


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