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35話 クズ三人組、ツンデレ風な貴族娘の奴隷を買う・前編

 

「……何見てるのよ。言っておくけど私を買うのはやめておいた方がいいわよ、後で本当に痛い目見るから」

「セバス、コイツはいくらだ?」

「ちょっと!聞いているの!?」


 上品な声色で訴えかけてくる奴隷の少女を無視して金貨の入った袋を取り出す。

 値札が貼っていないということは商人自身がその場で値段を決められるということだ。ならばこちらから所持金を見せて「ここまでしか払えない」と提示する方が得策。

 セバスもその額を見て吹っ掛けられない相手だと理解したのか、相場相応の金額を提示してきた。


「そちらの少女でしたら丁度金貨18枚です」


 今俺達が持っているお金は金貨20枚、200万円相当だ。

 対してこの少女が金貨18枚、無垢な少女の生殺与奪権をたった180万円で買えるなんて随分とお買い得だな。

 振り返り彩華と黒崎君の反応を見る。


「異論は?」

「無い」

「ないわね」


 額に汗を募らせながら身を守っている少女をニヤリと一瞥してセバスに向き直る。

 袋から金貨を2枚だけ取り出しそのまま袋ごとセバスに押し付ける。


「決まりだな」

「ちょ、ちょっと。私の話を聞いてるの?やめなさいって言ってるの!」


 目を付けられた途端急にうるさくなったなこの小娘。

 キャンキャン泣いても状況が変わるわけじゃないっつうの。


「おいお前、名前はなんて言うんだ?」

「~~……ッ!言うわけないでしょ、この下衆共が」


 鋭い目つきで睨まれる。

 無視された挙句一方的に質問されたのが癇に障ったのか、辛辣な言葉を喰らわされた。


「セバス」

「『シンシア・アレット』13歳。かのイデアル国直属の魔道大隊、その副隊長を務めていたベレニス・アレットと貴族ブラウン・アレットの娘でございます。ブラウン・アレットの爵位はヴィコント。5年ほど前に南方で行われた魔族との戦争で両親共に他界しており、アレット家の血筋も彼女が最後となってます」


 顔を真っ赤にして睨みつけてくるシンシア。

 一連の話を聞いて彩華が疑問を持つ。


「ヴィコントって何?」

「ヴァイカウント、子爵の事だな」


 言われて気づいたがヴィコントはフランス語か。

 そういえばイデアルって国もソフィアの名前もフランス語か?

 ヴェタイン国は……聞いたことないな。この世界の基となってる言語は日本語とフランス語なのか?

 セバスが言った単語が英語ではなくフランス語だったことに妙な違和感を覚えたがやはりこの類の事を考え出すときりがないな、やめておこう。

 同じ貴族と言う立ち位置に興味を抱いたのか、子爵と言ったら彩華がいの一番に聞いてきた。


「それって偉いの?」

「下から2番目」

「ざっこ」


 それは単調な一言で済まされた。


「あ、あんた達本当に最低!私のパパを馬鹿にしないでよッ!」


 父親を馬鹿にされて涙腺から雫を零しながら怒りをぶつけるシンシア、矛先を向けられても微動だにしない彩華に更に怒りを増す。

 まぁ国すら動かせる財政と疑似的な権力を持ってた彩華にとっては土地や功績の競い合いをしているだけの底辺貴族なんて眼中にすらないわな。

 彩華に対して怒り心頭しているシンシア。流石に悪いと思ったのか、哀れむような表情で返した。


「安心して、すでに死んだ無能を蔑むほど暇じゃないから」

「……ッ!」


 うん、まぁそうだよな。彩華だもんな。


「あんただけは、絶対に許さない……!」


 今にも襲い掛かりそうなほどヘイトを掻っ攫った彩華、だが残念なことに彩華は今日から2日間ここで調教タイムだ。怒りの矛先をぶつけることもできないなんて可哀想だな。


「それじゃあ先に直してくるわね」

「おう頼むぞ、俺はコイツを躾ける」

「あ、待ちなさい!」


 シンシアの呼び止めを無視し、先程から気絶してまま放置されていたストーカー少女を引きずるように引っ張りながら奥の監禁室へと消えて行った。

 さて、俺もコイツを連れて帰らないとな。


「それではこちらもよろしいでしょうか?」

「ああ、シンシア・アレットお買い上げだ」


 自らの意志とは裏腹に勝手に事が進んでいく様を見て顔が真っ青になるシンシア。

 ようやく自分がどういう立ち位置にいるのか、身をもって自覚する事となった。


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