34話 クズ三人組、下心丸出しで奴隷を選ぶ
「彩華、ここならいけるだろ?」
「こんな臭い場所で2日間過ごせと?」
そこはまさに奴隷市場の監獄、甘酸っぱい臭いと腐った魚の臭いが混合して嗚咽を漏らしそうな檻の中で俺は彩華に2日間居座れと命じる。
「嫌か?」
「いいえ?断る理由がないくらい」
「だろうな」
彩華は自分の趣味をオープンにする性格だ、むしろ周りがそれを隠そうと必死になるくらいに。
だから彩華が子供のころから"拷問"に興味があり人間を捕まえては人体解剖をしていた事など家族はみな知っている事だった。むしろ進んで彩華の成長を見守っていたと言ってもいい、狂気的な一家だろう。
そんな環境で育ってきた彼女が今立っているこの場所はまさに願ったり叶ったりのステージと言ってもいい。
「因みにここで大声を上げたら?」
「外には一切聞こえない」
「逃げようとしたら?」
「この牢獄はセバスにしか開錠出来ない」
「私に何かあったら?」
「対象は両手両足と首を完全拘束、加えてセバスが常時この牢獄を見張っている」
「零っち……」
彩華が俺の両肩を掴んで強く握りしめる。
「あんたが親友で本当によかったわ!」
「あたぼうよ、俺はお前の一番の理解者だからな」
吐き気を催す邪悪とはこの事。何が理解者だ、ふざけるなと周りの奴隷たちが青ざめた表情でこちらを見ている。これから起こる出来事を段々と理解し始めてきたようだ。
「そこの女性の方……!たす、助けてください……!」
それでもまだ救いがあると思っているのか、奴隷の中の一人が彩華に手を伸ばしながら助けを求める。
「彩華、ご指名だぞ」
彩華は俺に言われてようやくその存在を確認したかのように薄い反応を示すと、助けを求めてきた少女に対して汚物を見るかのような目で見下した。
「私に話しかけんなメス豚ども。大腸ちぎって口の中に入れるわよ?」
彩華の返答を聞いた少女は時が止まったかのように数秒固まってわなわなと震え出す。
「言葉が上品すぎて他の追随を許さないな」
女性なら正常な倫理観を持っている、そう思うのはあながち間違いではないが残念なことに彩華にはそれが当てはまらない。むしろ俺達の仲でもぶっちぎりで正気を削られる行為を平然とするような奴だ、それに助けを求めるなんて笑っちまうな。
「そんじゃセバス、そろそろ品物拝見させてもらうぞ」
「かしこまりました」
セバスが指を鳴らすと暗闇だった牢獄が明るくなり、今までずっと暗闇の中で生活していた奴隷の少女達を眩く照らし出す。そして急な光が当てられた奴隷達は反射的に腕でその光を防ごうとするが手錠と鎖で繋がれていたため目元まで持ってくることが出来ず、無防備な状態で目を瞑り光を遮る。
俺はその滑稽な反応をする奴隷達を舐めるように見渡して満足したようにリズムを刻む。
「さーて何人買っえるっかな~」
「何よ零っち~やっぱりハーレム目指すんじゃん」
彩華もステップを踏むように奴隷達へと向かっていく。
まぁヴェタイン国をぶっ潰して勇者の肩書は消えたんだ、余った金でハーレム人生ってのも悪くはない。
俺は奴隷達にも聞こえる声で大きく宣言した。
「じゃあハーレムヒロイン第二号を選定しまーす」
「でもねぇ零っち……リアルの奴隷なんて顔が潰れて痩せこけた貧民よ。ヒロインどころか雑用係になれればいい方よ」
「じゃあ雑用係を選定しまーす」
「本当に悪魔ですね……」
俺達の会話に真っ青になりながら目線を逸らす奴隷達と同じく真っ青になりながら諦めたような表情を浮かべるソフィア。そんな拒絶する側の反応を無視して俺は次々と奴隷達の顔を見ていく。
「ひっ……」
「おー、おー……。……まぁ、ヤれなくはない……か?」
「なんでヤる前提なのよ」
少女達は基本的に古い布一枚。顔立ちは決して悪くはないがどれも見飽きたような中の上程度の顔つき。
俺が目を向けるごとに少女達は自分が選ばれませんようにと必死に願っているが、そういう奴ほど選びたくなるのが人間の性ってやつ。……違うか。
「コイツ等って無垢なん?」
「はい、ここにいる者は基本的に汚れていません」
「ほーん」
その回答は意外性を持っていて僅かに驚いた。俺達の中に処女厨がいるわけではないが奴隷なのに汚れていない点は高評価だろう。
まぁどのみち汚れることにはなりそうだが。
「とことで黒崎君は選ばんの?今回世話になりっぱなしだし、選んでもいいぞよ?」
「ぞよぞよ?」
俺は今回の異世界漂流で黒崎君には負んぶに抱っこ状態だったこともあり、実際この奴隷選別も黒崎君に選ばせようとも思っていた。
だが黒崎君は首を振って否定する。
「俺は殺すこと以外は特に人間を必要としていない。だからと言ってわざわざ高い値を払って買った奴隷を殺すんじゃ話にならないからな、今回はパスだ」
確かに黒崎君に飼わせたら1日も持たなそう、無情に殺しそう。この展開は安易に予知できる。
「まぁすぐ殺しちゃうんもんな、リョナ癖はないん?」
「特にないな、強いて言うなら死ぬ瞬間くらいだ」
「私あるわよ」
「お前のはリョナとは言わねぇ解剖オタクだろうが」
彩華の突然のカミングアウトを蹴散らして奴隷選定を再開する。
中にはエルフやドワーフ、サキュバスからヴァンパイアまで様々な種族が檻に入れられているが大半は人間が占めている。
あまり異種族の亜人を捕まえて来ても魔法やらなんやらで脱走される可能性があるからだろうな、そう考えれば人間を捕まえるのも合理的だ。まだこの世界の人間の実力知らんけど。
凡そ数十分ほどで牢獄内を一周し、自分の中で大体の選定を済ませた俺は黒崎君と彩華に報告しようとしていた時だった。
「……お?」
他の奴隷と被さっていて気付かなかったのか、まだ見ていない奴隷の一人が視界に映った。
俺はその場で一度立ち止まり、目的の少女の方へと歩いて行く。
対する少女は陰に隠れようとしているが俺は鉄格子を強く掴み逃れられない目線を送る。
その容姿は明らかに他とは違う。金色の長い髪、成長期待度皆無な胸、身の丈に合わない上品な座り方、そして何よりもこの反抗的な顔。
「──何よ……」
ニヤリと口角を上げながら無言で見つめる俺に対して心底嫌そうな反応をする少女。
おいおいそんな反応されたら最高に虐めたくなるじゃねぇか。
俺の様子に勘付いた他の二人もその少女の元へと駆けつけて俺と同じく口角を上げる。
そうだよな、そういう反応になるよな。何しろこれはホンモノなんだからな。
「零っち」
「あぁ、随分と生きが良いのがいたじゃねぇか」
こいつは大収穫だ、まさに国のお嬢様じゃねぇか。




