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26話 クズ三人組、重大な事実を知る

 

 ──神は二度失敗した。


『 名もなき少年が願った世界、名を失いし少年が夢見た明日。


 一つは「愛」────少年にとって最も大切な形。

 一つは「夏」────少年にとって最も大切な日。


 少年はやがて成長し、大人になる。

 彼は世界の味方ではない、世界が彼の味方なのだ。 』



 ──神は二度失敗した。


『 幾度となく繰り返された輪廻の狭間、小さな少女の天来と降臨。


 運命に抗い、軌跡を変え続けた──「常識」

 狂気を凌ぎ、周囲に恐れられた──「天災」


 少女は戦場に身を落とし、成長する。

 世界は彼女の敵ではない、彼女が世界を戦慄させるのだ。 』



 二人の化物は特異点を築き上げ、やがて汝らは惹かれ合う。

 集え己が欲望を満たす者よ、集え異界より移りし人の子よ。


 我は待つ。


 ──その時が来るまで。




 ……という文章だった。


 当然注目すべきは「異界より移りし人の子」。これは間接的に俺達が人間から生まれた種族であり、別な世界から来たことを示唆するものだ。

 たまたま、偶然この場所に石碑があって、そこを偶然俺達が通りかかっただけだろう。何も誰かから狙われていると断定する必要性はない。


 だが俺は、俺はそんな理由で立ち止まったわけではなかった。


「天災……軍、師……」


 石碑に魅入られるように譫言を並べ、瞳を揺るがす。

 強い鼓動が胸を締め付け、縛られた記憶が一本一本はち切れる。敵か、味方か、確かにその名は存在していたのだ。


「何言ってるの?どういうこと?まさか本当に前世の記憶があるとか言わないでしょうね?」


 彩華が慌てながら俺の顔を覗き込む。かなり心配した表情を浮かべているが俺の視界に映ることは無い。


「……」


 その様子をじっと見ている黒崎君と何が起きているか分かっておらずあたふたしているソフィア。


 思い出した記憶の断片は自分でも驚くほどに馴染むもので、果たして記憶と呼べるのかすら怪しい程に魑魅魍魎で、思い出したくもない程の悪夢。

 これは戦争だろうか。火の粉が舞い上がり、爆撃によって戦車と人が飛び、阿鼻叫喚と化している世界。

 そんな悲惨な光景を前に正気を疑う光景があった。

 金色の髪を靡かせる少女がすやすやと気持ちよさそうに寝ているのだ。


 あれは化物……確かに化物だ。人間であっていいはずがない。



 ──幾ばくかして正気を取り戻した俺は、首を横に振って紛い物を払拭していた。


「悪い、大丈夫だ。ちょっと頭イカれただけだから心配すんな」


 今この事について深く考えていてもはっきりいって時間の無駄。

 それにもし本当に俺の中にあるはずのない記憶が存在していたとしても、今の俺とは無縁の話だ。

 仮に、仮にもこの記憶が本当だとして、"あの女"がこの世界に来ていたとしても、今の俺がアイツと対等に肩を並べられるわけがねぇ。


 ……いいや、並べる必要がねぇな。


「本当に大丈夫なんでしょうね?何かあったなら言いなさいよ」

「あぁ、今度こそ大丈夫だ」


 一息ついて、先程まで跳ね上がっていた心拍数を落ち着けさせた俺は最後に石碑を一瞥し、その場を後にした。



 千里とは言わないが歩いて半日ほど、ヴェタイン国からかなりの距離が空いたはずだ。

 今は森の中、と言ってもヴェタイン国の時みたいに道が無い訳じゃない。比較的歩きやすい道があり、魔物もそこまで強くないらしい。イデアル国から出ていく商人たちが良く使う道らしく、魔物が出ても最悪逃げる手が通じるようだ。


 そこで俺はふと疑問に思った事をソフィアに聞いた。


「なぁ、この世界って魔法があるんだろ?出鱈目な強さをもってる人間とかいんの?」


 道端にある石ころを蹴り飛ばしながら足を進める。

 強者にとってみたら俺達なんてこの石ころと同程度の存在にしか思えないだろう。


「ごく一部ですが、人の域を越えた人間もいると聞いたことがあります」

「そいつらは生まれながらに強かったのか?天性っつうか、素質があったとか?」

「確かに遺伝や素質が大部分を占めますが、努力で強くなった人も沢山いますよ」


 中々芯に迫れない回答に俺は頭を掻きむしる。

 素質が大部分を占めると言うのは納得の域だが、もしこの世界に成長と言う概念があるのなら──。


「あー回りくどいことしちまった、単刀直入に言うわ」


 彩華もこちらを一瞥して同じ考えを巡らせている、異世界と言っても俺達の知っている漫画や小説のような異世界ではない事は百も承知。

 だからこそ聞きたい、本当の異世界はどうなのかを。


「魔物倒したら強くなったりすんの?」


 もしこの世界に魔物を倒す事に強くなるなどと言うアホみたいな構造が施されていたなら、と考えた。

 まぁ、技量や戦闘経験が身に付くのならともかく、何らかの恩恵が得られることはまずないだろうが。


「なりますよ。より強い魔物を倒すほどに経験値が得られます」

「は?」

「嘘でしょ?」


 俺と彩華が同時に驚愕する。黒崎君も口には出さないが目を見開いて一番驚いていた。


『経験値が得られる』。

 その言葉を聞いて今まで試行錯誤していたあらゆる考えが破綻した。

 当然だ。そんなものがあったのなら……。


「え……マジかよ、それ早く言えよ!」

「え、ごめんなさい?」


 ソフィアにとっては常識なのか、突然驚き慌てている彼らに対して怪訝そうな目で見る。


「クソみたいな転生かと思ってたけどヌルゲーじゃねぇか」

「レベル補正って存在するのかしら」

「ギルドも存在しているかもしれん」

「ギルドならイデアル国にありますけど……みなさんどうしてそんなに驚いているんですか?」


『ギルドがある』。

 そんなソフィアの更なる追撃で俺達の現実的な異世界は幻想的な異世界へと変貌した。

 だがそうなるとヴェタイン国がなぜ俺達に「レベルを上げて物理で殴れ」と言わなかったのか甚だ疑問である。

 そこもやはりキナ臭いが、今は全部後回しだ。


 俺は進む先に希望へと繋がる道しかない現状に口元が緩み始める。

 そしてそんな気色悪い表情のままソフィアに向かって早口で質問する。


「因みに経験値が貰える原理ってなんだ?敵にトドメを刺すのか?より大きいダメージを叩きだす事か?それなら横取りが成立するんだが」

「ちょ、零さんこわ、怖いです!」


 下衆が下衆みたいな表情をして迫ってきたら怖いに決まっている。

 俺はソフィアの反応ですぐさま自分の醜態に気づき、咳払いをして言い直した。


「わ、悪い。んん"っ! ……間接的に殺しても貰えるのか?」

「それは分かりません、貰えないと言う事は無いと思いますが通常の半分、いえ、1割くらいじゃないでしょうか。そもそも経験値を貰えると言っても数値で表記される訳ではないので実際にどれくらい貰えたかというのは分からないのが現状です。少なからず戦えば貰えるとは思います」


 なるほど、経験値は数値表記じゃないのか。ゲームとは違うっぽいな。

 レベルや体力なんかもあると思っていたが、実際にギルドに行ってみないと分からなさそうだ。


「ほーん。……因みにソフィアは魔法とか使えるのか?」


 魔物を倒せば間接的にでも経験値が貰えると聞いた俺は今この場で魔法が使える人物を探し当てたい。

 そこでソフィアに尋ねてみた。


「私は火を出すことくらいしか出来ないです」


 結果は大当たり、大収穫だった。


「どのくらい出せる?」

「ちょっとだけ」


 そう言って人差し指の先から淡い小さな火を出現させた。

 確かにちょっと、本当にちょっとだな。マッチやライターの方がまだ火力あるぞこれ。


「この森には魔物がいるのか?」

「いるにはいると思いますが、私の力では助力にもなりませんよ」


 まぁ確かに、いくらソフィアが魔法を使えてもこの火力じゃあ野生の魔物に勝てる訳が無い。まぁ魔物なんてまだ見たことないんだが。

 俺はちっちっちと指を振り、黒崎君の方を見る。


「いいや、戦う必要はない。黒崎君」

「大丈夫だ」


 辺りを見回し、人がいないことを確認した黒崎君。

 最後に彩華を一瞥し、頷きの了承を得られたことで俺の一手は実行される。


「よしソフィア」

「はい」


 よくわかっていないが何かをしようとしている彼らに即返事をするソフィア。

 物は試しと言う言葉を以て興味が沸いた俺は躊躇なくその指示を出した。


「この森を燃やせ」


こちらの物語で描写されている「天災軍師」とは…全てがこちらで明かされています→https://ncode.syosetu.com/n4323fj/

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