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22話 クズ三人組、初めて異世界の料理を食べる・後編

 

「おお……かみよ……」


 空腹で語彙力崩壊した彩華がソフィアを拝みながらブツブツとなんか言ってる。

 そういえばこいつは毎日美味いものばっか食ってるからよくよく考えれば生ものなんて食えるはずないか。


 俺達はそこら辺の家から料理器具や魔法の発火装置などを持ってきてソフィアの料理を眺める。

 見たことも無い異世界の材料を次々と調理していくソフィア。その腕前はプロとはいかずともかなりの敏腕だった。


「貧民の料理だから期待はしていなかったが……随分手際が良いな」

「毎日作らされていたので」


 作らされていた、ねぇ。さぞ自分の分は無かったんだろうな。


「……そうかよ」


 真っ当に返す言葉も無かったので適当な返事をする、きっとその努力は無意味じゃねぇよ。俺が保証してやる。



 ──待つこと十数分ほど、かくして出来上がった数々の料理はどれも食欲をそそるもので香ばしい匂いが漂っていた。


「もう少し多く作ってくれ」

「わかりました」


 丁度この場にいる面子分の料理は出来たが黒崎君の分を作らなければならない、彼は見た目相応結構食べるので余分に作るくらいがちょうどいい。

 木のテーブルに並べられた料理はどれも見た事の無いものばかりだ。それなのにとても美味しそうに見える。

 もう我慢できない、そう言わんばかりに最初に食いついたのは予想通りと言うか。彩華だった。


「じゅる……美味しそうね……──うまい!!」

「もう食ってんのかよ。……うまいな」


 "いただきます"の一言も無しに行儀悪く食べ始める俺達二人。間髪入れずに食いついたその料理は予想していた通りの美味しさだった。

 スープに入っているレタスと思しき黄色の食材はその湯に身をしならせることなくシャキシャキと口の中で音を奏でる抜群の触感。そしてその上でスープの味をしっかりと染み込ませてある絶妙な味わい。

 下手したら日本の料理より上手いかもしれない。

 そしてこの唐揚げのような肉も適切な時間の炙りでまた脂が乗って非常に美味しい。


 ──そんな感想を心の中でリポートしながら黙々と食べる俺達を前に黒崎君の分の料理が終わったソフィアは一人食材の無い席へと着いた。


「……なにしてるの?」


 それを怪訝そうに見る彩華。俺も一瞬疑問に思ったがさっきの話を思い出してなるほどと理解した。


「好きなだけ食っていいぞソフィア」

「……ああ、そういう事ね」


「え……いいんですか?」


 自分の分ではなく相手の分を作っていたのだから自分の分はない。そう判断してきたソフィアの過去を重んじれば今回も自分の分がないと思うのは当然か。

 まぁ彼女の空腹も限界なのだから頭を下げて恵んでくるくらいのことはしてきたと思うが、生憎俺は自分の立場を弁えてる人間を虐めるほどつまらない思考は持っていない。


「お前これから料理当番な、毎日腹減ったら飯作れ。その代わり自分で作った飯は好きなだけ食っていいぞ」

「本当ですか……!?」


 頷く俺にまるで夢でも見ているかのような希望に満ちた目で返すソフィア。

 普通の人から見ればふざけるなと怒るだろう、だが俺は俺の思う最善の方法を選択したつもりだ。


 貧民に国家予算並みの金を与えたところで価値も理解できないし使い方もわかるはずがない。目が見えない奴が一番求めているものは目を見えるようにすることだ、人権を分け与える事じゃない。

 そう声を荒げればありとあらゆる奴らが反対するだろう、それは違うと。だが俺はこの極論を重んじている、幸せとは自分の裁量で決まるものであり客観で決めるものじゃない。


「いただきます……!」

「ん?」

「あれ?」


 ソフィアがそう言った時に微かな違和感が俺と彩華を刺激した。


「え、なんでしょうか……?やっぱり食べちゃダメでしたか?」

「ああいや、何でもない。気にせず食べろ」


 固まった表情を見せながら俺に振り向く彩華。俺は静かに首を振ると彩華はゆっくりと頷いた。

 そうか……このシャールと言う異世界、随分とやらかしてんな。

 深淵を垣間見た気がした俺達は息を呑んでまた一つ関わらなければいけない面倒ごとに頭を抱えた。


 それでも悩みが飛ぶほどの美味い料理のおかげで多少はやる気も出たりした。主に彩華の舌は三ツ星料理を食べまくった舌だから、それが美味いと言うのであればやはり高級料理なんて微妙なものしかないんだなと改めて感じた。


「ふぅ、美味しかったわ~」

「正直異世界料理なんてゲテモノだと思っていたんだが、現実は小説よりもなんちゃらだな」


 ここに来てから何も食べていない俺達の初めての料理がこんなにも美味しいのは幸先が良い。

 十分に満足して活力も出てきた俺と彩華。ソフィアなんて生気が感じられないほど死活問題になっていたのにとんでもなく顔色が回復しているように思える。


「んじゃ、いくか」


 俺は黒崎君の分の料理を残して他を片付けると、黒崎君本人がいる潰れた城の方へと歩き出した。

 だが流石に黒崎君、鷹のような目の良さを持っている。俺が歩き出したタイミングで黒崎君も階段を降り始めていた。


「おーお疲れ黒崎君」

「ああ」


 呼び声に応対するように片手を上げる黒崎君、俺はその手を彩華にやったようにハイタッチすると自分を越して降りていく黒崎君の背中に向けて一言声を掛けた。


「ソフィアが作ったんだが、美味かったぞ」

「そうか」


 笑顔で絶賛する俺を見てソフィアが顔を赤らめる。黒崎君は俺の言った事に信憑性を持っているのか、中々に見せない微笑みを背中越しに見せるとそのまま階段を下って行った。


「さーてと」


 両手を組んで背伸びをするように潰れた城の方へ再度戻ると、一人の男が血まみれの瀕死の状態で倒れていた。


「おーいたいた。意外とタフじゃん」

「き、貴様らァ……!!」


 さて、後処理をするか。


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