2話 クズ三人組、異世界の知能の低さを実感する
当然ただで了承するわけではない、国を救えなどと言う馬鹿な願いに俺らみたいな特殊な外見を持った奴らがはい協力しますと二つ返事で手を打ったら逆に怪しまれる。
俺は一つ悪知恵を思いつき、試してみることにした。
「協力するとは言ったがただでやるとは言ってない、いくつか条件がある。俺達は無理やり異世界に連れてこられたばかりか魔国とかいう未知の存在に対抗しなければならない。まだ下準備すら出来ていないと言うのに知恵だけで戦えという、それはつまり俺達が魔国に勝てる下準備をするまでの支援ををしてくれるという事に他ならない、それは了承出来るか?」
俺は真剣な眼差しでそう言うと貴族たちが腕を組み考え始める。こういう判断は当然トップがするものだ、小さいブラフだが俺達に何かしらの隠し事をしている可能性を探るため敢えて権利者でしか判断出来ないような質問を投げかける。しばらくして王様らしき人が返答をしてきた、佇まいと格好から見て王そのもので間違いないだろう。
「支援と言いますと?」
「俺達が魔国に対抗するための準備を着実に行える安全な領地と準備に必要な資金、時間。後そうだな……専属の護衛だ」
「うむ、そのくらいなら用意出来る。何卒、何卒憎き魔国を根絶やしにしてくれっ!」
王様が頭を下げると周りにいた王族や貴族達も習って頭を下げる。
なんと素晴らしい即答だろう、馬鹿なのだろうか?彩華の顔が崩れ始め段々危ない状況になってきた。
「あぁ、魔国の状況によっては準備に時間がかかるかもしれない、だが必ずや俺達の知識でこの国を救うと約束しよう!」
心にもないとはこの事だろうか、俺は笑顔でそう言うと周りにいた人達は歓喜をあげていた。
勇者と言うのはそこまで重要視される存在なのか。それともやはり──。
無言のまま動かない黒崎と今にも吹き出しそうなにやけ顔を必死に我慢してる彩華を連れて俺達はひとまず魔国に対抗する為の相談という名目で人気のないところまで移動した。
「……ここまで来れば誰もいないな」
俺はそう言って後ろにいる2人に向き直ると。
「──プッ……あは、あはははははっ!あはははははははははっ!」
ついに我慢の限界になったのか彩華が大声で笑い出した。いや、よく耐えていたと思う。あの場所は上級レベルのコントスタジオだった。それくらいに笑いを堪えるのが大変だった。
「あははははっ!ゲホッゲホッ……」
「草」
黒崎君、そのガタイで草はやめようか、草は。
「いやぁ……まぁなんというか、この国大丈夫か……?」
「大w丈w夫wなwわwけwないでしょwww 終わったわこの国www」
余程我慢をしていたらしい彩華は今世一番と言わんばかりの大笑いを起こしている。
まぁ残念な事にこの事態には俺も笑うしかないのだが。
「あははははっ……いやぁほんとにウケるわ。一体どういうつもりなの?私達ってそんなに騙されやすい?」
「圧縮言語やめろ」
「どうせ伝わるでしょ」
「まぁ」
彩華が一体何を言っているのかと言うと、まぁかなり先の事だ。簡潔にまとめれば、俺達全員は先ほどの会話を本当にただのコントだと思っている。と言えばわかるか。
どんなに神経抜かれた馬鹿でもあんな支離滅裂な頼みをするはずがない、むしろあの場面でもし俺達が断ったらどうなるかを考えればすぐわかることだ。憶測でしかないが、相手が人間ならなおさらだ。
恐らく異世界から来たという何らかのメリットを持つ俺達を国の為に利用するつもりだろう。あの場では「魔国に対抗できる何らかの知恵を持っている」と語っていたがいくらなんでも馬鹿げた話だ。正直飛躍した会話を無理矢理相槌打って繋げるのには苦労した。
「正直IQ落ちるレベルの会話だったわ」
「あんたがまともなIQ持っていることに驚いた」
「ばか何言ってんだ、90はあるぞ!」
「その数字をおでこに描いてから平均値見てきなさい」
「この世界の平均値か?10も無いだろ」
「言われてみればそれもそうね」
二人で馬鹿笑いしながら相手を見下す会話が続く、単純にこの会話が聞かれていたら速攻で殺されるレベルの煽り会話だ。幸運にも辺りに人はいないのだが。
「これ以上外で会話していても不用心だろう、目的の小屋に向かうぞ」
「あいよー」
後ろで会話を聞いていた黒崎君が俺達の前を先行し始めた。後ろは大丈夫と言う事だろう、異常なまでの急展開に内心驚きながらも今を楽しむ俺らにとっては些細な出来事でしかない。
これからもっと楽しくなるだろう、まずはこの危機的状況を打破するところからだな。