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18話 クズ三人組、新たなメンバーを迎える


 国王とその姫を虐げてから凡そ5時間程度が経過した。

 朝日が昇り、時刻はお昼前になる頃だろうか。俺達は空腹や疲労を我慢しながら最後の仕事を遂行するべく事を進めていた。


「いつまで見てるのよ、もうそろそろ始めるわよ」


 宴会場の窓からずっと城下町を見下ろしている黒崎。このメンバーの中で最も中枢である零の帰りを待っているのだ。


「……ああ」


 零が城下町を見に行くと言ったのはつい先ほど、国王を虐げてからすぐの事だった。

 なんでも「良いガキを見つけた」らしくこの世界に来てから初めてと言っていい程のやる気に満ちた表情を見せて出て行った。

 この世界に召喚されてからほとんど動いていないというのに、いつの間にそんな子供を見つけたのか。零の事だから心配はないと思うが、洗脳に近い信念を抱いているこの国の人達に良い悪いがあるのだろうか。

 この後、もう間もなく始まる祝祭の閉演があるというのにいつまで城下町をうろついているんだ、零。


「……お、おい、本当にこれで娘には手を出さないでくれるのだろうな……!」


 後ろで両手両足をきつく縛られながら魚の様にジタバタしている国王。零によって片目を潰され、精神を擦り減らされている過酷な状態だ。

 魔法を使えるという危険はあるが、魔法が発動しない絶対条件を昨晩街の奴等から散々聞いて理解してある。もう彼と姫は数年、いや下手したら一生魔法は使えないだろう。

 そんなぼろ雑巾のようになった国王には先程とある事をしてもらった。


 それはおよそ10分前の出来事である。


 ◇◇◇


「……う……ぐ……?」

「あら、起きた?」


 彩華が靴のつま先で国王の頬をビンタをするように往復叩きしていると、瀕死の顔つきで声を唸らせながら目を覚ました。


「ここ……は……。……ッ! 貴様ら……!」


 目覚めた場所は最初にいた宿ではなく城の王室。

 国王は朧げな記憶をたどりながら自分達がされてきた仕打ちを思い出し、彩華を射殺さんとばかりに睨みつける。


「起きてさっそく悪いんだけど単刀直入に言うわね。これに向かって今から私が言う事をそのままそっくり代弁してくれない?」


 そう言ってスマホを国王の前に提示する彩華、勿論国王は初めて見る機械に怪訝そうな表情を浮かべるも、すぐさま拒否した。


「誰が貴様らなんぞの言う事なんか」

「この子どうなってもいいの?」


 そう言ってボロボロになった姫ことアイリを国王の前に勢いよく投げ捨てる。

 どさっと投げられるがままに倒れるアイリに対し、目を見開き声を掛ける国王。


「アイリ……!!」

「お父さま……」


 既に意識が低迷し力が入っている様子が無く、ポツリと呟いた父の呼ぶ声はとても淡い泡沫を見るように弱く小さかった。


「はいはい、感動の再会ね。 で、こっちは急いでるわけ、どうなの?やるの? 別に拒否してもいいけど、それなら今すぐ目の前でその子殺すわよ。惨たらしく」


 彩華は徐にアイリの目の前へ片手を覆いかぶせるように近づける。


「い、嫌ぁぁあ"あ"!!」

「アイリ!?」


 意識が落ちる前の、あの大量の心臓や血塊を口に放り込まれた記憶が蘇り大声で拒絶する。トラウマを植え付けられたのだ。その時は暗闇でよく見えなかった国王も彼女の発する尋常ならざる悲鳴に想像を越える残虐性を秘めた行為をされたのだと唇を噛み締めた。


「ま、別にあんた達が手伝わなくてもこっちのやる事が増えるだけで対して痛手にはならないしね。殺されたいなら好きにすれば?」

「わ、わかった!だが約束してくれ!娘と、娘とこの国にはこれ以上手を出さないと!!」


 時間を与えない尋問は非常に効果的。これは黒っち自身が考えた策だけど、本当に効果覿面ね。それに黒っち自身がやらないのが本当に、流石だわ。

 それは親友だからこその信頼、お互いに性格が最悪なのは知っているんだから、最も効率のいいやり方をやるべきだ。って零っちが言ってたっけ。


「ええ、それは間違いなく約束するわ。私達の目的は別に殺戮じゃないしね、ちゃんと言う事聞くならだれも傷つけないし、すぐにこの国から出ていくわ」


 真剣な眼差しで見つめる。その言葉を聞いて安堵した国王はアイリを一瞥した後、こくりと頷いて彩華の復唱を始めた。

 あーあ。私って、私達って本当に最低なクズね。


 ◇◇◇


 そんな事があり、俺達はこの国の、この場所の最後の締めを行うための閉演を今まさに始めようとしていた。


「零はまだ帰ってきていないが……始めるか」

「ま、どうせ心配いらないわよ。零っちは私達より私達のやる事をちゃんと理解しているしね」


 二人で頷くと、王室の隣にある緊急用の国内放送部屋に入り魔力が込められたメガホンの様な物に向かってスマホを掲げる。

 普段、王が国民に向けて一斉に声を送る時に使われるらしい。今回はそれを利用し簡単な集客を行う。

 本来は国王の協力が無くても可能だが、念には念を入れる零の指示があるため、確実性を狙ってやるつもりだ。

 彩華も準備が出来たらしいので、俺はメガホンのスイッチを入れすぐさまスマホの録音ボタンを押した。


『──……親愛なる同士諸君、今日は祝いの日だ。召喚されし稀代の勇者殿によって魔国を討つ絶好の機会が与えられた。不穏な日々は今日で終わりを告げ、新たな希望へと進みゆく。そこで、勇者殿から同士諸君らへ重要な言伝があるそうだ。急で悪いが、全員今すぐ宴会場へ集まってはくれぬだろうか』


 スマホから録音された国王の声が街全体へ流れ始める。勇者と言う希望の存在、そして『魔国』と言う彼らにとって見逃せないワード。この言葉を聞いて集まらない者はいないだろう。この国の人間ならなおさら。

 その放送を終えると共に街の方が段々とざわめき始め、そして時間を置かずに大量の人々が城へ向かって押し寄せてくる。どうやら成功したようだ。


「うぃ~す、ここにいたのか」


 同時に放送部屋の扉が開き、零が姿を現した。


「おかえり零っち、何か収穫あった?」

「おうあったぞ。ほれ」


 零は扉を更に押して視野を広げると、そこにはボロボロになりやつれた女の子が佇んでいた。


「!?」

「零っち……!?」


 その女の子を見て二人は揃って驚愕した。この狂った国の街から幼い女の子を連れてきたことにも当然驚いてはいるが、問題はそこではない。

 ──あの零が、子供嫌いの零がその女の子と手をつないでいるのだ。


「……あ?」


 何のことか分からない零は疑問府の付く顔を浮かべる。


「零っちが……手を……」

「あ?……あー。こいつは『特別』だ。気に入ったからな」


 あの零が、残虐非情な零が。子供は脳のないガキと蔑んでいた彼が特別とまで言って持ち上げるその少女は一体何者……!?

 二人は決して他人に見せないような慈しみを振りまく零にただただ驚きを隠せないでいた。


「あ、えと。あの……ソフィアと言います」


 そんな空気を割って入るように名乗り出た少女はソフィアと言うらしい。普通ならここで彩華は顔面を掴み地に叩きつけていた。黒崎なら無表情で胸に風穴を開けていたに違いない。

 それでも二人は自らの手を少女へと差し出した。


「え、ええ。彩華よ。よろしく」

「黒崎だ。よろしく頼む」


 二人も彼と同じように綺麗な手を私に差し伸べる、握手だろうか。こんな汚い体の私に握手を求めるなんて、変わっているにもほどがある。


 そう、実際二人が自分達から少女に手を出すなんて普通は理解し難い事だった。あの潔癖症の彩華ならなおさら、こんな薄汚い貧民に握手を求めるなど考えられない事だろう。

 だがそれでも手を差し伸べるのは零が『特別』だと言った存在だからだ。彼はこの中でも最も力のある存在、親友という体で頭を揃えているように見えるが一番威厳がある存在なのだ。

 そんな彼が『特別、お気に入り』と言っているのだから無下に扱えるはずがない、自分達と同等の存在として認めるのと同じだ。そこに綺麗汚いなどの主観は一切入らない、入れられるはずがないのだ。


 彩華と黒崎は少女の前に立つも同じ高さまでしゃがむことは無く、その手を伸ばす。同じ目線まで落ちたらそれは自分より下の存在であると言っているようなもの、あくまで同じ土俵の存在として、高さなど関係なく挨拶を交わす。それが自分達のやり方だ。


「よ、よろしくおねがいします!」


 零が突然連れてきたソフィアと名乗る少女、二人は疑問を抱きつつもそれ以上の期待を込めて力強く手を握り返した。


「さて……と。そんじゃま、そろそろ始めるか」


 そしてこちらもついにクライマックス。祝祭のフィナーレを迎えようとしていた。


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