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プロローグ 健康食堂

グルメものは多いけど栄養学にスポットを当てた話は意外とないんじゃないの?、というコンセプトで書いてみました。

題材的に書くのが難しいですが、リスペクトの気持ちを忘れず、書き進めていければと思います。


どこまで行けるかわかりませんが、応援よろしくお願いします!


 ――美味くて健康的な料理はない。


 おかしな言葉かもしれないが、それがこの世界、オーベルにある国、ミレイスカイでの通説だった。


 そんな価値観が当たり前に存在する中、サンティメールという街には「健康食堂」と呼ばれる場所があった。


 文字通り、健康に気を使った店だ。味も皆が口を揃えて「美味い」というほど評判である。


 まさにミレイスカイでの常識を覆すような店。


 一見するとただの大衆食堂に見えるその店だが、昼時、夕食時にはとても賑わい、騎士、教師、役人、主婦に子どもなど様々な客が足を運ぶ。


 その賑わいは、並んでまで店に入る文化のなかった世界に「行列」という言葉を生み出したほどだった。


 そして今日も、健康食堂では多くの客が料理を口にしていた。


 木造の建物内には大小様々なテーブルが並び、軽鎧に身を包んだ警備の兵や仕事を終えた商人が一息つき、食事を楽しんでいる。


 上機嫌な商人は大きな声で、


「いやあ! わざわざこの街まで足を伸ばしたかいがありましたね。これがあの味がしないトーフだなんて信じられませんよ。しっかりと味がついているし、この食感がたまらない! こんな形でトーフを食べるのもわるくない、いや、むしろトーフを好きになりましたよ」


 恰幅のいい商人が、目の前にいる小柄な商人へ楽しそうに話しながら、豆腐のステーキを嬉しそうに頬張っていた。

 大声を出す度に顎の肉がたぷたぷと揺れているのも、彼のワクワクを現しているかのようだ。


 言われた目の前の商人も、クリームシチューを美味しそうに食べながら何度も頷く。


「肉以外の食べ物は食べ物じゃないと考えている私でも、野菜だらけのシチューが止まらなくなる。ああっ、幼い頃からこの店があったら、もっと違った人生を歩めたのだろうなぁ」


 野菜をあまり好まない彼だったが、長時間煮込まれて肉と野菜の旨味が溶け出したシチューはとても美味しく食べることができていた。


 そんな彼らを初め、満席の店内では多くの客が舌鼓をうち、健康食堂の料理を楽しんでいる。


 酒を出さない店なので滞在時間は決して長くないのだが、一組店を出ればまた一組入店し、満席の状態がしばらく続く。

 夜が深くなりみんなが「飲み」へと移行するまで、周囲の客は健康食堂が独り占めしているのではないか、というほどの賑わいだ。



 この活気は数年前では考えられないことだった。かつて金をもらってでも誰も入らないような店と言われていたことが嘘のようだ。



 では、なぜここまで人気になったのか。



 名前の通り、出される料理は健康を考えられたものだった。

 それは栄養バランスという概念が確立していないこの世界にとってはとてもめずらしいものであり、注目を引く要素でもあった。



 しかし一番は、出される料理が美味しいからだ。



 ――美味くて健康的な料理はない。



 健康食堂は最初、そう目立つ店ではなかった。健康食というのが売りでオープンしたはいいが、「健康よりも美味いメシ!」という価値観の人々には受け入れてもらえず、ずっと閑散とした状況が続いた。


 だが、それはある一人の料理人が来てから変わった。



 ニホンという遠い国からやって来たとされる黒髪の青年、その料理人の名は――朝山橙也。自らを管理栄養士と名乗る。





 これは、異世界からやって来た管理栄養士・朝山橙也と健康食堂の成長を記した物語である。


プロローグが終わり、これから物語がスタートです。

どうか楽しんで下さい!

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