異世界「アルドレイド」へ
名前か……。
「というか、さっきの"特殊スキル"が出来たって何なの……」
一瞬だけみたスキル名も不安を与えてくる。アンデットって書いてなかった?
アンデットって……。
「名前「アンデット」はすでに登録済みです。「オデット」なら使えます。登録しますか?」
へ!?
「よろしいですか?」
えっえっ・・・!!
「それでは、ワールド「アルドレイド」へ転送します。末永くお楽しみ下さい……」
まさか、「そのアカウント取得済みw」→「これなら使えるよwどう?」コンボが発生するとは。
しかも、戸惑いの「えっえっ……!!」だったのに。
承諾の「えぇ」になるとは。
ひどい話だなぁ……と、薄くなる意識のなかで悪態をついた。
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「……起きて……!」
ん?
「……オデット……!」
何かが耳元で騒いでいる。
「起きて!オデット!!」
……?
「起きないと、食べられちゃうよ!!」
え!?それはイヤだ。
いやだ。いやだ。いやだ!!
「……ぃゃだ……」
しかし起きなければいけないらしい。
まだ寝ていたい欲求を抑え、無理やり目をあける。
「……」
驚いた。なんせ、そこはさっきまでいた真っ白い空間じゃない。
真っ黒な世界。
真っ黒?イヤ、違う。
「……」
私が目にしたのは、頭上めいいっぱいに広がる沢山の木と葉。
幾枚も折り重なる葉の隙間からは月の光りが差し込んでいる。
背中は痛くはないが硬い。
大きく息を吸い込むと、じっとりとした土のにおい。
……どうやら私は倒れこんでいるらしい。
「良かった。目が覚めたのね」
どこかほっとしたような声がする。
その方向へ頭ごと視線を動かすと、近くに何かが見える。
不透明な板状の……。
「……あれ、スクリーン?」
「そうよ。」
んん?私の頭の上にクエスチョンマークが出る。
「……新しい世界には私ひとりで飛ぶものだと思ってたんだけど……。なぜスクリーンがここにいるの?もしかして、付いてきてくれる系?」
私はつい笑ってしまう。
「ううん……。私も何故ここに飛ばされたのか分からないの。気が付いたらこの森にいて。……あなたは横で気絶してるし。早くあの場所に戻らなくちゃ」
スクリーンは不安げだ。
「そっかぁ。色々あるんだね。え……と。それじゃあさ、戻り方を見つけるまで一緒に行動しようよ。私も心強いしね」
「……うん、ありがとう」
なんだかほっこりした雰囲気になる。
「あれ?」
そこで、小さな違和感に気が付く。
「……スクリーン、なんか縮んでない?」
最初いたところでは横幅1mはあった気がする。それが今や20cmほどになっている。
「え?そうなの?」
意外そうにスクリーンは言う。……意図的にそうなったのではないのか。
「いやいやいや。そんなことより。オデット。すぐ近くにモンスターがいるの!それも相当やばいやつ。まさか、こんなイレギュラーが重なるなんて……」
イレギュラー?……まだ頭がクラクラする。
視線の先には、大木が並び、その枯れてしまった残骸。そして細長い草。立ち上がった私の腰ほどはあるだろうか。
そのすぐ横には蔓のようなものも垂れている。
見渡す限りの大木と草。その先には……。
「……ドラゴンだ」