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タランチュラ3


「……そう、そこのやつが。解毒の花……」


 私はタランチュラに連れられ。


 先ほどの場所から、少し離れた場所にきていた。


 そこは、白い大木の生える。不思議な神聖さを感じる場所だった。


 空気もどこか清清しい。


 アンミラは小さなクモたちに運ばせている。


 何かの拍子に、攻撃してくることも考えられるが。


 タランチュラが攻撃を宣言しない限り、おそらく大丈夫だろう。


 私の視線の先には紫色の花が咲いていた。



「その花弁。花弁を口に含ませてやればイイヨ……」



 しかし、当のタランチュラは戦意を本気で失ったのか、演技なのかは分からないが、私に従順になっている。



「……変わった花だね。花弁が2枚しかない」



 私はしゃがみ、その花を一本摘むと、アンミラの傍に行く。


 そしてアンミラの柔らかい唇を指で開き、花弁を押し込む。



「……ウウン……」



 アンミラが少し反応を示す。



「暫くしたら解毒進む。意識も戻る。ダイジョブ」



 タランチュラはそんなことを言ってくる。



「そっか」



 私はアンミラを見ながら、返事を返しておく。


 それに対してタランチュラは。



「ネェネェ。……オマエって、巷でウワサの「テイマー」か? コイツ、オレサマの仲間だよんね?」



 そう、ボロボロの足をクイックイッと動かしながら聞いてくる。


 やはりモンスター同士、仲間であることが分かるものなのか。


 「テイマー」という単語は初めて聞くが、恐らくモンスターを仲間にすることが出来る者の総称だろう。



「ウワサっていうのは知らないけど、まぁ、モンスターを仲間にすることが出来るっていうのは否定しないよ」



 タランチュラの足が少し痛そうに見え、私は視線を外しながら言う。


 戦闘スキルであれば、対策を練られてしまうので、まず話さないが。


 テイミングスキルならそこまで警戒しなくても大丈夫だろう。



「フムフム」



 タランチュラは、納得したように言う。



「ううん……」



 アンミラの目が開く。



「アンミラ、大丈夫?」



 私は、寝ているアンミラの顔を見る。



「えぇ、なんだか。まだぼーっとするけれど。……大丈夫よ」



 そう言いながら、アンミラは見つめ返してくる。


 ……まだ辛そうだ。もう少しこのままがいいだろう。


 しかし。解毒剤を買っておかなかったことが悔やまれる。


 そう。私に毒はきかない。「毒耐性・異常ウイルス耐性」のスキルを持っているからだ。


 だがアンミラは違う。


 吸血鬼なため、人間よりかは頑丈なほうだが、毒や状態異常には耐性がない。


 今回の毒は。


 そんなアンミラですら意識がなくなるものだったのだ。


 相当強い毒だったのだろう……。



「ネェ、ネェ……」



 タランチュラは考え事をしていた私に声をかけてくる。



「……何?」



 何だというのだろうか。戦うのか?



「オレサマ、も。オマエラと一緒いきたい……ダメか?」



 そう、少しモジモジっとした様子で言ってくる。


 ……なんだこのクモは。



「……」



 私はタランチュラの意図が分からず、黙っていた。



「……オレサマ……オマエ気に入った、オマエはどうだ? オレサマ強いだロ? ……手下もいっぱいダゾ?」



 そうタランチュラはいう。確かに、アンミラが倒れるほどの毒の持ち主であるが。



「……わたしはあなた達の敵でしょう? 命のやりとりをしたあとで、そんなことを言われるのは意味がわからない」



 私は、もう一度アンミラを見ながら言う。


するとタランチュラは。



「……オマエ、本当にニンゲンなのか?」



 そう言ってくる。


 え……。



「……オレサマ、嗅覚良くない。でも、オマエ、魔物の匂いする。……ナカマじゃないのか?」



 タランチュラはそんなことを言う。



「え……」



 私はタランチュラの顔を見る。いくつかの目がつぶれ。透明の液体がこびりついている。



「わっわたしは……!」



 意味が分からない。


 どうして、森の中で、モンスターにこんなことを言われているのか。


 私は。私は……。



「えっと、シリアスムードなところ、水さしてごめん。でも、ちょっといいかな……?」



 スクリーンが言いにくそうに喋りだす。



「……ウワっ! 何ダ? ……シャ、シャベッタアアァァ!!?」



 タランチュラが大きな声ではないが、確実に驚いた様子で、声をあげる。



----------------------------------------------------------




「オデット。耳をちょっと貸して」


 

 そう、スクリーンが私に言う。


 解毒の終わったアンミラ。


 そしてタランチュラは黙ってその場に座っている。



「うん、わかった」



 スクリーンは自分の文字盤が、二人に見えない位置にいくと。


 声には出さず。



「アンデット・ショットの有効範囲レベルが分かったの。あなたのレベルに対して、下のレベルは無制限。だけど、上のレベルのモンスターの場合。+5までのモンスターしか捕獲が出来ない」



 文字盤にそうに表示した。


 私は黙って聞く。



「つまり、今のあなたはLv14。そこから計算すると、Lv19までのモンスターしか、捕獲は出来ないの」



 そう書かれた文字を見て、私は。



「分かった」



 そう短く答えた。


 なるほど。Lv5まで上のモンスターしか仲間にすることが出来ない。


 しっかり憶えておこう。



「タランチュラ。あなたのLvは今20なんだっけ?」



「そうダ」



 私の問いに答えてくる。



「悪いんだけど。あなたを仲間にすることは出来ないの。……ごめんね」



 そうタランチュラに告げると。



「……えっ。……えっ」



 と、タランチュラは戸惑ったかのように声を出す。


 私はアンミラに立てるか聞き、頷くのを見ると。



「そろそろ私たちはいくね」



 そう言い、立ち上がる。



「どうしてっ……ま、ま待っテ……っ」



 タランチュラが弱弱しい声で、そう言うのを、私は聞こえない振りでやりすごした。





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