プロローグ(2)
スクリーンに書き出された、その文字を理解するのに数秒かかる。
「……死にました?」
死んだ?誰が?
ここには私しかいない。
え。ウソでしょ。
数秒あと。
「ううん、ウソじゃないわ。あなたは日本時間○月▲日。12時40分に亡くなったわ」
どうして。
「死亡原因を教えることは禁止されてないの。聞きたい?」
うん。
「飛行機が墜落したのよ。あなたの家だけじゃないわ、その辺り一面が焼けてしまった……」
飛行機。墜落。
「……」
それならば、他の人達もここに来てるんじゃ……。
急に重くなった頭でまわりを見渡す。
だが、誰もいない。
パパやママ、お兄ちゃん。弟だって最近生まれたばかりだったのに。
私だけなのか。
「そう。あなただけなのよ。今回呼べたのは。魂の力も、人の体力なんかと一緒で、個人差があるの」
個人差……。
「燃える速度の速いもの、ゆっくり燃えていくもの。はては燃えても、消滅しないもの」
「そんななかであなたの魂だけ、拾えたのよ」
そうなのか。
「……私はこれからどこに行くの。まさかここで一生過ごすってことはないよね?」
さすがにそれは退屈すぎる。どこか行けるなら、天国、もしくは地獄あたり?……地獄はイヤだな。
「フフフ。ようやく本題に入れそうね」
「本題?」
「あなたにはこれから、ある世界に行ってもらいます。そこが天国になるか地獄になるかは、あなた次第」
そして文字が変わる。
「スキルを3つ選ぶことが出来ます」
スキル?
そして、突然スクリーンがもう一つ出現する。
「その世界を生き抜くための、魔法のようなものね。水の魔法が使いたかったらブリザルドとか。物理攻撃に属性を乗せることもできるわ。水氷撃とかね」
魔法って、昔やったゲームとかそういうの?
わたしが行く世界って一体……。
「もしかしなくても、結構ぶっそうな世界だったりする?」
「そうね~。あまり穏やかではないかしら?でもあなたなら大丈夫よ!かなりの素質があるから!」
フンッ!とまたどこからか、自慢げな音が聞こえる。
「それなら、そうだなぁ。私もう死ぬの嫌なんだよね。まぁ、まだ実感も少ないんだけど……。死なないスキルとかないの?」
「不老長寿とかはさすがにムリね~」
「うーん。じゃあ食中毒とか防いだりするのはある?」
「いきなり生活感のあるのきたわ~。そうね~……。あぁ、これとかそうだと思うわ」
スクリーンに「対毒・異常ウィルス耐性」の文字が出る。
「細かくは私も分からないし、初めて見るスキルだけど。それっぽいし、いいんじゃな~い?」
「・・・なんか適当に言ってない?」
「だってアナタ、戦闘向きなの選ばないんだも~ん」
何なんだ。この神様は。「つまんなーい」という声がだだもれである。
「食中毒は怖いんですよ?最近は本当ひどいのがあるんです……」
特に未知の世界に行くわけでしょ。やっぱ怖いよ。
「フーン?」
スクリーンはやはりどこか他人事のように言う。
でも、たしかにこれならいけそうかな?
再度スクリーンに「食中毒」の単語のついたスキルがないかを確認し、該当なし。ということなので、一つ目はこれにすることにした。
「2つ目……はやっぱアレ。回復魔法」
「それならヒールがいいかしらね」
「あとはそうだなぁ。モンスターを仲間にできるようなスキルがあったら、それにしたいんだけど。」
「そうねぇ……」
スクリーンは該当しそうなスキルをあれこれ探してくれる。
「敵を僕にするスキルは数種類あるんだけど……。どれがいい?」
・消費アイテムを媒体に、しもべにするスキル。
・魔法攻撃を当てることで、しもべにするスキル。
・物理・遠距離攻撃を当てることで、しもべにするスキル。
攻撃パターンで選べるのか。
私が扱えそうのはナイフと、銃くらいかなぁ。
経験としては、お兄ちゃんとのサバゲーごっこくらいだけど。
ここは扱ったことのあるものを選びたい。
「じゃあ物理・遠距離攻撃のやつで」
「オッケ~。じゃあ次のやつ行ってみ……」
突然、スクリーンに歪みが発生する。
ザーザーザー。とテレビの砂嵐のようなものがでる。
なにこれ。私はどうしたらいいの。
そうこうしていると、砂嵐が消え、文字が表示される。
「特殊スキルが作製されました」
特殊スキル?
「該当スキルは「テイム・ショット」。これが先ほど選んだ「防毒・異常ウィルス耐性」の影響で、「アンデット・ショット」に変化をしました。さらに、「ヒール」は「デットヒール」に変化しました」
えええぇ?
「この2つのスキルは、ただいまよりワールド「アルドレイド」に導入されます」
ピピー。という音とともに
「あなたの名前を入力してください」