ギルド集会
私は、3階にある一室でソファに座り。待機をしていた。
クキの説明はこうだ。
「まず、通常の会議は君抜きでやり、青いドラゴンの報告の頃。オレが呼びに来る。それまでは、この部屋で待機していてくれ」
これには私も賛成だ。私が行ったところで、話が進むわけでもない。
「はい」
その会話の後、10分。
暇だ。
……アンミラも待機中の今、同じような思いをしているのかもしれない。
分からないが。
……呼ばれるには、まだ少しありそうだ。
……それにしても、ふかふかなソファだなぁ。
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「……ット。……オデット」
そう声がする。
「……おい、起きろ」
「……はっ!!」
私は飛び起きる。
目の前には、クキが立っていた。
しまった。
あまりにソファが気持ちよくて、寝てしまっていた。
「あぁぁ!すみません……っ」
私はそう言うと、ソファから降りた。
クキは呆れた顔をする。
「着いてきてくれ」
場所は同じく3階。
しかし、その扉は他の部屋より明らかに大きく。
大きいといっても横にではなく、縦にだ。こんな背の高い人がいるのか!?と、私の好奇心を刺激してくる。
クキは「……ここだ」と言うと、扉のノブに手をかけ。手前に引いた。
中にはサークル状の、中央は開いた(ドーナツのような形をした)テーブル。
そして、偏らないよう均等にバランスをとった距離感で、7人分のイスが置いてあり。
5人の人物が座っていた。
「皆さん、お待たせしました」
クキはそう言う。そして私に向かって。
「……簡単でいい。自己紹介を」
普段もキッチリとした口調だが、今のクキはいつもより厳格な雰囲気を出している。
「はい」
私は小さく深呼吸すると、声を出す。
「……私は、オデットと言います。本日はこのような席に同席させて頂き、まことに恐縮です」
本来なら分不相応なのだ。
それなのに、呼んでもらえ嬉しいです。
私はそう気持ちを込めて言う。
クキは私の挨拶が終わったのを確認すると、一呼吸おき。
「今紹介したのが、先ほど報告しました凶悪モンスター。「"朽ちた"ブルー・ベルベット・ドラゴン」の第一目撃者です。彼女はルフニュの森の中にて、該当モンスターの朽ちた瞬間に立会いました」
クキがそう言う。
「……ふむ。この報告書と違わないようだな」
そう言うのは、頭に2本の枝のような角がある尖った顔。獣のような人物だ。
恐らく獣人だろう。
頭はボリュームのある白髪で、ゴワゴワしたような毛並み。
しかし、その身体はそれほど筋肉質には見えず、長めのくすんだ黄色いローブを着ている。
「……君はそこに座ってくれ」
今度は精悍な顔をした男性が、立ち上がり。ひとつのイスを身振りで示し、私に言ってくる。
ホワイトとブルーを基調とした、重そうなフルプレート・メイルを身に着け、背中にはロイヤルブルーのマントを羽織っている。
まさに騎士、というイメージを受けるがどうなのだろう。
「はい」
言われるまま、私はその席へと向かい。座る。
そしてその隣にクキが。
「さて、この報告書によると。4日前の夜。青いドラゴン。ブルー・ベルベット・ドラゴン。が"朽ちた"。とあるが、これはまことかね」
2本の角のある獣のような人物はそう聞く。
「……はい。その通りです」
私はそう答える。その場にいる6人全ての目が私に集まるのを感じる。
「私は"朽ちる"直前まで、そのドラゴンと交戦をしていました」
それを聞いて、皆の目が変わる。
「……交戦。というと戦ったわけだよな。……なぜ、そんな無茶なことを……」
精悍な顔をした、鎧をきた男性が聞く。
「それが、私にもよく分からないのです。ただ、ただ。あの森の中にいて、気が付いたら私のすぐ傍にそのドラゴンが……」
そして、私はハッとする。
「そうだ。あのドラゴン。子育てをしていたんです。……大きな大木に赤ちゃんを2匹隠して。エサを……」
私は、あの日の出来事を思い出し、興奮しながら言う。
獣のような顔の人物は、それを聞くなり。
「報告書になかった情報だ。調査隊はすぐ手配するように」
強い口調で、周りにしっかりと言う。
「続けて」
クキは続きを促す。
私は、自分の特殊なスキルのことを除く、その後の戦闘内容や、ゾンビへと変化していく様子。
そしてすぐその場を去ったことを伝えた。
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「"朽ちた"ドラゴン。それ一匹だけでも相当なのに。まだ2匹"朽ちる"可能性のあるのがいるっていうの」
精悍な顔つきの男性の横に座っていた、髪の短い女性が口を開く。
「・・・おい」
それを聞き、咎めるように精悍な男は、口を出す。
「こないだの戦闘で、うちの兵士達は皆……っ」
女性は顔を赤くして言う。
「大体、どうして……こんな子が森の奥地にいるのよ」
「……おい。やめろ。」
「でも、セイド……!!……ッ。ごめんなさい。私の悪い癖だわ」
今度は落ち込んだように言う。
そして、その場を治めるかのように、獣のような顔の人物は。
「実は、"朽ちた"ブルー・ベルベット・ドラゴンはまだ見つかってないのだ。……今、我々の持つ・全勢力を出して探しているのだが。君はまだレベルは低いが……妙な幸運・縁を持っているようだ。今日の集会はもう終わるが、もし今後何かを"見る"ことがあれば。本部へと連絡をして欲しい。」
何かを見通すかのような、鋭い目で私を見つめ。そう言う。
「それでは、皆のもの。今日のところは解散だ」
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「……ふぅ」
私は転送陣。ワープゲートを使い。ホルトの町へと戻った。
クキはまだ用事があるから。と、首都パルメシアに残ったようだった。
「……」
私は先ほどまでのことを考える。
あれで良かっただろうか、と。
しかし、過ぎたことは必要以上に考えても仕方ない。
「……」
それよりも。"朽ちた"ブルー・ベルベット・ドラゴン。か。
話を聞く限り。相当性質の悪いモンスターなようだ。
でも。きっと、もう。見ることはないだろう。
そんなことを考えてると。もう宿だ。アンミラはもう寝ているだろうか……。
「……」
そして、私は思い出す。
「そうだっ……スクリーン!!」
集会が始まる前から、今の今まで。喋らずついてきてくれたスクリーンに話しかける。
「どうしたの?」
スクリーンは聞いてくる。
「ワープゲートの転送だよ!……私がこっちにきたときに感じた感覚!」
私は興奮して、そう一気に喋る。
「きっと、同じかは分からない。けど、あの部屋の名前が分かったら・・・!行けるんじゃないかな!?」
妄想にも近いが。私は言う。
「……!!」
スクリーンは驚いている。そして。
「私には感覚がないから、気づけなかった……。でも、名前……」
少し気落ちしたように言う。スクリーンはこの話になると情緒が不安定になるようだ。
「大丈夫だよ。今回気が付いたように、またきっとどこかで思い出す」
私は励ますように、そう伝えた。
「……うん。そうだね。ありがとう。オデット」
そして、スクリーンは少しだけ嬉しそうに言った。