買出し
そして、私はアンミラと町の中を歩いていた。
あのまま部屋にいたのでは、襲われかねない。
確かに、現実の世界でも一人旅というのは、そういう危険があると聞いてはいたけど。
まさかこっちでも、その手の事を心配しなくてはいけないとは。
しかも、僕にした相手から、危険を感じるのである。
私はあの後、混乱する頭でアンミラの足を踏みつけ。その場から脱することができた。
「アンミラ……足はもう大丈夫?」
思った以上に踏みつけてしまったのか。
「……」
返事がない。……困ったな。
少し迷ったが、私は近くの建物にある陰を指差し。
「……ちょっとそこの陰で休もうか」
そう言い、アンミラの手を引き、建物の陰まで連れていく。
「うん。ここなら日陰でいいね」
アンミラが喋らないので、私だけが喋る。その場にふたり、しゃがみながら。
少し休んだところで。
「……ううぅん。ごめんなさいね」
アンミラがようやく口を開く。それを聞いて。
「……足はもう平気?」
私はさっきと同じことを聞く。
「……? 一体何の話……? 実は私、朝が弱くてね……」
そう、少し苦しそうに言う。もしかして……。
宿での「尻揉み事件」は、朝が弱くて、何か興奮していただけ?
「……」
……まぁ、それなら、仕方ない……。……仕方ないか?
「ううぅん。大分意識もはっきりしてきたわね~」
私はアンミラが起きるのを待つ。そして、その待っている間。
私は考えた。
朝の様子を見る限り。アンミラの食事はパンや白米では足りない。
食べれるとは言っていたが、おやつに近い感覚なのだろう。主食はまた別。
私はアンミラの食事に頭を悩ます。
「……」
そして、そこでまた疑問がわく。
「ところで、アンミラは日光は大丈夫なの?」
吸血鬼の定番。日光に弱い。
異世界であるここでも、そうなのかとても気になる。
「えぇ、私は吸血鬼と魚人のハーフだから……、血が薄い分、昼間も動けるわ」
アンミラはそう言う。
「……」
私はアンミラの姿を改めてよく見る。
背中の羽は小さく(伸ばすと飛べるくらいはありそうだが) 耳が魚のヒレだ。
「……な、なるほど」
私はそう言う。すると、アンミラは。
「うん。……そろそろ動けるわ。お待たせしてごめんなさいね☆」
そう立ち上がるのだった。
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私は、動けるようになったアンミラを引き連れて、食料店に入った。
この世界の主食は、現実と同じく、白ご飯や小麦で作られたパンが主流だ。しかし、味付けの方は食べれたらそれで良い……という考え方なのか。いたってシンプルなものが多い。
手を加えたらもっと美味しくなりそうなのに。そこだけが残念である。
「よし、これにしようかな」
私は、フランスパンのようなものを数個手にとり。水も買い足す。
美味しそうだ。
しかし、アンミラはこれだけじゃ足りない。せめて……お肉を買わないと。
私は、アンミラに何肉なら食べれるかを小声で聞いた。
それに対し、アンミラは。
「大抵はいけるわよぉ☆ ……牛さんも、鳥さんも……あ。お魚も食べれるわ☆」
そういう。
それを聞いた私は、色々な具材が刺さり、こんがりと焼きあがった「バラエティ☆串焼きセット」と、食後のデザート用に林檎を2個手に取った。
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食料の買出しも済んだので、そろそろ宿に戻りたいところだが、私はもう一件寄りたいところがあると、アンミラに伝えそこへと向かった。
そこは、武器・防具屋だ。
中に入ると、沢山の武器・防具が私の四方を囲む。
入り口近くには、剣士が使うのであろうソード・鎧などが各種並ぶ。
値段の高いものは飾られ、安いものは木箱に無造作に挿し込まれていた。
奥に行くと、短剣。
その隣には刀が並んでいる。
「沢山あるなぁ……」
私は興奮まじりにそう言う。
もともと、お兄ちゃんとサバゲーをしていたからだろうか?刃物や銃器には割りと興味がある。
「そうねぇ……☆ なかなかに圧倒されるかしら」
アンミラは、そう言ってくる。
私もそうだが。モンスターとして暮らしていたアンミラにとってみれば、人の町。しかも武器屋なんて驚きの連続だろう。
一通りの品物を見終わると。
「アンミラは何が装備出来るの?」
そう声をかける。
私はアンミラの戦闘スタイルを知らない。確認しておかなくては。
しかし。
その言葉を聞いて、アンミラは少し困った顔をする。
「……私は今まで魔法スキルと素手だけだったから、……どうかしら」
そうか。
そういえば、昨日も武器は何も持っていなかった。
「懐は豊かじゃないから、あまり高いものは買えないけど……。 今後どんなものを使ってみたいか。使えそうか。考えてみて。……必要ないならそれはそれでいいから」
出来れば、攻撃力強化のためにも、何か装備してほしいが。
魔法スキルによっては、手に持ってると邪魔になる。とかもあるかもしれない。
ここはアンミラに選択を任せよう。
「……分かったわ」
そう言う、アンミラは武器を色々見ながら、考えている。暫くそっとしておいてあげよう。
私は、一人防具コーナーに行く。
そして、手ごろそうなローブを手にとり。広げてみたりして、時間をつぶす。
暫くすると、アンミラが傍にやってくる。
「ねぇねぇ。マスター☆ 私こういうの使ってみたいんだけど……♪」
その手にあるのは。初心者用の手甲。
……指の部分が開いた、手の甲と、手首を守るタイプだ。
「……うん。値段も買える範囲だし。それにしようか」
私は、店主の元へ行き、その初心者用・手甲を購入した。