表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/28

ウルフ戦

 シュイーン。シュイーン。という音と共に、再度現れた魔法陣。


 今度は一体なんだ……?


 どんな敵が現れる……?


 そして、魔法陣は光り。その中央にモンスターが召還された。



「……!!!」



 私は驚く。


 なんせ、そこに現れたのは。


 現実世界の狼と、とてもよく似た姿をしていたのだから。



「Lv10、ウルフ」



 スクリーンは情報を教えてくれる。


 ウルフ。


 その姿は茶色と灰色の混ざった、まだらな毛並みで、鼻の先と、足先だけが黒い。


 瞳は赤く、体長は1.2m程度だろうか。



「……グルルル……」



 獲物を目の前にしたウルフは唸り声を出し、こちらに威嚇をしてくる。


 ……これと戦わなくてはいけないのか。


 そう考えていると、ウルフは軽快な歩みで走り出し。


 いきなり加速を上げ、飛び掛ってくる。


 ……しまった!先制攻撃だ!



「うっ……!」



 私はその攻撃を、回転を加えたサイドステップでよける。


 しかし大きく体勢をくずしてしまい、床に片手と片膝をつく。


 ……素早く、大きな獣。


 武器を変えたいが、その隙はあるだろうか……。


 私は手に持っていたナイフを強く握り、立ち上がる。


 ウルフもまた、体勢を整え、再度食らい付こうとしている。


 しかし、今度は私も負けていられない。



「!!……」



 そんな強い意志を感じ取ったのか、ウルフは少しだけ距離をとり、するどい二本のキバを見せながら、私のまわりをグルグルと回りだす。


 ……。


 私はバックアタックに注意しながら、目で追うように睨みつける。


 ウルフは三週ほどしただろうか。


 私の左側面を通りすぎるあたり。


 ウルフは再度、私に飛び掛かる。



「ウアッ……!!」



 私は、床に倒れこむ。


 そして、それと同時に左腕に激痛が走る。


「ウグアァァァ……ッッ!!!」


 噛み付かれた!!


 大きな二本のキバが二の腕に食い込む。


 痛い……っ!!


「……グルルル!!!」


 ウルフは唸り声を出し、アゴに力をいれ顔を大きく振る。



「……グアアァ……ッ!!」



 私はその痛みでまた叫ぶ。


 こいつ。


 食いちぎろうとしてるのか?私の腕を!!


 スクリーンが「残りHP90/520。」と表示する。しかも、その数値は痛みに合わせてどんどん減っていく。


 まずい、このままでは死んでしまう。


 嫌だ!!


 私・・・私が。……こんなただの獣に殺されてしまう?


 そんなことは、許さない、許せない。


 ……殺す。


 殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す!!!!!


 私は右手のナイフを強く握りしめる。



「この……!!!クソがぁっ……!!」



 そう声を絞り出し。


 暴れるウルフの首め掛けて、ナイフを振り下ろす。


 しかし、それは首ではなく、肩に突き刺さる。



「……ギャウゥッッ!!」



 目を見開き、大きな悲鳴を上げるウルフ。


 そして、その痛みに怯んだのか、尻尾を巻いて後ずさりしようとする。


 だが、そんなことは許さない。


 私は痛む左腕で、ウルフの首根っこを掴むと、その場に叩きつける。


 ウルフは「ギャンッ!!」と鳴き。


 手足をバタバタさせる。


 私はその暴れる身体からナイフを一度引き抜き。


 そして一気に首を掻き切った。



「……グギャッ!!!」



 ウルフの首から大量の血がビューーッと噴出し、その返り血は私の腕や顔を汚す。


 血は、残りHPを表すかのように、止まらない。


 ぐったりとしたその身体を押さえつけたまま。


 暫く待つと「フシュゥ……」と音をたて。



「……」



 グランド・ウルフは血と共に消えてなくなった。



「……ハ……ハハッ……!!」



 支えを失った私の身体からは、急に力が抜け。


 その場にへたりこむ。


 口からは笑いがこみ上げてくる。


 倒した。


 倒した……。


 興奮する頭で、そう繰り返す。


 グランド・ウルフを倒したんだ……。


 そんなぼーっとした状態の私に、突然、背後から声がかかる。



「おめでとうございます」



 振り返ると、扉の前にはミネッサ・エンペンド。


 そして先ほどの男性。


 後は見たことのない者も何名か立っていた。



「すぐに回復しますね」



 白いローブを着た線の細い男性が、私のそばに近づきしゃがむ。



「……ハイ・ヒール」



 静かにそう唱えると、黄色いエフェクトが私の身体を包む。


 暖かい。


 血が消え、キズは完全に塞がっている。


 痛みもない。



「あ……ありがとうございます」



 私は男性にお礼を言う。



「オデット様。良い動きをされていましたね」



 その声に顔を上げると、ミネッサが私を見つめる。



「いえ……」



 私はもう痛くない足で立ち上がり、次の言葉を待った。



「オデット様は本日より、当ギルド会館公認の冒険者となられました。さぁ、……これをお受け取り下さい」



 ミネッサは横の者から、ひとつの箱を受け取ったかと思うと、それを私に手渡した。



「これはギルド公認の冒険者の証。今後、クエストを受注される際には必ず、ご提示下さい」



 箱を開けると、中にはカードが入っていた。


 手の平に乗るそれは、名刺より少し大きい、ツルっとした素材のカードだ。


 表にはドラゴンと剣のエンブレムが描かれ、裏面には私の名前などが書かれている。



「はい。分かりました」



 私はそう言い。


 もう一度カードを見つめ、箱に戻した。



「それでは、1階のカウンターにて、特典と書類をお渡しします。本日はお疲れ様でした」



 一礼をし、ミネッサと周りの者達は、去って行った。



「……私も帰ろう」



 もちろん、特典を受け取ってから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ