表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グローリ・ワーカ  作者: 川柳えむ
第1章:出会い
9/46

どうしてみんな猪突猛進なんだ

「じゃ、宿に戻りますかー」

「はい」


 武器と防具に関しては、2人共とも今のままで充分という事で、特に何も買わない事に決めた。

 そうして2人が宿へ戻る道を歩いていると――


 ドドドドドド……。


 何やら聞き覚えのある音――また地響きがする。土煙が向こうの方で立ち上がっている。

 土煙の中心にいる影は、どうやらこっちにまっすぐ向かってきているようだが――


「……って、ぶつかる――――!! こっち来んなー!!」


 ドォン!!


 物凄い音を立てて、マニュアはそれとぶつかった。


「こ、この町の人って……なんでこんななの……」


 ぱたり。


 マニュアはぶっ倒れた。


「いってー! おっと、ごめん」


 ぶつかってきたのは1人の少年だった。彼自身は軽く尻餅をついたくらいで、全く平気そうだ。


「え、えっと、あなたは誰……?」


 倒れたマニュアの代わりに、ティルが訊く。

 訊かれたそいつは、にぃっと元気よく笑って、大きな声で答えた。


「俺は『ストーム・カーキー』!! 13歳、盗賊だ! 勿論、冒険者って意味での盗賊、な! ま、冒険はこれからなんだけど!」


 それはストームというらしい。元気良く、いかにも盗賊といった身軽そうな格好で、屈託のない笑顔を浮かべている。

 ストームは大きな瞳で2人を見た。


「俺、『ティル』っていう有名人が来てるって聞いたから探しに来たんだぜぇ。おまえら、知らねぇ?」

「え? ティル……ですか? 私、『ティル・オレンジ』。私も13歳の魔物使いですけど……」

「あぁ! おまえがティルか!!」


 ティルの自己紹介に、ストームは嬉しそうに飛び付く。

 はっと気付いたマニュアは体勢を立て直して叫んだ。


「ちょっと待てーぃ!! 私のことは放置か!?『マニュア・ホワイト』! 私も13歳、吟遊詩人だぞ!」


 だが、ストームは聞いていない。


「なんか運命の出会いって感じー」

「聞けよ!!」

「あ、あの……」

「こんな簡単に出会えるなんてな。俺に不可能はない」


 妙に自信満々でストームは言う。変わった奴のようだ。

 マニュアとティルは引いている。


「だから仲間に入れろ。その為に来たんだから」

「――は?」


 ストームの思い掛けないセリフに、思わず2人は固まった。


「ティルを探しに来たって言っただろ」


 無茶苦茶を言うストーム。

 マニュアとティルは顔を見合わせた。


「――と言われましても。私達、まだ――ねぇ」

「あ、う、うん……」

「まだ、正式な仲間ってわけじゃ……」

「じゃ、俺、そのティル――オレンジって奴んとこ、ついてくから」


 ストームがさらっと言う。

 マニュアも、


「あ、いいなぁ。私もオレンジさんと一緒に行きたい」

「……じゃあ、みんなで一緒に行きましょう」


 ティルが言った。

 マニュアは思わず声を上げた。


「え、え――!? ……こいつも? 急にぶつかってきたこんな得体の知れない奴も??」

「はい」

「おっしゃ!!」


 複雑そうな表情のマニュア。笑顔のティル。ガッツポーズをするストーム。


「私は嫌だー! 反対だー」

「じゃ、おまえは来んなよ」

「なんだとぉー!? この、ストーム!」

「なんかちょっと楽しそうです」


 喧々囂々。


「っつーことで、おまえら、どこに泊まってるわけ!?」

「えーと……」


 マニュアを取り残し、話は進んでいく。


「ストーム! オレンジさんもぉ!!」

「んじゃ、俺、一旦家に帰るわ! 明日の朝、宿まで迎えに行くからな!」

「そんなぁー!!」


 マニュアの叫び声空しく。

 ストームは来た時とは裏腹に、爽やかに去っていった。


   ***


 そして、翌朝。

 ストームはしっかりと宿まで迎えに来た。


「さ、行こうぜ!」

「やっぱりこいつも行くのぉ?」

「じゃ、行きましょう。ホワイトさんも」

「ピュウー♪」

「やっぱり……嫌だー!! なんかストーム苦手なタイプだっ!」


 駄々をこねるマニュアだが、2人に引き摺られるように、ティロの町を後にしたのだった……。


「いーやーだ――――――――ッ!!」


 凸凹なパーティーの旅は、今、始まったばかり――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ