広い部屋を借りられました
「どうもありがとう」
部屋に入ると、マニュアはティルにまずお礼を言った。
「いえいえ、お礼なんて……町の人に言ってください」
「『町の人に』ねぇ…………」
ティルの言葉に、さっきの出来事を思い出して多少なりともムカっとしてしまうマニュアだったが、それをティルに言ってもしょうがないのでただ黙っていた。
「それに、こんな大きな部屋まで貸していただいてしまって……」
ティルは言う。
ここは、この町で1番大きな宿のスイートルームだ。部屋の広さも、下手をすれば庶民の家よりも広いかもしれない。
本当にマニュアとティルでは手の平を返したような態度ではあるが、その部屋に一緒に入れてもらえたのはありがたい事である。
「うーん……そうだなぁ」
やっぱり納得はいかないものの、とりあえず、もう気にしない事に決めたマニュアだった。
「――さてと、買い物でも行くかな」
少し休憩してから、マニュアは立ち上がった。
「あ、私も行きます」
部屋を出ようとするマニュアの後をついて、ティルが言った。
「何を買うんですか?」
マニュアはにっと笑って、
「薬草とか毒消し草とか! 冒険の基本だよねっ♪」