目的は達成した
「で? アルト、今までどうしてたの?」
宿に戻ってきた5人。さらに、アルトも加え、アリスは話を始めた――と言うよりも、アルトに問い質した。
「それは――」
***
以下、アルトの話。
ルクスの町で冒険者が放った水の魔法。そして起こってしまった洪水――。
アルトは水に流され、そのまま気を失ってしまった。
暫くして気付けば見慣れない景色……見知らぬ家のベッドの上。
「おや、お目覚めかい?」
その横には知らないおばさんが座っていた。
「ここは……ここはどこっ!? 私はだーれっ!?」
「き、記憶喪失かい!?」
「いや、名前覚えてるよ。アルトです」
アルトはあっさりと答えた。
「なんだい……びっくりさせるんじゃないよ」
「へへ……すいませーん! ……で、ここは?」
「ここはペリクルムの町。私は『フェル・クリーム』だ。ところで……どうして、あんな所で倒れていたんだい?」
どうやら、アルトは町の外れで倒れている所をフェルに発見されたらしい。
フェルの言葉に、アルトは急に泣き出してしまった。
「ぼ、冒険者っていうのが……来て……ヒック、水が……出て……ヒック……それに、流され……ちゃっ……て……」
フェルは慌てて、
「わ、わかったよ。……そうかい。そりゃ可哀そうに……」
「お家……わかん……ない……」
泣きながら訴えるアルト。
フェルは困ったようにアルトを見て、ぽんぽんと頭を撫でると、
「そうか……。そりゃそうだろうね……。それなら――そうだ! とりあえず、おばさんの所で一緒に暮らせばいい! いつか家がわかる時までね」
「いい……の……?」
真ん丸の目でフェルを見つめるアルト。
「あぁ、もちろんいいさ。こんなかわいい子! おばさんも丁度子供が欲しかったしね!」
フェルは問題ナシとばかりに笑う。
アルトは尋ねる。
「なら……お母さんって、呼んでも良いですか?」
「あぁ、いいとも!」
「うん!! お母さん!」
***
――というわけで、彼女は目覚めたこの町で暮らしていたのだ。
そんなアルトを見て、マニュアは言った。
「……ていうか、私はアルトさんの神経の太さにびっくりですよ……」
「ど、どういう意味ですか!?」
「いや、まんまですよ……見知らぬ町で目覚めてもボケれる余裕がすげぇ……」
「そっか……今は『アルト・クリーム』って言うんだ」
アリスが少しだけ寂しそうに微笑んで言う。
「あ、うん。そうなんだ。前は『アルト・シトラス』だったかなぁ……?」
「ていうか自己紹介してないじゃん! 私は『マニュア・ホワイト』」
慌てて名乗る。それに続いて、
「私は『ティル・オレンジ』……」
「俺は『ストーム・カーキー』!!」
ストームを見ながらマニュアは思った。
(ストーム……また内心喜んでいそうだな……)
「俺は『ニール・クラベット』!」
「私は……わかってるよね?」
アリスの言葉にアルトは頷いて、
「うん!『アリス・ヘイズル』だよね」
「よしっ!!」
「ピュ~~……」
そこへ、ひょっこりと黒い毛玉みたいなものが現れた。……そう、ピュウである。最近、完全に忘れられている。
「あ……」
「『ピュウ』ピュウ!」
「その生き物は一体……」
(反応がアリスちゃんに似てるな……)
不思議そうに見つめるアルトに、マニュアはピュウを手の平に乗せると説明した。
「ピュウだよん! 毛玉族っていう種族なの!」
そうして、自己紹介が終わった次の瞬間。
アリスから重大な報告が始まった。
「では、私達、ルクスの町に帰ります」
「え……えぇぇ――――――っっ!?」




