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グローリ・ワーカ  作者: 川柳えむ
第1章:出会い
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これは出会いたくない出会いです

「こ、これが魔物……」

(できるなら会いたくなかった……)


 町の外れ、森の脇で、とうとう魔物と対峙する事となったマニュア。さて、どう出るか。


「…………あ」


 一言だけ声を上げ、突然動かなくなってしまった。一体どうしたのか!?


「あの、気付いちゃったんだけど――」


 弱々しい声で言ったそれは――


「――私の職業って何……?」


 ……………………。

 マニュアと町人、そして魔物の間に、冷たい冬の風が吹いた。


「わ、わっかんないんですかああぁぁぁぁ――――――!?」

「え、冒険者ですよね!?」

「う、あ、あの、冒険者なんだけど、実は、まだ旅立ったばっかっていうか」


 これはひどい。いくらギャグファンタジーだからって自分の職業がわからない冒険者ってどんなだろうか。


「うわぁーん! 本気で落ち込むぞ」


 慌てる町人。落ち込むマニュア。魔物は置いてけぼりである。


「あぁ、もう、殴ってやる――――!!」


 マニュア 状態:混乱

 このままやられてしまうのか!?


「ピュウ――――――――――!!」


 その時、魔物に殴り掛かろうとしたマニュアをピュウが止めた。

 そして、尻尾を何やらごそごそしたかと思うと、そこからマイクを取り出した(どうやって……!?)。


「マイク……?」


 訝しげに眺めていると、町人の1人が叫んだ。


「そうだ!! その装備、吟遊詩人用の服じゃないですか!!」

「え? マジで?」


 自分で「マジで」とはなんとも酷い発言である。


 吟遊詩人とは、その美しい歌声と美貌で敵を惑わすことができる。そして、その歌声には魔力を秘めている。と言われている職業。

 美貌はどうかさておき、町人の言うとおり、マニュアは吟遊詩人が装備できる『初心者詩人の服』を着ていた。


「いや、この服、かわいかったから買ってみただけだし」


 到底冒険者とは思えないセリフである。


「とっ、ともかく! 吟遊詩人なんだね! じゃあ歌います!!」


 ピュウからマイクを受け取り、臨戦態勢に入った。

 そして、大きく息を吸い込み――


   ***


 魔物も町人も、更にはピュウまでも瀕死状態になっていた。

 一言で言うと――音痴、だった……。

 洒落にならないほどのものすごく音痴な歌を大声で歌い、魔物も町人も耳だけでなく精神までおかしくなってしまった。破壊力抜群である……。

 マニュア以外全員、あと一息で死ぬ。


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