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グローリ・ワーカ  作者: 川柳えむ
第4章:人間と魔族
33/46

ある町外れでの出来事

「皆さん、ありがとうございました」


 メテオがマニュア達に深々と頭を下げる。

 マニュア達は慌てて、


「いえいえ。元はと言えば、私達が目を離したのが原因ですから!」

「でも、皆さんのおかげで無事に戻る事ができました。特に、ヘリオドールを助けてもらった事に関しては――感謝してもし切れない」


 メテオが笑顔で言う。

 意識を取り戻したヘリオドールも頭を下げた。


「本当にありがとうございました」


 慣れない応対に、マニュア達はとにかく照れるしかなかったのだった。


「――ノア」


 トーンが、ノアに声を掛けた。

 ノアが振り返る。


「トーン君……」

「あ――……」


 トーンが何かを言いかけ、躊躇い、そして言ったのは――


「お、俺は謝らないからな! おまえも行くって言ったんだからな!」

「う、うん……」


 トーンの迫力に圧され、ノアが頷いたその瞬間。


 ゴン!!


 なんとも良い音が響いた。

 最初はメテオに文句を言っていた、トーンの父親であるその男が、トーンの頭を思い切り拳固で殴っていた。


「――――ッ……!! 痛ぇな! クソオヤジッ!! 何するんだよ!」

「何するんだよじゃない!! あれだけ山には近付くなと言ってあったのに! おまえの我儘がどれだけ人様に迷惑掛けたと思ってるんだ! ノア君に謝るんだ!!」


 男が怒鳴る。

 思い掛けない行動に、皆唖然としてしまった。

 あれだけ最初に文句を言っていた男が、こんな事を言うなんて。

 男は、トーンの頭を無理矢理押さえて下げさせ、自分も深く頭を下げた。


「こいつの我儘、更にこちらの勘違いで大変な迷惑を掛けてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

「…………」

「トーンも謝るんだ」

「……ごめんなさい」


 頭を下げたまま上げようとしない男。メテオは慌てて、


「い、いえいえ! そんな! こちらこそ、ノアが着いていってしまったのはトーン君だけの所為ではないので! ……どうか、頭を上げてください」

「本当に――」


 男は頭を上げて、申し訳なさそうに笑った。


「――魔族は悪い奴ばかりだと決め付けていたが、そうじゃないんだな。今まですまなかった」


 メテオとヘリオドールは一瞬驚いた顔をして、互いに顔を見合わせて微笑んだ。

 その後ろでは、


「ノア……ごめん」

「トーン君……でも、僕、ちょっとだけ楽しかったよ」

「――そうかっ!」


 ノアとトーンが笑顔で話していた。

 こうして、少しずつでも、人間と魔族の距離が縮まればいい。それを少し離れた場所から見ていた5人は、そう感じた。


   ***


「本当に、お世話になりました」


 その翌日。また旅立つマニュア達に、メテオとヘリオドールが頭を下げる。


「いえ! それはこちらのセリフです!!」


 思わず恐縮してしまう。

 なんて人間のできた人達なんだ。いや、魔族だが。

 ヘリオドールの後ろに隠れたノアが5人を見上げ、恥ずかしそうに言った。


「あ、あの……」

「ん?」

「……あの――また、遊びに来てくれる?」


 なんとも可愛らしいお願い。

 5人は笑顔になって、


「勿論! また遊びに来るよっ!! だって、友達でしょう?」


 ノアの表情が明るくなる。

 そして、笑顔で答えた。


「うんっ!!」


 それは、ある日、ある時。旅の途中。ある町外れでの出来事であった――。


   ***


「ピュウピュ……」

(出番なかった……)


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