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グローリ・ワーカ  作者: 川柳えむ
第4章:人間と魔族
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事件発生

「ほんっっ……とうに……すいません……っ!!」


 マニュアは深々と頭を下げた。


「そんな……でも、一体どこへ……」


 メテオとヘリオドールは慌て、困惑した様子。

 窓の外はもう陽が落ちた後だった。

 何が起きたのか、それは――ノアが消えたのだ。

 5人が目を離した隙にノアはどこかへと行った様子で――そう。5人は気付いていないが、ノアは1人川へと向かったわけなのだが――戻ってこないのだ。


「おい……! これ……っ!!」


 ノアを探しに行っていたストームが、勢い良く家のドアを開け、手に持った物を見せた。

 それは、バケツだった。


「これが、川岸に――!」

「まさか……川に流され…………」

「――ノアッ!!」


 メテオとヘリオドールが猛ダッシュで川へと向かう。だが、そこにノアの姿はない。


「ノア――――――――――――!!」


 がっくりと膝を着くヘリオドール。メテオも肩が震えている。

 その後ろの方から、怒声が聞こえてきた。


「おい……おまえら……っ!!」


 いきなり背後から襟首を掴まれ、一瞬何が起きたかわからないメテオ。

 よく見ると、それは町の人間だった。

 メテオの襟を両手で力強く掴み、顔を突き付け、そいつは物凄い勢いで怒鳴り散らす。


「おまえら、俺の息子をどこへやった!?」

「な……っ!?」

「町の外れでも住まわせてやっているというのに……! おまえら魔族が隠したんだろ!? 俺の息子を出せ!!」

「ちょっとちょっと……待ってください!!」


 2人の間に、マニュア達が割って入った。


「なんだ! おまえらは!?」


 メテオの襟を掴んだまま、男が怒鳴る。


「ぼ、冒険者です」


 その勢いに気圧されながらも答えた。

 男は更に怒鳴る。


「部外者は引っ込んでろ! こいつらはな、俺の息子を隠しやがったんだよ!!」


 メテオの襟をギリッと絞める。メテオが苦しそうな顔をした。


「メテオさんは何もしてません! 私達がずっといました!」

「証言します!」


 居ても立っても居られなくなり、アリスやティルが言った。

 男はそれを睨みつけると、メテオを突き飛ばし、今度は2人に言った。


「じゃあ俺の息子はどこへ行ったんだ!?」


 メテオは尻餅を付き、げほごほと咳き込んだ。

 男は怒り覚めやらぬ様子でマニュア達を見ている。


「あ……っ、あの……!!」


 そこへ、その雰囲気には似つかわしくない、かわいらしい声が聞こえた。

 いつの間にやって来たのか、まだ幼い男の子2人に女の子1人……。少年達は、言った。


「僕達は……止めようって言ったのに……」

「それを、トーンが1人でも行くって言って……」

「トーンって……」


 マニュアの言葉に、男が言った。


「俺の息子だ……。どこに行ったと言うんだ?」


 男の子の1人が、すっと指を差した。その先は――


「コープスの死の山……」


 町の裏手に聳える山。山の奥にある洞窟が魔物の棲み処になっている事から、町の人間からは死の山と恐れられ、誰も踏み入る者はいなかった。

 その山に、男の息子は向かったのだと言う。


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