束の間(?)の平和な時間
「とりあえず。買い物どうする?」
戻ってきたお金を見て、ティルが言う。
「俺達じゃ買いに行けねーな。冒険者だから」
ストームの言葉に、
「ストームのせいでね」
すかさず言うティルだった。
「……オレンジ、いい加減に機嫌治せよ……」
「私が買ってこようか?」
アリスからの有難い申し出。
皆は頷き、
「そうだね。サンキュー! じゃあ道具屋で復活の粉5個買ってきて!」
「OK!」
そうやり取りし、一旦アリスと別れた。
***
待ち合わせ場所は、町外れの小さな公園。
そこでマニュアとティルはベンチに座り、それにニールとストームが向かい合って立っていた。
残された4人は他愛ない話をしていた。
「でも、まさか、こんな所で会うとは思わなかった……」
「同じ町だったの?」
マニュアとニールの過去。
ティルの質問に、マニュアはこくんと首を縦に振った。
「いやー懐かしいね。ニールさー、いっつも一緒につるんでる奴がいてねぇ……」
「それよりも、こいつなんかな。あだ名が――」
「うわー!! それは言わなくていい!」
「え? 何々!?」
「おい! 俺も話に混ぜろ!」
目が輝いているティル。横から割って入るストーム。
「混ざんなくていいし!」
マニュアは焦っている。
一体どんなあだ名だったというのだろうか?
「気にしなくていい!」
「むぅ」
残念そうに、ティルはむくれた。
「じゃあさ、彼は『クラちゃん』ね」
ティルが今度はニールを指差して言った。
ニールはぶっと吹き出して、
「おい! あとついでに人を指差すな!」
「『クラベット』だから?」
「うん。クラちゃん」
楽しそうに笑うティル。マニュアと出会ったばかりの頃の彼女に比べると、もう別人だ。
ストームも会話に混ざり、
「おい! クラ!! クララ!」
「クラちゃん、クラちゃん。いやーかわいいね!」
マニュアが笑ってニールの背中を叩いた。
「バカにしてねーか!? むっかつくよ!」
笑い声が、青い空に響いた。




