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グローリ・ワーカ  作者: 川柳えむ
第3章:災難・その後
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全体的に防犯意識が低い町

「え、あ、お、う――――!?」


 踊り子の思い掛けない言葉に、謎の奇声を上げるマニュア。


(ば、ばれてる――!! い、言ったら町から追い出される? ど、で、だ! なんて答えればいいわけ――――ッ!?」


 途中から声に出していた。


「あわっ! な、な――冒険者? なにそれ? おいしいの?」


 慌ててごまかす。

 踊り子は寂しそうに笑った。


「あ、いえ――勘違いならいいんです……。ちょっと、私も冒険者の仲間になってみたいな、なんて。あ、注文でしたね。ただ今お持ちしますね」

「な、仲間ー!?」


 仲間が増えるかも! という期待に、マニュアが言――う前に、ストームが言った。


「おぅ! 俺達、冒険者だけど!?」

「ちょっと――ストームぅ!?」


 驚くティル。


(ストーム……面食いだな)


 マニュアは冷静にそんな事を考えていた。


「え……?」


 酒場の時が一瞬止まった。

 そして――


「わ――――!!」

「冒険者だって!?」

「逃げろ――――――っ!!」

「に、逃げなくてわ……! う、うちの、や、宿に、泊まらないでください!!」


 バタンッ!!


 酒場の人間を含め、皆蜘蛛の子を散らすように出ていってしまった。仲間とその踊り子以外は。


 ヒュ~。


「ちょっと! どーすんの!? 泊まる場所もなくなっちゃったし!!」

「あ、わ、わりぃわりぃ」


 ティルが怒る。ストームは苦笑いを浮かべている。

 その言葉に、踊り子さんが言ってくれた。


「じゃぁ――うちに泊まりますか?」

「え? いいの……?」

「俺もいいのか!?」

「あんたは野宿でもしてれば!?」


 ストームの食いつきに、ティルが冷たい言葉を放つ。


「なんだオレンジ。まだ怒ってんのか!?」

「いやー……傍観者としては面白いですな」


 マニュアは遠くから見ていた。


   ***


「で、どうして仲間になりたいって?」


 人のいない店の中。1つのテーブルを囲い、改めて話を始めた。

 テーブルの真ん中に置かれたランプが妖しく揺らめく。

 踊り子が伏し目がちで、


「あの……この町の住人が、どうして冒険者を嫌うのかは――」

「あ、それはもう知ってる。冒険者が暴れて、魔物を倒す時に洪水を起こしたんでしょ?」


 マニュアが言う。

 踊り子はそれに頷いた。


「そうなんです……。洪水で大勢の人が流されました……。その中に、私の友達もいたんです」

「え……」

「アルト……生きていれば、私と同じ13歳……」

「え!?」


 年齢に異様に反応するマニュア。


「踊り子さん、13歳なの? 私達と同じ!」

「あ、はい……。そういえば、自己紹介してませんでしたね。私の名前は『アリス・ヘイズル』です」


 踊り子――アリスが手を差し出した。

 それを握り返しながら、


「私は『マニュア・ホワイト』だよ!」

「へぇー。はじめまして。私は『ティル・オレンジ』」

「お、俺は『ストーム・カーキー』!」

「『ピュウ』ピュウ!」


 自己紹介をして、アリスは椅子に座り直すと、マニュアの顔を真っ直ぐに見て言った。


「アルトを――水に流されてしまったあの子を――探しに行きたいんです!」


 その真剣な眼差しに、マニュアは――


「私はOKだよーん!!」


 なんとも軽い返事をしたのだった。


「俺もー!」

「私も……」

「ピュウゥー!」


 特に反対する者もなく、あっさりと話はまとまった。


「じゃあ、ドリンク飲んだら、うちに案内しますね!」


 アリスは立ち上がると、笑顔でカウンターへと向かった。


「アリスちゃんの家かー。いや、その前に宿屋に荷物だけでも取りに行かなきゃな……。部屋の鍵も返さないといけないし。ちょっと腹立つけど」

「でもリナちゃんの家にも少し置いてるから、そんなに量はないけどねぇー…」


 苦笑いのマニュアとティル。

 ストームはぼーっとアリスを見ている。


「また一波乱かなぁ~」


 マニュアは頭を抱えた。


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