爆弾発言
ぶすーっとした表情で、頬杖を突くマニュア。
「ほら……機嫌治しなよぉ」
踊り子達の舞台も終わり、今は別の男が大道芸をやっていた。
「大道芸も面白いけどさぁ。結局踊れなかったし、歌えなかったよ」
「おまえ、踊ってどーすんだよ……」
「歌は歌わなくていいよ、本当に」
「ま、まぁまぁ皆さん。ソフトドリンクでもどうです?」
宿の主人が気を遣って言う。
「え? いいの?」
「ウーロン茶!」
不機嫌そうなまま、すかさずマニュアが答えた。
「私、オレンジジュースぅ!」
「俺、コーラ!!」
「わかりました。すいませーん」
宿の主人が店員を呼ぶ。
「はーい」
そこへやって来たのは、さっき右端で踊っていた若い踊り子だった。
「あ! さっきの――」
「踊り子さんじゃないですかぁ!! いやーかわいいですね!」
宿の主人が凄い早さで食いついた。
「あ、はぁ……」
「……宿の主人ってさ、ロリコン?」
思わず陰で訊いてしまうマニュアだった。
ティルは苦笑いで「さ、さぁ……?」と答える他なかった。
「えっと……あの、それよりも、ご注文でしたね」
話を逸らす踊り子。
「あ、そうです。ウーロン茶とオレンジジュースとコーラ。あと、ビールをもう1杯」
「かしこまりました。それと、あの――」
「ん? どうしました? あ、私に惚れちゃいましたか? それは困ったナァ」
踊り子が気にしているのは、どうやらマニュア達3人の方のようだ。
踊り子は鼻の下を伸ばしている宿の主人を華麗にスルーして言った。
「あの、あなた達――今日の昼に現れた冒険者の方ですよね……?」




