部屋の鍵だけ閉めてきた
3人と1匹は、男達を縛り上げたまま置き去りにして、夜の街へと繰り出した。
こんな森の中の町だ。大した遊び場などない。
ただ1箇所を除いて――。
***
「お~ぢ~さ~ん~??」
ここはこの町に1軒だけの酒場。舞台では踊り子達が踊っている。ここがリナの言っていた人気の酒場だろう。それは、もしかしたら、単に他の娯楽がないだけなのかもしれないが。
酒場の明るい雰囲気の中、一部だけ、どす黒い気が渦巻いていた。
「どーゆー事ですか?」
その一部分。どす黒い気の発信源は、マニュア、ティル、ストームの3人であった。
マニュア達は男に詰め寄っている。
「宿をほっぽって、何してるんだよ!?」
「いや、ねぇ。だから、早くから待ってないと、満席になっちゃうんで――ねぇ? ここの踊り子、人気あるんですよ……!」
その男――つまりは、宿の主人だったりするわけだが、なんともふざけた言い訳をしていた。
「そんな事で仕事さぼって、い・い・の・か・い!?」
「あ、ほらほら! あっ、あの右端の踊り子! いーですよねー! まだ若いらしいんですよ!」
「ごまかすなぁ!」
そう言いつつ、マニュアもそちらの方に目をやった。
他の踊り子に比べたらまだ幼くはあるが、整った顔をしている。踊りもとても上手だ。
「確かに綺麗だけどさぁ。踊り見てても……私にはつまらんし」
「でも凄いねー。上手」
ティルも感心した様子で見ている。
ストームはでれでれしている。
その様子に気付いたティルが、ストームの頬を抓った。
「いでででででで! 何すんだっ!」
「別に」
マニュアは舞台をぼーっと眺めていた。
次の瞬間、何を思い立ったのか、マニュアが口走ったのは――
「私も踊る!」
「ええええええっ!?」
舞台に乱入しようとするマニュア。
「私も目立ちたい! 何なら歌も歌いたい!!」
「ヤメロ。待て。早まるな!」
「ちょっと――迷惑掛かるよ! 本当に迷惑掛かるよ!!」
必死に止めに入るストームとティルであった。
「ピュウピュウ」
その様子を見ていたピュウは「やれやれ」といった感じで首(?)を振った。




