そのナイフ何本持ってるの?
薄暗い部屋、階段を降りたその先で待つものは――。
「誰だ!?」
マニュアの「冗談じゃない!」という叫び声に、そいつは気付いた。
「あぁぁっ!! ばれた!!」
焦るマニュア。
だが、あれだけの大きな声を出していれば当たり前である。
「ちっ! 人がいたのか!!」
人影に気付いたそいつは、その人影――マニュアに向かってナイフを投げてきた!
「ひゃ――――――っ!!」
ひゅん!
危機一髪とは正にこの事。
ナイフはマニュアの頬を掠めて、壁に突き刺さった。
「ちっ! 外したか。次はそーはいかねーぜ! 盗みを働いているとこを見られちゃぁ生きて帰すわけにはいかねぇ!」
「やーれ、やーれ!」
「殺せ――――!」
「…………」
1人しかいないのかと思ったら、どうやらかなりいるようだ。最低でも――4人。
というか、泥棒かこいつら。自白している。そこまで知らなかったのに、というか知りたくもなかったのに。
マニュアは溜息を吐いた。
「行くぜ!」
その中のボスと思われる奴が、またもナイフを投げようとした。
「ちょ、ちょっと待って!」
マニュアが慌てて声を上げる。
その声に、ボスも思わず手が止まってしまった。
「なんだ?」
「あなた――名前は!?」
ズテッ。
その場にいたマニュア以外の全員、力強くこけた。
ノーテンキなのか、何なのか。それとも、もしかして何でもいいから隙を作ろうとしたのか。単純に気になったのか。
しかし、当然の事ながら、名乗るような犯罪者なんていない。「冥土の土産に……」なんて事もなかった。
「これから死ぬ奴には関係のないことだ」
「そ、そんなぁ」
体勢を取り直し、そいつはナイフを思いっ切り投げた。
「死ねっ!」
(もー! マジでダメッ!!)
――が。
「あら? あれ、れ、ろ、ら? てぃ、えい、やぁ、とぉ――――っ!」
スカスカスカスカスカッ!
全部当たらない。当たる素振りすらない。
(……もしかして、さっきの――まぐれ? ……それにしても、ナイフいくつ持ってんだ?)
爪楊枝や綿棒のように束で持っているのか? というくらいのナイフの数。
しかし、そんなことを考えていたところ、1本だけ。
ひゅん!
「顔面めがけてまっしぐら――――――!!」
その時!
「ピュウ――――――――!!」
「ピュウ! 良かったぁ! シザーバッグ付けっ放しで!」
「ピュウ」
間一髪、マニュアの腰に付けていたシザーバッグの中からピュウが飛び出てきて、そのナイフを(どこにあるかよくわからない口で)咥えて取った。
「えっへん」とばかりに反り返るピュウ。
その様子を見て、そいつは情けない声を上げた。
「ああ――――――――っ!! て、てめー! よくも俺様が上手く投げたナイフを……!」
「今だ! ピュウ! マイクを!!」
「ピュウ!」
――…………。
***
「参ったかー!! わーっはっはっはっ!!」
泥棒達は10000000のダメージ。全員ぶっ倒れてしまった。
大口を開けて笑うマニュア。
「……マ、マニュア……ちゃん……。今の……い、一体……どー……した……の……?」
「ホ、ホワイト……てめー……一体、何なんだよ……!」
この歌声に、流石のティル達も逆に起きたようだ……。




