災難は続くよどこまでも
「……くー、くぉ――っ…………」
マニュアは眠っている。
宿で借りる事のできた2階の角部屋に入り、ベッド入った途端、これである。
リナはその様子を見ると、笑いながらすぐに帰っていった。
「マーはのん気だなぁ……」
ティルが、そんなマニュアを見て呟いた。
「よだれ垂れてるし……」
「くぉーくぉー……」
「はぁ。こっちも眠いから寝よー」
勢いよく伸びをするティル。
ふと振り返ると、もう1つ残されているはずのベッドには――ストームが寝ていた。
「ぐー、ぐー……」
「って、こらぁ! ストーム!! もう1つ部屋借りたでしょ! 自分の部屋で寝なさい!」
だが、一向に起きる気配はない。
「もぉ! ちょっと! 魔物呼ぶよぉ!!」
思わず大きな声で言ってしまい、慌てて口を手で押さえた。
もし、町の人に聞かれたなら大変な事になる。
しかし、大丈夫だったようで、特に誰も何も言ってこなかった。
「もぉ――――っ!! とにかく、どっか行って!」
***
ポッポー、ポッポー……。
鳩時計が6回ほど鳴った。すでに外は夕日が落ちた後だった。
「ふぁ~」
鳩時計の音で目覚めたマニュア。
「んー……」
すぐ横ではティルが眠っている。
それをぼーっとした頭で見て、
「……もう1回寝よ」
そう決めて、再度ベッドに潜り込んだ直後。
ガタガタガタ……。
下から、妙な物音が聞こえた。
「な、何っ!?」
マニュアは飛び起きた。
静かに息を飲み、耳を凝らしてみると――
ガタガタガタ……。
確かにまた聞こえた。
「1階から、する……。何?」
どうしよう。見に行こうか? しかし、1人で――?
「やっぱり怖いからティルちゃん起こそ」
そうこう言っているうちにも、下から音は止まずに聞こえてくる。
「ティルさーん……起きてくださ――い……」
「う、うん……マー……?」
「そうそう。起きて! ティルちゃん!」
「うーん……あと少し……」
ティルは寝返りを打つと、向こうを向いてしまった。
「だああああぁぁっ!! もういい! 1人で行く!」
覚悟を決める。高鳴る鼓動を抑え、乾いた喉を湿らせると、マニュアはゆっくり階段を降りていく……。
この後、起こる事件を今はまだ知らずに――。
「って、はっ! 今回の章タイトル――『災難』!? ……あぁっ!? なんだー! しかもページタイトルまで――!?」
とんでもないメタ発言をする。
「充分もう災難だっつーに!! また事件なんて、冗談じゃないぞおおおおおお――――!!」
マニュアの悲痛な叫びが、遠くの山までこだました。




