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グローリ・ワーカ  作者: 川柳えむ
第2章:災難
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災難は続くよどこまでも

「……くー、くぉ――っ…………」


 マニュアは眠っている。

 宿で借りる事のできた2階の角部屋に入り、ベッド入った途端、これである。

 リナはその様子を見ると、笑いながらすぐに帰っていった。


「マーはのん気だなぁ……」


 ティルが、そんなマニュアを見て呟いた。


「よだれ垂れてるし……」

「くぉーくぉー……」

「はぁ。こっちも眠いから寝よー」


 勢いよく伸びをするティル。

 ふと振り返ると、もう1つ残されているはずのベッドには――ストームが寝ていた。


「ぐー、ぐー……」

「って、こらぁ! ストーム!! もう1つ部屋借りたでしょ! 自分の部屋で寝なさい!」


 だが、一向に起きる気配はない。


「もぉ! ちょっと! 魔物呼ぶよぉ!!」


 思わず大きな声で言ってしまい、慌てて口を手で押さえた。

 もし、町の人に聞かれたなら大変な事になる。

 しかし、大丈夫だったようで、特に誰も何も言ってこなかった。


「もぉ――――っ!! とにかく、どっか行って!」


   ***


 ポッポー、ポッポー……。

 鳩時計が6回ほど鳴った。すでに外は夕日が落ちた後だった。


「ふぁ~」


 鳩時計の音で目覚めたマニュア。


「んー……」


 すぐ横ではティルが眠っている。

 それをぼーっとした頭で見て、


「……もう1回寝よ」


 そう決めて、再度ベッドに潜り込んだ直後。


 ガタガタガタ……。


 下から、妙な物音が聞こえた。


「な、何っ!?」


 マニュアは飛び起きた。

 静かに息を飲み、耳を凝らしてみると――


 ガタガタガタ……。


 確かにまた聞こえた。


「1階から、する……。何?」


 どうしよう。見に行こうか? しかし、1人で――?


「やっぱり怖いからティルちゃん起こそ」


 そうこう言っているうちにも、下から音は止まずに聞こえてくる。


「ティルさーん……起きてくださ――い……」

「う、うん……マー……?」

「そうそう。起きて! ティルちゃん!」

「うーん……あと少し……」


 ティルは寝返りを打つと、向こうを向いてしまった。


「だああああぁぁっ!! もういい! 1人で行く!」


 覚悟を決める。高鳴る鼓動を抑え、乾いた喉を湿らせると、マニュアはゆっくり階段を降りていく……。

 この後、起こる事件を今はまだ知らずに――。


「って、はっ! 今回の章タイトル――『災難』!? ……あぁっ!? なんだー! しかもページタイトルまで――!?」


 とんでもないメタ発言をする。


「充分もう災難だっつーに!! また事件なんて、冗談じゃないぞおおおおおお――――!!」


 マニュアの悲痛な叫びが、遠くの山までこだました。


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