どうなってんの
ティルの予感は当たってしまった。
『本日定休日
お泊りの方は隣町までどうぞ』
ででん。
「なっ、何、これェ――――ッ!!『定休日』って、どーいう事よ!?」
「と、『隣町』って……」
この町の周辺は先程も言ったように、森に囲まれている。つまり、森の中、孤立したような町である。
隣町など、どれほど遠いのか……。
「あのな――――!!」
宿屋の前で喚く3人。
――その時。
「あ、あの、冒険者の方ですか?」
ふいに、後ろから声を掛けられた。
「ヘイ。そうで……いやいや、違います違います。冒険者なんかじゃありません」
「そうです」と言いかけて、慌てて言い直した。
もしかしたら、冒険者でなければ泊めてもらえるんじゃないかと思ったからだ。
3人が後ろを振り返ると、そこには1人の少女が立っていた。
少女は少し寂しそうに笑って言った。
「隠さなくてもいいんですよ。その格好を見ればわかります。それに、私は味方です」
その言葉に、マニュアはすぐさま素直になって、
「はい。冒険者ですが。一体どういう事ですか、なーんなんですか、ここは!!」
強気に出たのだった。
少女はそれに目を伏せて答えた。
「ちょっと、冒険者を嫌ってて……」
「だからって、ここまでやるぅ!?」
マニュアは微かに――いや、大分怒っているようだ。
そして、少し考えてから、はっとした。ちょっとは悪い事を言ったのに気付いたのだろうか。
「自己紹介してない!!」
――どうやら、そういうわけではなかったようだ。
彼女は、相手の事情も考えず文句を言ったことに関して、何も感じないのだろうか!?
しかし全くそんな事には気付かず、マニュアは元気良く名乗る。
「そんなわけで。私は『マニュア・ホワイト』!」
「私は『ティル・オレンジ』」
「俺は『ストーム・カーキー』だ!」
「私は『リナ・フレッシュ』です。えっ……と……」
少女は言った。
相変わらずリナの様子や事情などは気にせず、マニュアは即座に訊いた。
「あのさー……どうすればいいと思う? どうやったら宿に泊まれる?」
リナは、マニュアの傍若無人な態度も気に留めず答えてくれた。
「冒険者がいなくなったと思わせればきっと……。とりあえず、今の冒険者の服は脱いで、髪型も変えれば……」
「あ――――っ! そっか! そうしよー!!」
途端に笑顔になるマニュア。
あまり大声で言っていると、他の町の人達に勘付かれそうだが。
「でも、どこで着替えるの?」
ティルが訊く。
今度は、マニュアの笑顔が凍り付いた。
「あ……う――……どこで……?」
「あ……! 私の家で着替えてもいいよ!」
有難い事に、リナがそう申し出てくれた。
「おぉ、サンキュ!! 替えの服は――どうしよ」
それもリナは、
「私の服を貸してあげる。そっちの男子は、お父さんの服になっちゃうけど」
と、何から何まで有難い提案をしてくれるのだった。
「あ、でも、直接家に来るとバレるかもしれないから、森の中で落ち合うことにしよう。そうしたら、家の裏口から入れてあげる。1度森に戻ったほうが、みんなもう冒険者は帰ったと思って安心すると思うから」
リナの案に頷く一同。
「わかった。それじゃ、またすぐ後で!」




