ガンガンいこうぜ
「行くぞ――――ッ!!」
「おー!!」
勢いよく叫ぶストームに、つられてティルも元気良く叫ぶ。
「はぁ……」
マニュアは横で溜め息を吐いた。
（なーんか……ティルちゃん――だんだんとストームのペースに嵌められてきたような気が……。私も嵌められつつあるけどさ）
物思いに耽っているマニュア。
マニュアは大事な事を忘れていた。
「マニュアちゃん!? なにやってんのぉ!!」
「おい！ ホワイト!! 危ねーぞ!!」
――戦闘中だということを。
「え？ げ!! わ――――っ!!」
咄嗟に避けるが、魔物の爪はマニュアの腕に一筋の赤い線を作った。
「もぉー!! なんて事するの!!」
怒ったティルが叫ぶや否や、その指先が光り出した。同時に何かを呟きつつ、光る指で空中に魔法陣を描き出す。
その魔法陣が完成すると同時に、なんとそこから魔物が飛び出した！
驚くストームとマニュア。
「うわわわわわわ!? 魔物っ!?」
「これ――…………!?」
「大丈夫！ この子は仲間だから！」
そうティルは言って、呼び出した魔物を敵である方の魔物に嗾けた。
呼び出した魔物が魔法を放ち、敵を一掃する。
「しゅ、しゅげぇ……」
驚きの余り、舌が回っていないマニュア。
「よ、よくここまで、魔物が懐いたね……」
「えへ。なんでだろうネェ」
照れたように笑うティル。
しかし、マニュアは純粋に不思議で仕方なかった。
（でも、あっさり大好きな魔物を一掃しているのは、いいのだろうか……）
「おい！ まだ来るぞ！」
その後ろで、ストームが悲鳴に近い声を上げた！
２人もまた身構える。
「しかも、さっきよりも強そう！」
またもティルが魔物を呼び出すものの、きりがない。
いくらフィールド上――そして、森の中だとはいえ、数が半端ない。どうやら、魔物の巣窟に紛れ込んでしまったようだ。
「あーもー！ ……って、あ。そうだ！ 私は吟遊詩人だった！」
マニュアはふと自分の職業を思い出し、マイクを構えた。――直後。
「ま、待って!!」
ティルが顔面蒼白でマニュアを止めた。
「……なんで？」
不思議そうな顔のマニュア。
「こ、心の準備がまだ……」
そう言うティルの様子に、ストームもなんだか不安になってきた。
「お、おい。大丈夫なのか…？」
「何それ。それじゃ、今度こそいっくよー!!」
「わーっ!! タイム――ッ!!」
しかし、叫び空しく。
……魔物も、ティルもストームも気を失った。
気絶を治す為には、復活の粉を使えばいいのだが――
「なーに寝てんの!? 起きて！ 朝だよー」
……だめだ、こりゃ。
