表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/58

第3話 いざダンジョンへ

 このパーティーがボス討伐直前だという事を知り、俺は少し動揺する。


 しかし、いまさら後には引けない。

 

(レベル上げに適していそうなパーティーが他にも見つかるとは限らないからな……)


 俺は少々の不安を押し殺して、パーティーに告げる。


「お互いの自己紹介といきたいが、ここは騒がしいし、人の目も多い。先にダンジョンへ移動しないか?」


 ギルドの誰かに俺の事をバラされるのはマズイ。俺は早くこの場を離れたかった。


「ああ、そうだな。先に移動するか」


 騎士風の男が頷く、それを見て他のパーティーメンバーも了承する。


「……よし、じゃあ向かおう」


 そう告げて俺は歩き出すが。


「……お待ちください!」


 ローブを着た女だ。


「私は転移の魔法が使えますので、歩いて向かわなくても大丈夫ですよ」


 この女、魔法使いか?


 この世界では魔法は普通に存在するらしい。

 だが俺は未だに魔法を見たことがなかった。才能がある者は千人に一人とも言われているらしいので、無理もないと思うが。


 内心、魔法が見れる事に興奮したが、表情には出さずに言葉を述べる。


「まさか転移のような高等魔法を使える者がいるとは……君は優秀なんだな。ぜひ頼むよ」

「はい!」


 ローブの女がニッコリと笑顔で返事をする。

 正直俺は転移魔法が難しいのかはわからない。

 とりあえず言ってみただけだ。


 謙遜しないところを見ると、おそらく魔法使いの中でも転移魔法を使える者は少ないのかもしれない。

 勝手な推察だけどな。


「他のみなさんも準備は大丈夫でしょうか?」


 みんな一様に頷く。


「……では、いきます」


 少しの詠唱の後、気が付くと一瞬でダンジョンの近くまで来ていた。随分あっさりだな。

 初めての魔法体験はあっという間に終わってしまった。

 少し残念な気もしたが、気を取り直し自己紹介タイムに入る。


「さっきも名乗ったが、名前はカイトだ。主に剣を使っている。レベルは30だ」


 俺の言葉を皮切りに、騎士風の男が自己紹介を始める。

 もちろん俺に対してだけだ。他の者は全員知った仲という事だろう。


「俺の名はロイス。俺の得物も剣だ。よろしくたのむ。レベルは27だ」

「私はライカ。同じく剣を使っています。よろしくお願いしますカイト殿」


 騎士風の女こと、ライカのレベルは25らしい。

 呼び捨てで呼んできても良さそうなものだけどな……。

 

 俺の言葉を信じているとしたら、実力が上の者に敬意を持っているという見方はできるが……。

 まあ単にお堅い性格な可能性もあるか。

 長い黒髪に、黒い瞳。顔もスタイルも良い。元の世界に連れて帰ったらさぞかしモテそうだな。


 そんなくだらない事を考えているうちに次の者が喋り出す。


「わしはリックじゃ、斧を使っておる。レベルは28じゃ。よろしくたのむぞ」

「私はエリザと言います。魔法使いです。足を引っ張るかもしれませんが、よろしくお願いしますねカイトさん」


 おっさんのレベルがこの中で一番高いようだ。

 もちろん俺も含めて。


 ローブの女こと、エリザのレベルは20。この中では一番……いや二番目に低いな。

 もちろん俺が圧倒的にレベルが低いのは言うまでも無い。


 各々の自己紹介も終わり俺たちはダンジョンの中に入ることにする。


 初級ダンジョンは出入り自由だが中級からは、特に危険が大きいために誰でも自由に入れるわけではない。ギルドに所属する冒険者以外には解放されておらず、そして国で管理をするのが一般的らしい。


 中級のミルダンジョンにも国から配備された兵士が入り口に立っている。

 なぜかこっちをチラチラ見ている気がするが。


 俺たちが入り口に近寄ると、さらに兵士たちがこちらに注目しだす。

 

 (いったいなんなんだ……?)

 

 そのうちのひとりが驚いた表情でロイスに話しかけてきた。


「やはり……閣下!? こんなところで一体何を?」


 ロイスは少し気まずそうな顔をしながら答えた。


「……少しこのダンジョンに用があってな」


 閣下?

 俺は首をかしげ、ロイスに尋ねる。


「……ロイス、知り合いか?」


 一瞬、兵士が俺の事をすごく驚いた表情で見た気がした。


「ああ、ちょっとな……」


 あまり歯切れの良い回答では無かったが、この場で再び聞くような真似はしなかった。

 ここでは喋り難いことなのだろうと判断した俺は、ダンジョンへとみんなを促す。


 全員で中へ入り、周りに俺たち以外に人がいない事を確認してから聞いてみる。


「ロイス、閣下というのは……?」


 どうせ聞かれると思っていたのだろう。頬をポリポリ掻きながらロイスが話しだす。


「実は……俺はこの国で騎士団長をしている。あの兵士は帝都で俺の事を見た事があったのだろうよ」


 騎士団長……。

 おそらく国の重鎮とも呼べる役職だろう。俺がどういったリアクションを取るか判断を決めかねていると、ロイスがさらに続ける。


「そこにいるライカだが普段は姫様付きの近衛隊長だ。そして後ろのおっさんは前の騎士団長だ」


 俺がライカの方を見ると彼女は黙って左手を少し上げた。少し照れているようにも見える。


 おっさんのほうは元騎士団長か、それにしてもロイスにもおっさんって呼ばれてるのか……。


「おい、誰がおっさんじゃ。全く近頃の若いやつは……」


 おっさんがお決まりの文句を言うがみんな聞こえない振りをした。

 

 理由はわからないが、どうやらこの国の実力者が勢揃いしているみたいだ。

 

 俺は、視線をローブの彼女に送る。

 たしか……エリザと言ったか。

 あと、出自がはっきりしていないのは彼女だけだ。

 

 「……じゃあ、行くか」


 ロイスが続けて説明してくれるだろうと思っていた俺だったが、どうやらその気はないらしい……。


 何か話せない理由でもあるのだろうか?

 まあそれなら勝手に推理させてもらおう。

 

 俺はライカが、姫様付きの近衛隊長と聞いてもしや、エリザはこの国の姫なんじゃ……? と考えたが、すぐにその考えを打ち消す。

 どう見ても3人とも、姫に対する態度ではない気がする。なんか妙によそよそしい気もするし、エリザも臣下に対して敬語を使っている事になる。そもそもあまり会話も無いみたいだ。


 ふむ……。

 これ以上考えてもわかるとは思えないな。

 俺は考えるのをやめ、頭をダンジョンの方へ切り替える。


 俺たちは入り口付近の魔法陣に移動した。


 ダンジョンは基本的に、十階層ごとに魔法陣が有り、行った事のある階層であれば魔法陣を使って一瞬で移動できる。つまりこれから俺たちは魔法陣に乗り四十階層へ移動する事になる。

 俺は不本意だけどな。


 魔法陣に乗ると先程のエリザの転移魔法の様に、なんの感慨も無くあっさり四十階層へたどりついた。


 あきらかに俺のレベルで来る階層ではないが、ここまできたらやるしかない。


 俺はあらかじめ考えていたセリフを全員の前で言う。


「……とりあえず、お前達の実力と連携の練度が見たい」


 それに対してロイスが答える。


「……たしかにな。1度見てもらった方がカイトも参加しやすいだろう。わかった。最初は見ててくれ」

「まあ、万が一お前らが危なくなったら俺も手を出すがな」


 俺はそう言って、ニヤリと笑う。


「期待してるよ」


 ロイスもニヤリとする。


 ほどなく最初の魔物と戦闘になる。

 もちろん俺は見学だ。


 四十五階層まで行ったというロイスの言葉に嘘はなかったらしく、特に苦戦する事もなく四十階層の魔物を倒して見せた。


「どうだったよ? 俺たちの戦いぶりは」


 ロイスに早速感想を求められる。

 他のメンバーも俺がなんと言うか興味があるらしく全員に注目される。


 俺は先程の戦いがどんな内容に終わろうが、次に言うセリフは決めてあった。



「そうだな、俺の個人的な意見だが――」




 ここから俺のレべリング作戦がスタートする。



読んで頂けた方、ブックマーク登録してくれた方、評価してくれた方、ほんとに嬉しかったです。

ありがとうございました。モチベーションもアップ中です(笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ