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第16話 中級ダンジョン攻略へ

 中級ダンジョンに入れるよう、ギルドで手続きを終えた俺は、挨拶もそこそこにロイスやアキームたちと別れる。

 指導は割と好評だった様子だ。まあここのギルドに顔見知りも多数できた事は俺にとっても収穫だろう。


 とりあえず明日には早速中級ダンジョンに潜ると決めた。



 翌日、俺は再びギルドへ向かう。

 情報収集の為だ。

 目的を急遽レベル上げから、攻略に変更したからな。

 どうしても必要な人手がいる。要するに人探しだ。


 ギルドに到着すると俺は職員に質問しようと周りを見渡す。

 あの人がいいか。

 俺は近くにいた中年男性の職員に声をかける。

 おそらくベテランの方が適任だろうからな。


「すまないが聞きたい事があるんだ」

「ああ、カイトさんでしたね。昨日はお疲れ様です」


 どうやら俺の事を知っているらしい。

 講習を見ていたのだろうか?

 まあ今はそんな事はどうでもいい、俺は早速聞きたい事を質問する。


「あんたが知っている中で、帝都の中級ダンジョンを一番深く潜った人を紹介して欲しい」

「一番深くまで潜った人ですか? う~ん最近は奥まで行ける冒険者の方がなかなかいなくてね」

「別に最近じゃなくてもいい。なるべく深く潜った実績のある奴はいないか?」

「引退した人でも?」

「ああ、話を聞きたいだけだからな」


 これは半分嘘だがまあ構わないだろう。


「そういうことならこの国の宮廷魔術師のタールというお方が、かなり深く潜ったという話を聞いたことが……ただもう随分と高齢なんだとか」


 宮廷魔術師、肩書きからして偉いんだろう。

 俺の頼みを聞いてくれるかどうかも微妙だ。そもそも会えるのかもわからない。

 微妙な人選だな、他の人を当たるか。


 そこまで考えたが、ふと思い出す。

 そういえばロイスには貸しが有ったな。

 すぐに返して貰うとするか。


 おそらくロイスなら繋がりを持っているはず。

 そう思った俺は職員に礼を言い、城に向かう事にした。


 城の前に到着した俺は門に近づく。

 俺の事を知っている門番だと話は早いが。

 ちらっと二人いた門番の顔を確認する。

 知らない顔だ。


 まあだからといって尻込みする訳にもいかない。

 説明すれば分かるだろう。

 俺は門番に声をかける。


「すまない。少し頼みがあるんだが」

「はい? なんでしょうか」

「ロイスに取り次いで欲しい。カイトが来たと言えば分かると思う」


 俺がロイスと呼んだ瞬間男の顔が怪訝な表情に変化する。


 またか。

 次に来た時はロイス様と言った方がいいか?


「ロイスというのは騎士団長のロイス閣下の事でしょうか?」

「ああ。そいつで間違ってない」


 俺がそいつ呼ばわりした事でさらに兵士の顔が不審な色を帯びる。

 さすがに俺もうんざりしてきたが、その時別の兵士に話しかけられる。


「カイト様じゃありませんか?」

「ああ、そうだが」


 俺はよくおぼえていないが前に来た時にいた兵士なのだろう。

 なんせ俺の事を様よばわりするくらいだからな。


「やっぱりそうでしたか。今日はライカ様に会いに?」


 なぜそこでライカの名前が?

 俺は疑問に思ったが、ロイス、ライカ、おっさんの三人は友達と名乗ったからな、まあおかしくはないか。


「いや、今日はロイスに会いに来た。取り次ぎを頼む」

「わかりました。直ちに」


 それまで俺の応対をしていた兵士が我慢ができずに尋ねる。


「小隊長この方は?」

「カイト様は閣下の友人だ。ライカ様やリック様もな」


 それを聞いた兵士は驚いた表情を俺に向ける。

 さすがにもう慣れたな。


 俺はその兵士のリアクションを無視して、ロイスを待つことにする。



「よお、カイト。昨日も会ったってのにまた随分早い再会だな。今日は何の用だ?」


 しばらくすると、ロイスが門の所までやって来た。

 不思議そうに俺の事を見る。

 まあ昨日の今日だしな。


「悪いな。少し頼みがある」

「ハハハ、早速借りを返せということか。まあカイトには無茶を頼んだからな……大抵の事は引き受けてもいいぜ。まさかこんなにはやく頼みごとをされるとは思っていなかったけどな」

「宮廷魔術師のタールって人いるだろ? 紹介してくないか?」

「あの爺さんか……なんでまた?」

「帝都の中級ダンジョンを深く潜った事があると聞いたんだ。とりあえず話を聞きたい」


 ロイスは考え込むようなしぐさを見せ、言いにくそうに口を開く。


「……紹介するのはかまわないが、話を聞けるかはわからないぞ?」

「難しい性格なのか?」

「難しいというか……まあ会ってみればわかるよ。カイトなら気に入られるかもしれないしな。じゃあ今から行くか?」

「今から会えるのか? だとしたら助かるな」


 俺はロイスの案内で、タールという爺さんの元へ向かった。

 それにしても短期間の内にかなりお城に出入りしているな。少し構造を覚えてしまいそうだ。


 しばらく城の中を歩いてかなり大きい扉の前に案内される。


「たぶんあの爺さんはこの中にいるが、気難しい性格ではないから畏まらなくていいぞ。もっともカイトは初めからそんな気はないかもしれないけどな」


 そんな事を言いながら扉を開けて中に入る。


 部屋の中は一言で言うならば汚い。

 本や何かの器具が散乱している。

 そこで一人の老人が何やら作業をしていた。

 だがおかまいなしにロイスは老人へ声をかける。


「おい爺さん」

「ん? なんじゃロイスか。ワシは見ての通り手が離せん。用なら後にせい」

「まあ、そう言わないで。あそこにいるカイトがじいさんに聞きたい話があるみたいなんだ」

「カイト? 聞いた事ないのう」

「城の者じゃないからな。俺の個人的な友人だ」


 その言葉に少し興味を惹かれたのか爺さんの視線がようやく俺の方を向いた。


「カイトだ。爺さんが昔中級ダンジョンを深く潜った事を小耳にはさんだんでな。話を聞かせてもらいたい」

「なに!! 中級ダンジョンだと!?」


 爺さんは手に何かの器具を持ったまま前のめりに聞き返してくる。

 なにやらすごい反応だな。


「じゃ……じゃあ俺はこれで戻るな?」


 ロイスが何やら焦った表情でそう告げる。


「ん? もう行くのか?」


 そう聞くと、ロイスは顔を寄せ、俺にだけ聞こえるような小声で囁いてきた。


「あの爺さん、自分に興味持った事に関してだけは異様に話が長い。俺は巻き込まれるのはごめんだからな」

「なるほどな……わかった。とりあえず礼を言っておくよ」

「礼にはおよばないさ。借りがあったからな」


 ロイスが部屋を退出する。


「で、ダンジョンについて聞きたい事とはなんじゃ? ワシが40層に到達した時の話か? あの時はすごかったぞ? 次から次へと襲いかかって来る敵をちぎっては投げ、ちぎっては……」


 単刀直入に行くか。俺も爺さんの話を長々と聞く気は無い。


「爺さんが中級ダンジョンでかなり深くまで行った記録を持ってると聞いてな。できればそこに連れて行ってもらいたい」


 一度行った階層へは魔法陣を使って簡単に行くことができる。

 要するに、一層づつ攻略するのが面倒で時間もかかるから一気にショートカットしてしまおうというのが俺の狙いだ。


 爺さんは自分の話をやめ、ギョロリと俺を見つめた。


「連れて行ってどうするつもりじゃ? お主一人で攻略できる訳がないぞ?」


 たしかに、そう思われても無理はないな。

 さて、なんて答えるべきか。

 俺は慎重に言葉を選ぶ。


「ん? なんでだ? あんなダンジョン長いだけで簡単だろ?」

「お前さん本気で言ってるのか?」

「ああ。まあすぐに攻略可能だろうな。さすがにかかる時間まではわからないけどな」

「あのダンジョンはまだ誰も攻略した者がおらんのだぞ?」

「もちろん知っている。全く……この国の者はレベルが低いな。中級ダンジョンさえまともに攻略できないなんて」


 さすがに爺さんもイラッときた様子だ。


「ほう、そこまで自信があるならワシもおぬしについて行こうかの」


 一緒についてきてクリアできなかったら俺を笑い物にでもしようって事か?

 もちろん俺にはクリアできる確信は無い。

 まあどちらにしてもじいさんと一緒に行くという選択肢は無い。


「やめとけ爺さん。あんた現役を引退してるんだろ? 無理は体に毒だ。それは年寄りの冷や水ってやつだな」


 わざと挑発的な言動をとる。


 さらにカチンときた様子だ。まあ当然だが。


「そこまで言うなら連れて行ってやろう。但し、攻略が成功もしくは失敗どちらになってもワシに報告に来い。それくらいならできるじゃろう?」


 攻略なんてできる筈がないと踏んでいるな。

 さすがに気分を害したか。


 だが結果的にこちらの望み通りの展開だな。


「わかった。成功、失敗に関わらず報告に来るよ」

「準備はできとるのか?」

「ああ、いつでも行ける」

「よし、じゃあ転移で連れて行ってやる」


 転移が使えたか、流石は宮廷魔術師。移動の手間が省けたな。


 爺さんの転移で移動を開始する。


 気がつくとそこはもうダンジョンの中だった。

 俺は早速辺りを見回すが、付近に階層を移動するための魔法陣は見当たらなかった。ダンジョンの入口付近に転移してきたわけじゃないのか?


「爺さん。ここは?」

「何を言っておる。お主が望んでいた場所だぞ?」

「魔法陣を使わなくても深い階層まで来れるのか?」


 爺さんは呆れた顔を見せる。どうやら俺の質問はすごく基本的なことらしい。


「魔法陣の設置してある階層なら転移で来れるぞ。無論自分で到達した階層までじゃがな。もっとも、深い階層まで来るのは魔力を無駄に消費するだけじゃから、攻略パーティーは素直に魔法陣を使うのが一般的じゃ」

「じゃあここが昔に到達したっていう爺さんの最高記録の階層なのか?」

「う……うむ。そうじゃ」


妙に爺さんがそわそわしているので、早く帰ってもらうことにする。おそらく怖いのだろう。


「じゃあ、もうここでいい。帰っても大丈夫だ。ここまで連れて来てくれて感謝する」

「どうせすぐ逃げ帰って来るじゃろうて」

「ハハ、まあそうならないように祈っててくれよ」

「フン」


 爺さんが転移で帰るのを見送る。


「さて……行くか」


 前人未到の中級ダンジョン最深部に向かって俺は歩を進めた――



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