4/4
ひそかな戦い
セレンはとっさに身をよじってそれを避けたが、それはあらぬ方向へ飛んで行った。ソフィアは軽く舌打ちをした。
小刀が刺さったところからは煙が立ち上った。
「せっかく高価な毒草を煎じたものを塗ったというのに」
心底残念そうにそうつぶやいてソフィアはレナーシャをみた。
「お嬢さん、どうだい。一緒に来ないかね」
「いやよ。大体小刀に毒を仕込んでくるあたりが嫌いよ」
まぁそう言わずに、とソフィアはレナーシャをなだめる。
「レナーシャ?」
セレンは思わず振り返った。
「隙あり、だよ、お兄さん」
ソフィアはセレンにそう声をかけると、首筋に手刀を落とした。
「セレン!」
意識を失う前にセレンはレナーシャの声を聞いた気がした。
セレンが意識を失ったのち、レナーシャはソフィアを睨みつけた。が、人質をとられている以上、うかつなことはできない。しかもソフィアはレナーシャよりも地位が上だった。下手に反抗すれば、自分の立場すら危うくなる。
それを理解すると同時に、レナーシャから殺気が消えていく。
ソフィアはそれを見てにんまりと笑った。
「聞き分けのいい子は嫌いじゃないよ」