表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

【ファンシーピンク】■05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後 〔04/28〕

◆あらすじ◆

 毎日の学校生活を無為に過ごす、やさぐれ少年の楢崎くん。

 ふとした事からブログで一人ファッションショーを公開する、いちご大好き少女・仲原さんの隠された秘密を知ってしまいました。

 お互いの秘密を握り合う間柄になってしまったクラスメイト二人は、ひょんな経緯から渋々ながらブログの写真撮影をすることに。

 日ごと移り変わる仲原さんの華やかな衣装(いちご柄)。

 日陰者である二人が撮影を重ねる果てに、たどり着く終着点とは?


 まるで定点カメラでいちご柄の部屋を観測するかのように贈る、やさぐれ少年&いちご大好き少女、水と油の二人が織り成すポップ&キュートかつストレンジ&キッチュ、あとプチアダルトな放課後の……そして青春の日々。


=======================================


■ファンシーピンク■

作品概要


・ここは私、岩男ヨシノリが執筆した小説「ファンシーピンク」を掲載するスペースになります(注:pixivからの転載となります)。


・手慰みのように執筆していたものを、この場を借りて発表することにあいなりました。眠れない夜の暇つぶしにでもしていただければ幸いです。


・基本一日イコール一話というペースで、さながら主人公の日記のように展開していきます。

 そのため時系列的に、日付がたびたび飛びまくることになるのですが(例:03日目→06日目)、エピソードの順序が把握できない場合は後書きのもくじを参照くださいませ(もしくは各エピソードのキャプションに[*/28]との表記を設けておりますので、全体の進捗状況をそちらで確認いただけるようお願いします)。


・ご意見&ご感想、ファンアート、はたまたコラボ企画の提案などはお気軽にどうぞ~

 どこかしらのコミュニティや評価スレッドへの推薦なども、ご自由に。

 できるのであれば事後報告を後に頂ければ幸いです(なくても構いません)。


注)劇中の登場人物の極端な行動は、真似しないほうが賢明です。

  違いのわかる方のみお楽しみください。

=======================================

挿絵(By みてみん)

=======================================


■05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後■


=======================================


 矢野の陰謀で屋上から落とされたときからか、それとも仲原が俺にブン投げたからか。

 その後も携帯の液晶漏れは徐々に拡大していき、画面はどんどん黒く染まっていく。

 画面下半分はいまや完全に死亡。

 勘で文字を打っては、その変換効率の悪さにいちいち苛立つ。

 ――因果応報。

 そう云ってしまえば簡単だが、これはちょっとあんまりでないかい、ねえ?

 この携帯、変えてからまだ半年も経ってないんだぜ?

 機種変とか修理代にいくらさっ引かれると思ってんだ。

 携帯キャリアの安心保障サービスとかないわけじゃないんだが「いくらなんでも、そんな早々にぶっ壊れるわきゃねーだろ?」などと高をくくって、小遣いを毎月削るサービスを独断で解約してしまったのが、逆に仇となった。

 ……神様、マジ呪ってやる。

 またも天上人に責任を押しつけながらも、昼休みにいつもの屋上に向かおうとした、ある日。

「楢崎くん!」

 背後から、聴き覚えのある声がして俺は振り向く。

 不本意ながら、いまやすっかりお馴染みとなってしまったその声。

 こないだに引き続いていちご魔人・仲原が俺のところに寄ってきやがった。

 ――なんだよ、またか?

 否応なしに俺は身構えてしまう。

「今から少し、ついてきて欲しい所があるんだけど……いいかな?」

 ええい、もう何度目なんだよ!

 貸し借りはもう清算したんじゃないのか!

「あいにく俺は、仮病が悪化して重篤状態なんだ。後にしてくれ」

 できれば永久に後にして欲しいんだが。

「いいから来てよ!」

 仲原の語調はいつもに増して強かった。

 俺のささやかな願いも虚しく、彼女に手を引かれて強制連行させられる。

 とりあえずアバラの一、二本は覚悟するべき……なんだろな、もう。

 痛くしないでね仲原。

 できればソフトに優しくしてくれ、頼む。


 手を引かれ、向かった先はいつかのコンピュータ室。

 仲原は携行していた鍵をおもむろに取りだし、迷いなくドアを開けた。

 ――って体育館の裏側じゃねえのかよ?

「なんでそんなもんを用意できんだ、お前」

「あたし今日日直」

 最もらしい返答ののち、仲原は手近な席に取りついてPCを立ち上げる。

 職権濫用も甚だしい。

 偉い人にしてはならんタイプだな、こいつ。

 このような専横が世の腐敗を招くのだ。

「んで、こんなひとけのない所に連れてきて、二人きりでナニをしたいんだ仲原」

 人には云えないことなのは確かだろうな。

 こいつの秘密がらみなら。

「次からは体育倉庫に連れこんでくれんか」

「とりあえず、これ見てよ」

 人の話聞けよ。

 仲原は俺の悪ノリも意に介さず、話をどんどん進めていく。

 チッ、つまんねーな。

「はいはい見てやるよ、ったくよー」

 いい加減ピリオドを打たせてくれ。

 お前に関わったせいで修理や機種変の代金がいくらすると――


 なんて思っていたが。

 画面に映るものを見たとき、すぐに俺の目の色は変わった。

 ネットのブラウザ上に映るのは、いちご柄したいつぞやのブログ。

 あれから記事の内容は更新されて、いつか見た内容は画面下の方に追いやられている。

 代わりに新規更新された範囲は、数日前に撮影したあのコラボレーションの内容が中心だった。

 俺とこの写真の被写体である仲原が、一緒になってサムネイルをチェックしてた画像の数々。

 その中から選りすぐられたものが、いくつか仲原の手を加えられてアップされている。

 無論、頭髪や目の色をピンクにしたりホクロ消したりといった、身元を特定されないための隠蔽工作もぬかりない。

 本文のほうも見てみよう。



20XX年5月27日 ぱじゃま!!


 まのデス('-'*)エヘ

 こないだのスカートといっしょに買ったネグリジェ!!

 ヒラヒラでフワフワで最近のチョーお気に(=v=)ムフフ♪

 アト、今回は知り合いのNくんにとってもらいましたあぁぁ

 この場を借りてアリガトさんくす!!

 (以下略)

 コメント:「写真良くなった♪こっちの方が断然イイネ♪」byけい

 コメント:「Nくんすごいです!」byさくら

 コメント:「いつも見てます(゜∀`)ノまのちやんいい知り合いいてよかつたね(゜∀`)ノ」by美嘉



 ――まったく、素直じゃねーんだから。

 最後の言葉に思わず苦笑してみる。

 しかしあの時、シャッターを押しながらも感じていた手応えは決して嘘じゃなかった。

 いくつも連なる、常連の賞賛の返信がそれを裏付けている。

 そのコメントの数々に目を通す度に。

 体の芯から、ふつふつと沸きあがる昂揚感が、俺を滾らせる。

 なんだろう。

 今までに味わったことのない、総毛の立つこの感じ。

 ――俺が成し得た。

 ――俺の撮った写真で、皆が沸いた。

『ワクワクする』

 そんな陳腐な言葉を俺は今まで、額面通りにしか知らなかったのかもしれない。

「楢崎くんが、良かったらなんだけど……」

 そんな俺に向けて、仲原が切り出してくる。

 さも云いにくそうに。

「これからも、ちょくちょく――」

「――次」

 云いかけたその言葉を遮って、俺は聞く。

「え?」

「次、いつやんの? 撮影」

 誰かにこんな風に、褒められて必要とされるなんて初めてで。

 だから俺は、ごく自然にそんなことを聞いていた。

「云ったろ? この俺様が最短一年で北米進出まで押し上げてやるってな」

 それを聞いた瞬間、まるで花が開くように彼女の顔がほころぶ。

 飾らないその笑顔。

「うん!」

 それはあの時撮影した、いくつもの画像よりも。

 これまでにアップしてきたどの写真よりも、ひときわ輝いて見えた。

 ――いつもこうだったら、可愛いんだけどなあ。

 なんて俺も、つられて苦笑してみた。



=======================================



【→】 06日目(5月29日) ガーリィステップ [2013/5/31 更新予定]

    05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後

【←】 02日目(5月25日) 君んちへ行こう

ファンシーピンク

次回予告

=======================================


「その前に着替えるから、あっち行っててよ」

 息巻く俺に対し、軽くあしらうような手つきの仲原。

 野良犬レベルの扱いだ。

「よっし、さーて撮ろうかな~。今日も一日頑張りまっしょい」

 そんな仲原の催促を無視して、いそいそとカメラの準備を始める。

「おい」

「なに遠慮はいらんぞ、容量が尽きるまで激写してやろうではないか。ささ、俺のことは信楽焼きの狸だと思って早ようヌギヌギしとくれや」

「気にするわ!」

「いやむしろ気にするな。楽屋オチショットは基本だぞ? これを用意せんと現場の楽しい雰囲気がリスナーに伝わらんだろが」

 この仲原のヌギヌギするショットだ。

 その筋の奴は辛抱たまらんじゃろ、たとえば矢野とかな。

「断固却下! 強権発動!」

「え~、だってほらこないだ云ってたじゃん! 撮影の為だったら脱いでもいいって!」

「云ってない!」

「いやいや血判状まで押してるの見たね! さあ撮らせろ、俺の為にな!」

 その刹那。

 仲原が床を蹴りあげて、中空を跳ぶのが目に入ったかと思いきや――

「いちごきっく!」

 強烈な跳び蹴りがテンプルに直撃、俺は吹っ飛ぶ。

 クリーンヒットだ。

「ふぐぁ!」

 僕らの仮面ヒーローばりの必殺キックに、俺はあえなくお空の星となる。

 ちびっこの癖になんて威力の跳び蹴りしてやがんだよ。

 お前はどこの神奈川ナンバーワンPGだ、地上から一メートルは跳んでたぞ。

 ――ちなみに一瞬チラ見したが、今日も柄物だったのはここだけの内緒だ。

「てめぇ武力行使してくれやがったな! ここが治外法権なのをいいことに!」

 強引に部屋の外へ蹴り出された俺に、奴はドアを固く閉める音で返す。

「もし着替え撮ってたりしたら、本気で殺すからね!」

 そんなおぞましい一言が隔てた先から聴こえ、遅れて錠を掛ける音がした。

 ……あの跳び蹴りは戯れのうちにすぎなかったのかよ。

 つくづくこいつの恫喝は効果絶大だな。

 殺人すら容認とはいくらなんでも治外法権すぎじゃろ、ねえ?


=======================================


■06日目(5月29日) ガーリィステップ

[2013/5/31 更新予定]





◆もくじ◆ [全28回予定]



●00日目(5月23日) 始まりは唐突に 〔水〕


●01日目(5月24日) 知りすぎた人 〔木〕


●02日目(5月25日) 君んちへ行こう 〔金〕


 ○03日目(5月26日) ※欠番 〔土〕


 ○04日目(5月27日) ※欠番 〔日〕


●05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後 〔月〕


●06日目(5月29日) ガーリィステップ 〔火〕


 ○07日目(5月30日) ※欠番 〔水〕


 ○08日目(5月31日) ※欠番 〔木〕


●09日目(6月01日) ストレンジストロベリー 〔金〕


●10日目(6月02日) ストレンジストロベリーモア 〔土〕


●11日目(6月03日) インタールード 〔日〕


●12日目(6月04日) 君をおかわりしたい 〔月〕


●13日目(6月05日) インタールード その2 〔火〕


●14日目(6月06日) ファニーピンク 〔水〕


 ○15日目(6月07日) ※欠番 〔木〕


●16日目(6月08日) ファンシーパンク 〔金〕


 ○17日目(6月09日) ※欠番 〔土〕


 ○18日目(6月10日) ※欠番 〔日〕


●19日目(6月11日) 勝手にしやがれ 〔月〕


 ○20日目(6月12日) ※欠番 〔火〕


●21日目(6月13日) ままならぬふたり 〔水〕


●22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って 〔木〕


 ○23日目(6月15日) ※欠番 〔金〕


●24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵 〔土〕


 ○25日目(6月17日) ※欠番 〔日〕


●26日目(6月18日) ??? 〔月〕


●27日目(6月19日) ??? 〔火〕


●28日目(6月20日) ??? 〔水〕


●29日目(6月21日) ??? 〔木〕


●30日目(6月22日) ??? 〔金〕


●31日目(6月23日) ??? 〔土〕


●33日目(6月25日) ??? 〔月〕


●??? 〔土〕


●??? 〔土〕


●??? 〔月〕


●??? 〔火〕


●???

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ