【ファンシーピンク】■45日目(7月07日) 彼女は時々スマイルレス 〔25/28〕
◆あらすじ◆
毎日の学校生活を無為に過ごす、やさぐれ少年の楢崎くん。
ふとした事からブログで一人ファッションショーを公開する、いちご大好き少女・仲原さんの隠された秘密を知ってしまいました。
お互いの秘密を握り合う間柄になってしまったクラスメイト二人は、ひょんな経緯から渋々ながらブログの写真撮影をすることに。
日ごと移り変わる仲原さんの華やかな衣装(いちご柄)。
日陰者である二人が撮影を重ねる果てに、たどり着く終着点とは?
まるで定点カメラでいちご柄の部屋を観測するかのように贈る、やさぐれ少年&いちご大好き少女、水と油の二人が織り成すポップ&キュートかつストレンジ&キッチュ、あとプチアダルトな放課後の……そして青春の日々。
=======================================
■ファンシーピンク■
作品概要
・ここは私、岩男ヨシノリが執筆した小説「ファンシーピンク」を掲載するスペースになります(注:pixivからの転載となります)。
・手慰みのように執筆していたものを、この場を借りて発表することにあいなりました。眠れない夜の暇つぶしにでもしていただければ幸いです。
・基本一日イコール一話というペースで、さながら主人公の日記のように展開していきます。
そのため時系列的に、日付がたびたび飛びまくることになるのですが(例:03日目→06日目)、エピソードの順序が把握できない場合は後書きのもくじを参照くださいませ(もしくは各エピソードのキャプションに[*/28]との表記を設けておりますので、全体の進捗状況をそちらで確認いただけるようお願いします)。
・ご意見&ご感想、ファンアート、はたまたコラボ企画の提案などはお気軽にどうぞ~
どこかしらのコミュニティや評価スレッドへの推薦なども、ご自由に。
できるのであれば事後報告を後に頂ければ幸いです(なくても構いません)。
注)劇中の登場人物の極端な行動は、真似しないほうが賢明です。
違いのわかる方のみお楽しみください。
=======================================
=======================================
■45日目(7月07日) 彼女は時々スマイルレス■
=======================================
「――はい終了。答案後ろから回収」
試験官のその言葉と共に、俺たちの戦いは終わりを告げた。
学期末テストの荷がようやく降り、肩の軽さに安堵しつつも立ちあがる。
もう肩で思わず大車輪回しちゃうぜ。
……さて、午後からどうするかな?
答案返答までの時間をいかに仮染めエンジョイするかが懸案事項だ。
気分を紛らわすネタは、多いに越したことはない。
取りあえずチンタオがゲーセンに誘ってくるのは全力で却下な、俺の財政難にこれ以上追い討ちをかけないでくれ、頼む。
「なんや、つまらんなあ」
案の定、奴から予想を裏切らない言葉が返ってきた。
こいつは金かける遊びしか知らんのか?
「あのB組の……ミヤマっつったっけ、女っぽい顔のあいつ。暇なんじゃねえの?」
「よっしー? 奴は弱いからオモロないねん、それにすぐ勝負投げよるし」
気の毒なこと云われてるぞ、ミヤマ。
「んじゃよ、『新しい娘見つけたから』ってこないだ云ってたよな、一丁誘ってこい」
そして俺にも紹介しろ、どんな顔してんのか一度見てみたいもんだ。
サクラザワとタメを張るとか云うんだから、ハイレベルなのは間違いないだろう。
「期末終わったし、誘うにはもってこいじゃね?」
「それやねんけどな、校内中いろいろ探してみてんけど、どうやら他校らしいねんよ。それっぽいのはおらんかったわ」
ご苦労なこった。
チンタオなりにいろいろ努力はしてるようだな、無駄かもしんないけど頑張ってくれ。
「ナラやんこそ、あのいちご大好きっ娘はどないしてん? こないだ久しぶりにブログ見たけど、随分写真のクオリティ上がってたな」
それを聞いて、隠し切れないくらいの笑いがこみあげる。
悪いな、それ撮ってんの実は俺なんだよ。
たまに心霊写真とか撮れたりもするが、そういやチャイナドレスを最後に出てこなくなったな。
ウケ狙いに飽きたんだろうか?
「あのドレスやったっけ? めっちゃええ感じやん。カメラ撮ってる奴もいい表情撮るようになってきたし、あれ浴衣とか水着とか至近距離で撮ってんねんやろ? うらやましいで」
いや~、あんまおだてんなってチンタオ。
これが実力って奴だよ、そして撮影側の特権って奴よ。
知られざる数多のオフショットを見せられないのが実に残念だ。
しかし、次の言葉を聞いて俺のしたり笑いは、そのまま凍りついた。
「でも、あの顔……どっかで見たことあると思うんやけどなあ。こないだ矢野にも聞いてみたら、あいつもそう云っとったし」
……おい、ちょっと待て。
よりによってあの野郎に見せやがったのかよ、やばいぞ仲原!
いろんな意味でピンチだ!
「オイオイ、あんな推定Eカップのでっかいのが身近にいると思うのか、チンタオ? いたら俺が放っとかねーよ」
なんて奴には、それとなく気づかれないように誘導してやる。
「そりゃそうやな、って……なんでお前そんな具体的なサイズまで知っとんねん!」
突如、チンタオはその細い目をかっと見開き、血相を変えて詰め寄ってきた。
うわっ、誘導するつもりがもしかして墓穴掘ってみたりした、俺?
「具体的じゃねえって、推定だ推定!」
「ナラやんお前やってもうたんか? お前のことやからきっと、いろんなことしっぽりやってもうたんやろ! けしからん奴やでホンマ!」
血の涙を流さんばかりの慟哭。
その目を剥いて、奴は俺に食い下がる。
「いたら放っとかねーっつってんだろが!」
「放っとかんかったんやろ! きっと浴衣でいろいろやりよったんや、浴衣で!」
「だから事前で未遂だっての! それに俺の好みを勝手に捏造してんじゃねえ!」
しかしこれで、チンタオの興味を逸らすことができたんだから、結果的にその場をしのぐことに関しては上手くいったのかもしれない。
……でも、この時の俺は知らなかった。
バカやってる後ろ側で、矢野が仲原を、屋上へ連れだそうと声をかけていることに。
俺の及びもつかないところで、ほころびは確実に大きくなっていて。
それぞれの秘密を知らないままに。
誰かが勝手に誰かを巻き込み、俺と仲原の関係は変化の兆しを見せていた。
それを実感したのは、唐突にかかってきた一本の電話だった。
あの日からヒビが入ったままの携帯。
珍しく着信が入り、表示されない相手に警戒しながらも通話ボタンを押す。
実に不便極まりないな。
一体リカバリーに必要な代金いつ貯まるんだろうか、親は自業自得とか云って取り合ってくれねえし……
『……楢崎くん、もしもし?』
「え、仲原?」
着信まで珍しければ、その声の主まで珍しかった。
以前にメアドと連絡先を互いに交換したが、俺の液晶が割れているのもあって、その後音沙汰なかったんだが。
なんで今ごろかかってきてんだ?
『今、いいでしょ?』
「なんだよ、俺が暇してそうなその云い分は」
たまに電話くれたと思えば、いきなり失礼な奴だな。
女の子にいろいろあるのはわかるが、男にだってそれなりにあるんだぜ?
「お前からかけてくるなんて珍しいな、用件はなんだよ?」
まあ期末終わったばっかで暇なんだけどな。
今だって撮り溜めた番組を消化してる最中だし。
『え? あっ、あのね?』
ええい、なにを動揺してんだよ?
この口調はあれか。
俺の脳裏の仲原が、指をくるくるさせながら恥ずかしいことを考える仕草をする。
しかし俺自身も、余裕もって聞いてられるのはそこまでだった。
『今日ね? テスト終わって放課後……矢野くんに呼び出されて、そ、それで……』
うわ。
あいつマジでやりやがったのか。
『……す、好きだからつきあってくれって。いきなり、云われて』
震えた声で言葉を紡ぎだす。
反芻するように、そして自分に云い聞かせるように。
『どうして良いかわかんなくって、返事はじっくり考えさせてから、待ってほしいって云ったけど……ねえ、こういう時ってどうしたらいい?』
動揺じゃなかった、動転してるんだ。
告白された時から今もなお。
いくら免疫がないとはいえ、まさかここまでだったとは。
『こ、こんなこと云われたのなんて初めてで、あたしどうしたらっ……』
「……どうもこうもねえじゃん」
努めて静かに、俺は口を開いた。
「仲原自身、一体どうしたいんだよ? 俺なんぞの意見鵜呑みにしてんじゃ、矢野の奴に失礼だろうが」
自分を抑えるのに必死だった。
そうでないと、なに云いだすのか自分でもわかんなかったからだ。
「本当に矢野のこと考えてんなら、自分で結論出せよ。それが礼儀じゃないのか?」
気持ちを抑えすぎた声で怖がらせてないか、声が震えてるのが丸わかりなんじゃないか?
こういう時だけよく働く、自分の思考が恨めしくなってくる。
「落ち着いてよく考えろよ。お前なりに」
一番気が気でないのは俺自身だろ、なに悟ったフリやってるよ?
ただ、慌てふためく仲原の声を聞いていると、対照的に冷静になれたのもまた事実だった。
『……うん。ちょっとだけ、落ち着いた』
その証拠に、声のトーンが随分と下がって聞こえた。
『楢崎くんの云うとおり、よく考えてみる』
「――ああ」
参考にされても、なにも嬉しくない。
それどころか逆に憂さが溜まってくる。
『あ、あのね?』
云い澱み、言葉が途切れたかと思うと、随分間を空けてお礼の言葉がきた。
『……ありがと、じゃ』
もう聞いちゃいられなかった。
なんでこんな時だけしか素直になれないのかな、俺たち?
一時停止のまま画面が止まっているビデオの、電源をそのまま落とす。
そのままベッドに大の字になってみた。
これが適切なアドバイスだったのか、仲原の為になったんだろうか。
それはわからないし、当人次第としか云いようがない。
ただ一つわかることは、上手くいってもいかなくても、俺が不愉快なのは変わらないということだけだった。
携帯の電源ボタンを押し続け、そのまま画面が沈黙する。
これ以上かかってこないように。
今ごろになって、やっとわかった。
とどのつまり、俺はこれまでの撮影の日々がわりかし楽しくて。
普段の放課後のひとときが途切れてしまうんじゃないかという予感に、無意識に怯えていた。
俺に都合のいい流れに傾くように、いくらでもアドバイスはできたかもしれない。
しかしそれは、本当に仲原の為になることなんだろうか?
単なる俺の身勝手で、あいつの可能性や選択肢を潰していいんだろうか?
これまで散々好き勝手やっておいて、なにを今さらとか自分でも思う。
それでも仲原のこれからを案じてしまう気持ちに、嘘をつく気にはなれなかった。
そして――珍しいはずのその着信は、この日で終わりじゃなかった。
=======================================
【→】 47日目(7月09日) それでも、君んちへ行こう [2013/8/13 更新予定]
45日目(7月07日) 彼女は時々スマイルレス
【←】 38日目(6月30日) はれんちはおわらない
ファンシーピンク
次回予告
=======================================
あの衣装は、自分を守るための鎧。
あの部屋こそ、自分らしくいられる居場所。
いつから仲原がそんな振るまいを始めたのかは、わからないけど。
安全地帯を見つけて、その中で自分に酔って、都合の悪いことをシャットアウトして。
可愛らしい自分を誰かが見つめてくれたなら、あいつはきっとなにも要らなかったんだろう。
そして本当に仲原の欲しかったものは、絵に描いたような彼氏彼女の関係なんかじゃなくて。
コメント欄の文面以外の、ただ一言、リアルで自分を受け入れてくれる肉声の言葉だったのかもしれない。
……いつまでも、都合のいい世界に浸れるわけがない。
そんなこともわかってなかったんだ、仲原は。
――どんなにコメント欄の賛辞を受けても。
――どんなに綺麗なドレスを着飾っても。
彼女はパーティーの予定も相手もいない、ひとりぼっちのお姫様だった。
=======================================
■47日目(7月09日) それでも、君んちへ行こう
[2013/8/13 更新予定]
◆もくじ◆ [全28回予定]
●00日目(5月23日) 始まりは唐突に 〔水〕
●01日目(5月24日) 知りすぎた人 〔木〕
●02日目(5月25日) 君んちへ行こう 〔金〕
○03日目(5月26日) ※欠番 〔土〕
○04日目(5月27日) ※欠番 〔日〕
●05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後 〔月〕
●06日目(5月29日) ガーリィステップ 〔火〕
○07日目(5月30日) ※欠番 〔水〕
○08日目(5月31日) ※欠番 〔木〕
●09日目(6月01日) ストレンジストロベリー 〔金〕
●10日目(6月02日) ストレンジストロベリーモア 〔土〕
●11日目(6月03日) インタールード 〔日〕
●12日目(6月04日) 君をおかわりしたい 〔月〕
●13日目(6月05日) インタールード その2 〔火〕
●14日目(6月06日) ファニーピンク 〔水〕
○15日目(6月07日) ※欠番 〔木〕
●16日目(6月08日) ファンシーパンク 〔金〕
○17日目(6月09日) ※欠番 〔土〕
○18日目(6月10日) ※欠番 〔日〕
●19日目(6月11日) 勝手にしやがれ 〔月〕
○20日目(6月12日) ※欠番 〔火〕
●21日目(6月13日) ままならぬふたり 〔水〕
●22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って 〔木〕
○23日目(6月15日) ※欠番 〔金〕
●24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵 〔土〕
○25日目(6月17日) ※欠番 〔日〕
●26日目(6月18日) ビキニ姿の君が見たいから 〔月〕
●27日目(6月19日) もっとビキニ姿の君が見たいから 〔火〕
●28日目(6月20日) 苺娘々。(すとろべりーにゃんにゃん。) 〔水〕
●29日目(6月21日) はれんちがとまらない 〔木〕
●30日目(6月22日) それなりのプチロマンス 〔金〕
●31日目(6月23日) ヤツの影、再び 〔土〕
○32日目(6月24日) ※欠番 〔日〕
●33日目(6月25日) ファンシーピンク 〔月〕
●38日目(6月30日) はれんちはおわらない 〔土〕
●45日目(7月07日) 彼女は時々スマイルレス 〔土〕
○46日目(7月08日) ※欠番 〔日〕
●47日目(7月09日) それでも、君んちへ行こう 〔月〕
●48日目(7月10日) この夏一番、風の強い午後に 〔火〕
●???




