【ファンシーピンク】■01日目(5月24日) 知りすぎた人 〔02/28〕
◆あらすじ◆
毎日の学校生活を無為に過ごす、やさぐれ少年の楢崎くん。
ふとした事からブログで一人ファッションショーを公開する、いちご大好き少女・仲原さんの隠された秘密を知ってしまいました。
お互いの秘密を握り合う間柄になってしまったクラスメイト二人は、ひょんな経緯から渋々ながらブログの写真撮影をすることに。
日ごと移り変わる仲原さんの華やかな衣装(いちご柄)。
日陰者である二人が撮影を重ねる果てに、たどり着く終着点とは?
まるで定点カメラでいちご柄の部屋を観測するかのように贈る、やさぐれ少年&いちご大好き少女、水と油の二人が織り成すポップ&キュートかつストレンジ&キッチュ、あとプチアダルトな放課後の……そして青春の日々。
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■ファンシーピンク■
作品概要
・ここは私、岩男ヨシノリが執筆した小説「ファンシーピンク」を掲載するスペースになります(注:pixivからの転載となります)。
・手慰みのように執筆していたものを、この場を借りて発表することにあいなりました。眠れない夜の暇つぶしにでもしていただければ幸いです。
・基本一日イコール一話というペースで、さながら主人公の日記のように展開していきます。
そのため時系列的に、日付がたびたび飛びまくることになるのですが(例:03日目→06日目)、エピソードの順序が把握できない場合は後書きのもくじを参照くださいませ(もしくは各エピソードのキャプションに[*/28]との表記を設けておりますので、全体の進捗状況をそちらで確認いただけるようお願いします)。
・ご意見&ご感想、ファンアート、はたまたコラボ企画の提案などはお気軽にどうぞ~
どこかしらのコミュニティや評価スレッドへの推薦なども、ご自由に。
できるのであれば事後報告を後に頂ければ幸いです(なくても構いません)。
注)劇中の登場人物の極端な行動は、真似しないほうが賢明です。
違いのわかる方のみお楽しみください。
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■01日目(5月24日) 知りすぎた人■
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「――おちょくってるのか、楢崎」
やはりというか、俺のもくろみはその一言で見事に崩れ去った。
俺の携帯を片手に、例の画像を見た矢野の感想。
神様あんた、嫌な予感だけはやっぱり裏切らないんだな。
呪ってやる。
――などと他人に責任転嫁しても、現状はなにも変わっちゃくれない。
「お前をおちょくってなにが楽しいんだか」
「こないだ失敗したのに、他の奴の写真使って高値で売りつけようとしてただろ」
けっこう根に持つ野郎だな。
こんなんで、よく今まで共同戦線が破綻しなかったもんだ。
「あの時は膝の裏のホクロの位置が違ってたぞ。半端にウデ良いのが命取りになったな、楢崎」
なんてどうでもいい観察力なんだよ。
たかがスカートの中身で。
その労力をもっとマシな事に費そうぜ、って俺が云えた義理じゃないが。
「……ともかく今回は保留。次回分の結果を見て判断させろ」
そう云って腰を上げ、矢野はこの場をお開きにしようとする。
――ってなんだよ、もっぺん柄パン撮ってこいってのかこの野郎!
我慢ならず、思わず矢野に詰め寄る。
そのまま腕力に任せて、後ろの金網に押し込んだ。
「なんでお前が指揮ってんだ、あ?」
熱くなったほうが負け。
それが互いの不文律、んなこたわかってる。
だがこいつの白いツラを一発ボコらにゃ、今の俺の気が済まん。
「立場対等っつってんだろが、矢野」
しかしこちとら喧嘩上等の構えで迫ってるにも関わらず、矢野は臆すことなく俺に睨み返してきやがった。
云っておくが、こいつはビビリじゃない。
そんな野郎が始めから、盗撮なんぞ提案するわけがなかろう。
しかし、こいつの変に据わってる肝にどんな裏づけがあるのか。
そこが今一つ引っかかる。
……どうでもいいが、至近距離でこいつの顔を見るのはかなりイヤンだな。
今夜夢に出てきそうだ、勘弁してくれ。
「立場対等? 楢崎、俺がいつそんなこと云ったよ」
屋上の金網に追い込まれ、どうひいき目に見ても俺が絶対的優位な状況。
それでも奴はいつもの態度を崩さない。
いい度胸してんじゃねえかこの野郎!
もともとお世辞にも一枚岩とは云えない間柄だったが、てめえとの同盟は現時刻をもって決裂だ!
「あんま調子こいてっと、マジこっから突き落とすぞコラ」
本気で地獄に送ってやろうか?
俺はさらに右手に力を込め、矢野の襟元をねじ上げた。
後ろの網がきしる。
こんなうらなり青瓢箪にてこずるほど、腕力に自信がないわけじゃない。
ワンパン一撃でマットに沈めてくれるわ。
そしていまだ奴が握ったままの、自分の携帯を取り上げようとした、まさにその時。
「あ、」
勢い余って手を滑らせたのか、矢野がわざと落としたのか。
そんな判別ができないほどあっさり、俺の携帯は金網の隙間から、向こう側へと。
――落下。
手を伸ばすも、爪は空しく宙を掻くだけで。
シェルが開いたままのそれが、みるみる眼下に消えていく。
そのまま街路樹の緑に紛れ、完全に見失ってしまった。
え、なにそれ?
ほんの半瞬程度であるが、事の次第を正確に把握できなかった。
ちょっとまて、タチの悪いギャグかよこの展開?
――完全頂点にきた。
なんちゅうエゲつい報復の仕方しやがるこの野郎!
「てめえ、よくも……」
云いかけるも、口をつぐんでしまう。
矢野が故意に落としたという、明確な判断材料は存在しない。
いくら問い詰めたところで云いがかりにしかならない、この野郎はそういう風に仕向けやがった。
手を出したが最後、力で勝っても恥の上塗りを重ねるだけの泥試合。
形勢は逆転。
イニシアチブはいつしか、矢野の手に握られていた。
「立場悪いのはそっちの方なんだよ。さっさと取ってこないと誰かに発見されるぞ」
その言葉を聞いて、血の上った頭が一気に冷える。
進退窮まったのはいつのまにか、俺の方になっていた。
「んじゃ頑張れ、楢崎。俺は一切関知しないからな」
憎いこの野郎は襟元を直して、屋上から立ち去ろうとする。
一度武力行使に出ると、頭よりも手が動くのに躊躇はなくなるもので。
迷いなく後ろから、矢野の肩口をひっ掴んで引き止める。
「なにシラ切るつもりでいんだよ! てめえも共犯だろうが……」
「証拠は?」
あっさりと斬って捨てる矢野。
その一言はなぜか、俺の怒号がどんなに強かろうが遮る力があった。
よくよく思い起こしてみれば、この件に関する物的証拠は、落っことした携帯に集約されている。
矢野はターゲットを絞って、スポンサーの真似事くらいしかやってない。
たとえ奴に追求の矛先が向けられたとしても、証拠画像を消去してしまえば万事無問題。
……分が悪いのは俺だけかよ!
今回みたいなのを見越して共謀してたんなら、なんちゅう狡いやり口なんだか。
「仲原の写真がオジャンだぞ、矢野……いいのかよ?」
それでも俺は、矢野に不利な条件を無理矢理持ち上げようとする。
こんなに内心動揺してんのに、この狡猾野郎だけが涼しい顔してんのが、なんといっても我慢ならんからだ!
「あんなシケた写真なんて別にいるか」
それも空しく、俺の取引条件も矢野は一切意に介さない。
どんなに脅そうが、これ以上は無駄だ。
そう判断した俺は、情けなくも矢野に背を向けて屋上の出口へと駆けだす。
選択肢はそれしかなかった。
あんちくしょう!
ムダ働きの上に今後の展開お先真っ暗かよ、冗談じゃねえぞ!
ヤバいぞ、マジヤヴァい。
もし先公に見つかったら停学か、最悪……
いや、あの高さで落ちたら、バッキリいってる可能性の方が高いかもしんねえ。
機種変とか住所録とか色々リカバリーがめんどいが、ブッ壊れてくれた方が今は幸せだ。
それで証拠隠滅にもなる。
――いや、ちょっと待て俺。
今は昼休み、あの街路樹の往来もそれなりに賑わう時間帯。
どっかの通行人に、脳天直撃とか云う事態もありえなくない。
そうなったら俺、別の罪に問われないか?
ついでにデータ生きてたりしたら、二重でアウトだ。
……あ、そもそも盗撮データは外部メモリの中にも保存してなかったっけ?
だとしたら、焼却炉の中にでも放り込まない限り、物理的隠蔽は無理なんじゃねえか!
変な仕様蔓延させやがって、携帯業界!
――階段を駆け降りながら、様々な思考が脳裏に交錯する。
俺の頭はフル回転状態だ。
やがて一階へとたどり着き。
上着の胸元に指をかけてパタパタしながらも、たびたび屋上を見上げて、落とした位置を目測で確かめる。
クソアジィ。
俺の頭上に矢野の姿は、もうなかった。
奴のことだろう、いつまでも屋上に留まるようなポカするわけがない。
俺を見下すような真似してやがったら、マジでブッ殺すけどな。
ともかくこれで、野郎をダシにできるネタはもう存在しなくなった。
完全犯罪成立だ、おめでとう矢野!
いつかその白い能面を真紅に染めてやる、首を洗って待ってやがれ!
――矢野のことはさておいて(っつーか忘れたい、正直)。
心の中で奴に対しミドルフィンガーを突き立てつつも、懸命な捜索活動に勤しむ。
しかしそれも空しく、ない。
ない。ない。ない。ない!
――大丈夫、多分見つかるだろう、ギリギリでセーフだ。
そんな浅はかで根拠もない希望的観測はあっさりと、はやる焦りに取って代わられようとしていた。
ピンチだ、マジピンチだぜこの俺。
誰かにお持ち帰られた――のなら、これは最悪の事態とみた方がいいのか?
そうこうしてる間に、予鈴とともに昼休みは終わりを迎えようとしていた。
っつーか授業フケるしかねえじゃんよ、マジで。
確か次は移動教室だったが、それも致し方ない――
などと、本来ならば向かっていたであろう理科室の方角をちらり見た、その時だった。
――植え込みの前。
次の授業の用意を携行した女子。
ちょうど携帯が落着した辺りで、なにやら屈んだりしたのが視界の隅に入る。
ジャスタァモーメント!
勇躍、考えるよりも先に足がロケットスタートを決めていた。
強襲、強奪、しかるのちに俺、安泰。
そんな物騒な単語が脳裏をよぎる。
だんだん武力に物を云わす傾向が板についてきたこの俺だが、もはや手段は選り好みしていられない。
「その携帯ちょっと待ったあ!」
俺は跳んだ。
この校内の誰よりも、さながらイカルスのように空高く。
天上のゼウスよ俺に安寧を! モア!
――しかし神が与えたもうた物は、天啓ではなく天罰であった。
「?」
およそ前から数えた方が早そうな背格好の、ポニーテール女子。
小首を傾げる眼鏡の奥の瞳が、いぶかしげに俺を見る。
その手の携帯に表示しているのは、落とす前から映っていた当人の盗撮写真。
俺は盗撮のターゲットが、自分のスカートの中身を見ているという、もの珍しい瞬間に立ち会っていた。
もしかしたら人類初の偉業かもしれない。
――仲原だった。
時、すでに遅し。
間抜けにも、自らの罪をわざわざ仲原本人にカミングアウトしちまったのだ。
俺は彼奴を前にして、跳躍した空中でそのまま静止している。
全身から溢れ出さんばかりにみなぎらせる殺気も、ヤる気に満ちた表情もそのままに。
剥き目に映る世界は、モノクロのように彩度を失ってみえる、そんな五月の昼下がり。
もうだめだ。
もうデッドエンドなんだよこの俺は。
――グッバイ、グッバイ俺のスクールデイズ。
まだ入学して半年も経ってないんだが。
その短くもはかなき青春の光芒が、今は走馬灯のようにきらめく。
高校に入ってまだ彼女もできてなかったんだぜ、俺。
ゆくゆくはひと夏のトロピカルな経験が、俺を待っていたはずだったのに。
それが出来心で、アンデッドマン矢野倦太郎と結託したばかりに、まさか無為に帰すという末路を迎えてしまうとは。
柄パン一つでダウン、それが俺の自業自得な学校生活。
たとえそれが、青臭い若気の至りだとしても。
持て余す若さのほとばしりに満ちた日々を、今はなぜか眩しくも回顧できた。
……青春は一度だけだったんだよな。
ひとつ大人になれたような気がした。
まるで眉間から険がとれたかのように、穏やかな気持ちで。
こんな時でなければ雄弁になれない自分がちょっといじましい。
――とまあ何気にセンチな今の俺は、刹那の間に様々な思いを巡らせていた。
しかも剥き目で。
「……られた」
その呟きで、軽く逃避気味の俺は現実に引き戻される。
非情な現実へと。
ある意味、その現実の非情っぷりは、こいつにも等しいものなのかもしれない。
――俺の責任か、それ。
やがて、沈黙を守っていた奴が口を開いた。
「……見られた」
眼鏡の奥からの、突き刺す視線に思わず目をそむける。
予想はしていたが、結構キッついなこのシチュ。
わかってる、云わんとしてることは。
ぱんつのお子様ぷりちーなプリント柄見られてショックだって。
痛いほど伝わってるから、そんな目で見てくれるな頼む。
ごめんなさい俺が悪かったです済みませんハイ許してくださいマジで。
でもな、見られて困るモン学校に穿いてくんのもどうかと思うんだが――
バチン。
なんか気の毒なほどリキを入れて、仲原は俺のシェルをたたむ。
そしておもむろに、すっくと腰を上げるや否や、
「ばか!」
そう捨て台詞を残して、きびすを返して逃げていった。
途中でつんのめりながら、脱兎の如く駆けていき、ポニーテールを揺らして小さい背中が校舎に消えていく。
呆気にとられた俺だけを残して。
――そして誰もいないこの中庭に、授業の本鈴が鳴りわたる。
それは自分にとって終わりを告げる音なのか、はたまた破滅への始まりなのか。
チャイムの音ってこんなにも空しい響きだったっけ?
負けじと俺も、消えた背中に向かって捨て台詞を放つ。
「俺の携帯返せよ!」
当然の如く、その後授業に遅刻して先生に叱られた。
神様あんた、この仕打ちはいくらなんでもあんまりじゃないか?
マジ呪ってやる。
――しかし、いくら天上人に責任を追及しても現状が変わらないのは事実であり。
俺の足は午後の授業中、ずっと貧乏ゆすりを繰り返していた。
自家発電でもしそうな勢いで。
駆け出した仲原に追いすがることは、流石にためらわれた。
つーかあの場でのうのうと「携帯返してくれ」なんてのたまう野郎はどんだけ神経太いんだか。
少なくとも小市民な俺は、んなもん持ち合わせちゃいない。
そして自分の弱みを握られてもなお、動じないでいられるほど、俺の人間性できあがってもいなかった。
今にして思えば、変に間をおいて気まずくならんうちにアクション起こしときゃ良かったんだが。
生殺し状態にも程がある。
授業に身が入らないのも無理はない。
ああもうとっとと死刑宣告してくれた方がマシだよ、ったく。
背が低いせいか、仲原は俺よりもずっと前の席に座っている。
後ろから覗くその横顔から、先ほどの動揺や狼狽は窺えない。
お前の真意は果たしてどっちだ、仲原。
――それにしても。
じっくり見てみると、けっこう可愛い顔してるんじゃねえか?
眼鏡じゃなかったらそれなり、とか思うんだがどうだろう。
俺もっとムチムチボインな年上がタイプなんだが、ちょっと認識改めてもいいかも。
不覚。
そして放課後。
HRも終わり、学生の本分はひとまず終わりを迎えた――ものの。
終業のチャイムを皮切りに、俺と奴の緊張関係は、さらに緊迫の度合いを増すこととあいなった。
「……楢崎くん」
ついに仲原が、互いの不可侵に踏み込む行為に及んだからだ。
――お礼参りか。
否応なしに俺は身構えてしまう。
「今から少し、ついてきて欲しい所があるんだけど……いいかな?」
ああもう来たー、って感じだな。
放課後体育館の裏側に来いってか、不良式の流儀だなオイ。
年頃の健全な乙女がすることじゃねえぞ。
どうせやるんなら、秘密の逢引の約束にしろってんだ。
「……わかった」
しかし俺に拒否権など存在するわけもなく。
渋々ながら承服して、相手の意向に従う他、選択肢はなかった。
言葉数少なに俺たちは、各々の鞄を抱えて校門をくぐる。
――って体育館の裏側じゃねえのかよ!
どこに連れて行く気なんだ、こいつ。
なんかヤバいことされるんじゃねぇだろうなオイ?
彼女の先読みできない行動に、早くも俺は自分の浅はかさを呪いだす。
帰りてぇー、いやマジで。
チャリ通の俺と、徒歩の仲原。
先導する彼女の後ろを、俺はただ自転車を押して付いて行く。
――それにしても、けっこう歩くな。
自分の通学路から真逆な方向だけに、未知の風景は一層不安を煽る。
穴場そうなレコード店、野良猫が戯れる小径を往きすぎ。
時に信号機の歩行者用ボタンを押したりしながらも、仲原はどんどん先行する。
俺たちの間に会話はない。
沈黙を守りながらも、先の見えない目的地に向かう。
いや、その黙して語らないってスタンスが、逆に不安を誘いまくってるんですけど。
仲原さん。
とはいっても、なにか気の利いた台詞でも吐こうモンなら、あらぬとばっちり受けそうなんで黙ってるしかない。
悲しいが、今日はそう云うツキのない日だ。
「ここ」
やがて彼女は立ち並ぶ民家のうち、一軒の前にて歩みを止める。
表札の表記は「仲原」
――って自宅かよ、オイ!
なにを血迷ったのか、こいつは自分ん家まで俺を連れてきてしまった。
だからお前の意図する物はなんなんだよ、仲原。
俺も男だし、あらぬ方向に妄想が行ってしまいそうになるが、お前は果たしてそれでいいのか。
っていうか、家でかっ。
白い壁面と黒い屋根、様々な観葉植物が植え込みを彩る玄関口。
そしてガレージで寝そべるわんこが一匹。
ハスキー入った雑種だろうか、結構イケメンな顔つきの犬。
ただ、垂れ下がった耳が脱力感を誘うのはご愛嬌かなんかなのか。
なおも仲原の先導に付き従い、敷居を跨いで中に招かれる。
シックで清潔感溢れるインテリアと、頭上に煌めくシャンデリアが俺を出迎えた。
こいつん家って、かなりの金持ちなんじゃないのか?
木造の手すりの触感を確かめながら、階段を昇っていって。
数ある部屋の中で、とある一室の前に辿り着く。
――俺の終着点はここなのか。
そう時間が経ってないのに随分道のりが長く感じられたのは、気乗りしない気持ちをずっと抱えているからなんだろな。
俺の心境はいまや、諦観の域に達していた。
そして「扉を空けろ」と視線を送る仲原。
もはや戸惑いはない。
ここまでの道のりの中で己の運命を受け入れた俺は、それなりの覚悟をもってして来るべき審判に臨む。
矢でも鉄砲でも撃ってこいってんだ。
どうせ死ぬなら一歩でも前のめりに倒れてやる、それが男の生き様よ。
俺は丹田の辺りに力を込め、ヘヴンズドアのノブを回した――のだが。
一歩足を踏み入れると……
それなりの覚悟を決めて扉を開いてみたものの。
俺を待ち受けていたその先は、自分の予想を軽くブッちぎる世界であった。
まさに異世界と呼称しても差し支えないであろう。
辺り一面が、いちご柄に彩られた部屋。
ベッドのシーツも、カーテンもクッションも。
その物品のことごとくがファンシーピンクな色合いをみせている。
しかもいちごのお香まで焚きしめてあるという徹底振りだ。
キュートでシュールでスイートな女の子臭が匂い立つ、加えてアメイジングな仲原の部屋。
――そこはストロベリーの園。
思わず自分が正気なのか疑ってしまった。
何処なんだよ、ここは。
日本か? 日本国だよな? それとも夢?
……ぱたん。
「今のは、見なかったことにさせてくれまいか」
禁断の扉を空けなかったフリをして部屋のあるじに懇願してみる。
時すでに遅し、みたいなニュアンスの言葉が後ろからしたような気がするが、まあ気にしない気にしない。
なんつーか、アレだ。
こういう人種ってアレだよな?
海行ったら磯貝に片耳押し付けて「波の音がする」とか幻聴のたまったりするような部類だよな?
現実問題、貝の中から変な汁がドロッてするっつーの。
運命の人とか、小指の赤い糸とかいう単語を持ち出す輩も同類項だろう。
リヤルから目をそむけてるとか、とにかくそういう奴だ。
つーか今一番リヤルから逃避したいのはこの俺ですよ、いやマジで。
――時、すでに遅し。
その言葉を反芻するのは、これで何回目だろうか。
恐らく今日この日は、今までの半生で一番後悔を重ねた日として、メモリアルグラフィティを彩ることになろう。
……とにかく、なんとか理由つけてこの場から退散しよう。
そいつが吉だ。
俺の直感とかDNAとか阿頼耶識とか、第六感以上が警告している。
生まれる前に亡くなってるけど爺ちゃんが危篤とか葬式とか、下痢便もれそうだとか、とにかくなんでもいい。
究極的には、この数時間の出来事を空白のものにして、思い出せずにウンウン唸って悩むのが一番幸せだ。
つーか頼む、もはや願望。
「見たんでしょ」
そんな願いも空しく。
このスイートな魔窟に対し開いた口が塞がらない俺に、仲原が後ろから声をかける。
多分に恨めしさがこもっているその声。
……わかっちゃいたが、これはもう逃げられそうにないな。
「あたしの秘密……見たんでしょ?」
――は? 秘密?
「……なんだよ、秘密って」
いきなりいちご全開の部屋に無理矢理連れ込んだと思えば、なにを云っとるんだこいつは。
わけわからんぞ。
「この、いちごのことよ!」
仲原は突然語気を荒げる。
うわっ、びっくりした。
「この期に及んでとぼけないでよ、これがその動かぬ証拠っ!」
そう云って、俺の取り戻したかったものを眼前に突きつける。
現在仲原の手中にある、マイ携帯。
再び俺の許に取り戻す為には、悔しくも下手に出ながら機を窺うほか道はない。
「いつから知ってたの? あ、もしかして最近トラバ貼ってきたりするのって楢崎くんだったりする? 女のフリして書き込んだりして……闇でネカマとかやってるわけ?」
眉間にしわを寄せながらも、仲原は矢つぎ早に質問を浴びせかけてくる。
しかも俺の返答は聞いちゃいない。
「いや、あのな……」
トラバ? ネカマ? 身に憶えがなさすぎんですけど。
そんな俺の反論にイラッときたのか、奴の眉間の皺がさらに深くなる。
「この期に及んで云い訳なんて見苦しい! おとなしく自分の非を認めたらどうなのよ? もう、今まで巧妙に秘密にしてたのに!」
なんかが切れたのか、奴はいきなりかんしゃくを起こす。
非は十分認めてる、この家にお邪魔する前の道のりで。
しかしどうも仲原の云い分と、俺の認識のこの齟齬はどうだろう?
……根本的なところで、なんか食い違っていないか?
「落ち着け、まずは落ち着け仲原。建設的に行こう建設的に」
どうどう、と小さな猛牛をなだめながらも、俺のペースに持っていく。
「どんな云われても、巧妙に秘密とか俺はさっぱわからん、どういう意味なんだか」
「え?」
奴は唐突に、面食らったような表情を浮かべる。
「まじ?」
「マジもなにも、いきなりこんなサイケな部屋に連れてきて俺になにをしろと」
その後、数刻の沈黙の果てに。
突如仲原は「あーっ!」とか云いながら頭を抱えてうずくまる。
なにを悶絶しとるんだ、こいつは。
だから建設的にいこう切実に、埒があかん。
慟哭の最中申し訳ないが、その彼女の背中に質問してみる。
「大体だな、お前クラスで一人恥づいパンツ穿いてんの気にしてんじゃなかったのか?」
「は?」
振り向くも、またも意外そうな表情の仲原。
しかしそのリアクションに同じく、意外な表情で返す俺。
今のはちょっと想定外だった。
「クラスで一人って、どういうこと――」
奴の表情が、今度はいぶかしげな色に変わる。
そしてなにかを確かめようと、俺の携帯をカチカチといじり出した。
――なんだ、今のなにも知らないみたいな顔は。
なにも知らない?
嫌な予感が一筋、脳裏を走る。
「その携帯ちょっと待った!」
刹那、俺はまたいつぞやと同じ台詞を吐いていた。
しかし願いは空しく、愚かな歴史はまた繰り返す。
――時、すでに遅し。
繰り返される己の愚行に、またしてもそのフレーズが脳裏をよぎった。
最高機密を発見した彼女の顔が、すごい勢いで真っ赤になっていく。
さながら、いちごのように。
「――最っ低、女の敵」
仲原のこちらに向ける眼差しは、敵意を通り越して侮蔑の域に達していた。
そして俺は再び、奴に制止をかけるモーションのまま静止している。
ヤブヘビやったんすか?
巧みな誘導をしたつもりが、自分で自分に決定的なトドメ刺してみたりした?
奴は俺が今まで撮ってきたブツの数々を、深いフォルダ階層まで探っていたわけじゃなくて。
単に、あの時表示されていた自分の写真だけしか見ていないらしかった。
自己中くさいこの仲原のことだ、己のことだけしか頭になかったのかもしれない。
俺は俺でその画像集を全て見られたと思い込んで、勝手に負けムードになっていただけだったのだ。
黙っていれば俺の罪は、仲原の下履きを撮影しただけに留まっていたかもしれなかったのに。
……俺の世界は闇に閉ざされた、今度こそ本気で。
神様、末代までマジ祟ってやる。
「そこ、現実から逃避しない」
いや逃避させてくれ頼む、つーか願望。
そして俺は、仲原のいちごルームに強制連行され、質疑応答の嵐を受ける。
ちなみにカツ丼は出なかった。
っていうか、客人として招いたのならそれなりにもてなしてくれ。
できたら具とごはんがセパレートになってる奴を頼む。
そんな現在の心境もアレなんだが、一面ファンシーピンクの壁面が平常心をいちじるしく削いでたまらん。
落ち着かない。
よく見るとその部屋の壁紙にすら、いちごが無数に踊っているではないか。
――くわっ、マジで真性だこいつ。
トリップしそうなこの部屋のBGMは、オシャレなラウンジポップ。
それがかえって、戦々恐々の場の空気を演出していた。
いい趣味してやがる、このいちご娘め。
奴の弁を要約すると。
このいちごルームを見るに、仲原は病的入ったいちご大好きっ子で、こっ恥ずかしい趣味を隠してたんだなこれが。
上はポニーテールのヘアゴムの飾りから、下は靴下の柄まで。
なにげない制服姿を装っていても、偏った嗜好はそこかしこに散見される。
しかもあまつさえ、スカートの中身までという念の入れよう。
確認はしていないが、ブラと上下一式セットでおそろに違いない。
彼氏の為でもなんでもなく、絶対そうだ。
ツェー万賭けてもいいぞ。
まあ、こんなチビッコ剥いたからってたかが知れてるが。
サービスにすらならんわ。
決して人に知られてはならないであろう、そんな秘密。
誤解と早とちりの末に、俺は隠しごとを知ることになる。
奴は恥づい下着が知れたのを気にしていたわけではなく、己のいちご色した秘密が露見するのをひたすら危惧していたのだ。
スカートの中身よりも優先事項が上なあたり、こいつの奇特性を察していただきたい。
仲原と自分の、それぞれの秘密。
それをなんとかひた隠しにしようとして、話がおかしな方向に転がり込み、今に至るというのが大まかな流れである。
つーか、なによこの展開? マジありえねー。
――矢野よ。
あの時の狡猾な報復は、予想以上に俺を陥れているぞ。
しかも本人のいざ知らぬ所で百パーセント以上の成果を叩きだしている。
今後のてめえの人生、よもや月の出てない晩に歩けるなんて思うなよ。
完全絶命は必至だぜ。
仲原が俺を見るその瞳は、終始見下したかのような目だった。
チビッコのくせに大上段から見下ろしてきやがる。
実に生意気だ。
「あたしの秘密を知るならいざ知らず、他の子のスカートの中身まで覗くなんて不埒千万。全くどうしてくれようか」
自分の秘密が一番に来てるあたり、こいつの偏った性格が見て取れるな。
なんて反逆してみたい年頃の俺だが、その後にいかなる報復が待ち構えているかを考えると、口を慎まずにはいられない。
せめて、
「痛くしないでね」
などと科を作って、その場の空気を和やかに演出してやる。
「本気でやめれ、気色悪い」
「じゃあ優しく優しく激しくしてくれ、頼む」
その時だ。
奴が足を振りかぶったその刹那、つま先が俺の脇腹を深くえぐる。
――見えなかった。
なんというクイックネス、そして相応の威力。
チビッコのくせに信じられん。
「ふぐぁ!」
もんどり打って、俺は無様にも地べたに這いつくばって。
激痛にしばしの間のたうち回る。
ちなみに仁王立ちしてる仲原のスカートを下から一瞬チラ見したが、今日も柄物だった。
愛好家なのか?
「手ェ出しやがったな! 痛いことしないって云ったじゃん!」
「そんなこと云ってません、しかも出したのは足」
仲原の反応は実に冷ややかで、かつ悪びれがない。
おのれ、柄パンフリークの癖しやがって。
「イタいのはその趣味だけにしろってんだよ、ちくしょう」
――ブチッ。
うっかり口を滑らせた直後、そんな効果音が聞こえたような気がした。
仲原の眉間の皺が、さらに深く刻まれる。
「ふ~ん、そんなに自分の立場を再認識したいの?」
悪役丸出しな台詞とともに、いまだ取り返せない携帯を眼前に見せつけてきた。
「こいつの命がどうなってもいいわけね? 楢崎くんの命運は、あたしの掌の上だってこと忘れてない?」
しかも人質とは卑怯極まりない。
……いや、人じゃないけどな。
それにしてもだ、これが普段地味キャラ装ってる仲原かよ?
クラスの中で目立ちもせず浮きもせず、ともすれば俺内部での存在すら危うい影の薄さ。
事実盗撮のネタが尽きかけてこいつに矛先が向いたとき、やっと――今はこの憎らしい面を――思い出したくらいだ。
それがどうだろう?
この強気ぶりと、それに勝るいちごワールドの有り余る自己主張っぷりは。
猫被りすぎだぞ、この内弁慶。
豹変するのも大概にしろっつうんだ。
「携帯を取るかこの中身をバラされるか、二者択一。今ならもれなく選ばせてあげてもいいけど」
そしてまたしても悪役台詞。
しかも内容はその口調以上にタチ悪いこと極まりない。
――この野郎、調子こきやがって。
いつまでも優位に立てると思ってんじゃねえぞ!
「……わかった、好きにしろ」
「え?」
突然の開き直り発言。
意外な言葉に、仲原は面食らった顔を隠せない。
「どうにでもしろって云ってんだよ。たかが携帯の一個や二個でガタガタ云うほど、俺だってケツの穴が狭いわけじゃねえし」
ヤケ入っていた。
互いの種明かしがもう割れてる今、こうなりゃ正直居直るっきゃない。
「人間な……たまにはどうだって良くなる時もあるんだぜ?」
思わせぶりな台詞で不安を煽ってやる。
――いや、全然どうでも良くねえ。
つーかかなり良くねえ。
内心冷や汗もいいところだが、もはや俺に残された手段は玉砕覚悟のハッタリしかない。
虚勢も力の内だ、ブラフも手段の一つだ。
やぶれかぶれに加えてイチバチの出たとこ勝負。
「な、なによっ」
案の定、さっきまで鬼の首を獲ったような顔の仲原はいまや、見るに平静を欠いていた。
しっかし、わかりやすいリアクションだな。
「でもな仲原、お前がそんな仕打ちしやがるんなら……俺もそれ相応の報復だって考えるぜ?」
そいつが流儀ってもんだろ、ぶっちゃけ。
「この恥づい、いちご趣味に彩られた部屋の一部始終をクラス中にばらまいてやる! それでおあいこだ、良かったな!」
共倒れ、道連れ、死なばもろとも。
死に出の旅は付き合ってもらうぞ、仲原!
自分でも云ってて思う、俺も悪役台詞が大概お似合いだよな。
……とか思ってたが、次の奴の云い分は、
「卑怯!」
衝撃的過ぎて思わず噴いた。
「ちょっと待て! お前にだけは云われたかねぇぞ!」
マジツッコミ入れたろか、こいつ!
「自分のことは棚に上げやがって! 第一なんだよ、ここの手の込みようはよ? 内心見られたい属性バリバリな癖しやがって!」
もう我慢ならん。
こいつに対して容赦は抜きだ、マジで!
「良かったじゃねーか、てめえのぷりちーな趣味が一般公開できてな! こんなラブホまがいの部屋……」
そこまで云いかけて、口をつぐむ。
彼女の、鼻をすする声が聴こえてきたからだ。
「らって、らって、すきなんらもん!」
拳を握りしめ、小さな肩を震わせながら。
やがて仲原は耳まで真っ赤にして、いちごのように真っ赤な目から涙をこぼし始める。
うわ、マジ泣きかよ!
「ならさきくんが、こんな、えぐっ、らぶほのへやなんてはいったことないんらもん! ひぐっ」
なに云ってんだか意味不明だ。
「ばれたっておもって、いちごっ、ひっぐ……」
今さらながら、俺の良心がズキリと痛む。
ホントに今さらって感じだけど。
女の子を泣かしたのはガキの頃以来で、中学経由して高校になった今。
どんなリアクション取ったらいいんだか判らずに、俺はただうろたえてる。
気の利いた言葉なんて正直浮かびやしない。
……ちくしょう、卑怯はどっちだよ。
こんな顔されちゃ、どう転んだって俺は悪者以外に立場ねえじゃんか。
「ああもう、わかった、わかりました! 俺が悪かったよ、もう!」
やがて俺は、自ら敗北宣言を買って出る。
仲原の反則勝ちくさいけど正直もういい。
ジャッジの公正を振りかざそうが、どうしようがこれにゃ勝てん。
それに。
『立場対等? 楢崎、俺がいつそんなこと云ったよ』
『立場悪いのはそっちの方なんだよ。さっさと取ってこないと誰かに発見されるぞ』
仲原をおとしいれて、あの死人面の真似みたいなことをするのも。
秘密がどうとかなんとか、そんな駆け引き云々にこれ以上悩まされるのも。
正直、もう勘弁して欲しかった。
おもむろに、机の上にあったティッシュ箱を奴の前に突き出す。
「取り敢えずちーんしろ、ほれ」
やっぱりその赤い箱には期待を裏切らず、なんの柄なのかは云うまでもない。
絶対いちごの香りつきだぞ、匂わなくてももうわかる。
……うわあ、どこのメーカーだよこりゃ。
イタさをひしひしと感じつつも、敢えて顔に出さないでおく。
「……ん、ありがと」
すっかりしおらしくなった仲原は、素直に二、三枚取って鼻をかむ。
ちょっとドキッとした。
そして互いの心に一抹のしこりを残したまま、取り敢えず事態は収束する。
各々報復の手段を持っている以上、奥の手は決め手にならず、今回の協議は次回に持ち越しとあいなった。
痛み分けって感じだ。
……微妙に俺のほうが、分が悪いとしか思えないんだが。
もうなんでもいいよ、ちくしょう。
仲原の部屋からようやく釈放されて。
玄関から一歩踏み出すと、まぶしい西日が目に痛かった。
――ふう、シャバの空気は美味いぜ。
なんて思いつつ、ガレージから通学用のチャリンコを引っ張り出す。
しかしなんとまあ、大変な一日だったな。
あの生ける死びと・矢野倦太郎にハメられるならまだしも、当の仲原に携帯を奪われて秘密を露見させられる失態を犯し。
およそ日本国の一般家庭とは思えない、あのいちごルームに連れ込まれて尋問されたりとか、リンチされたりとか。
挙句の果てに論破しようにも、女の涙ですべてオジャンだろ。
……冷静に考えると、物凄い転落っぷりだな、俺。
もはや呆れて神様怨む気にもならん。
取り敢えずまあ、ここに来ることも金輪際ないだろう。
アディオス仲原宅。
ああもう、どっと疲れたわ。
そして家の玄関先には、あの犬が先ほどと変わらずゴロゴロしていた。
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【→】 02日目(5月25日) 君んちへ行こう
01日目(5月24日) 知りすぎた人
【←】 00日目(5月23日) 始まりは唐突に
ファンシーピンク
次回予告
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なんですか。
なんですかこのコミュ二ティ。
俺の理解力を軽くブッちぎったアナザーワールドが、このサイトの中で繰り広げられている。
今ひとつ、その波に乗り切れない自分の方が至らないんじゃないか、なんて錯覚するほどに。
……いや、惑わされんな俺。
このパッションは遠巻きに眺めるのが正解なんだ。
深入りすんのは予後が良くない。
きっとそうだ、絶対そうだ。
――俺は今、奴の全てをのぞき見ている。
ブラウザを前にして、ハッキリと確信していた。
感づいていたが再確認。
こいつやっぱり、内心見られたい属性バリバリなんじゃねえか。
奴は俺が、おおやけの場にばら撒くまでもなく、自分の趣味を世界に向けて発信してやがったのだ。
コメント欄の、内輪メンツにヨイショされて。
つーかノリノリじゃんね?
まったくもって変な奴に捕まってしまったもんだな、自分。
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■02日目(5月25日) 君んちへ行こう■
◆もくじ◆ [全28回予定]
●00日目(5月23日) 始まりは唐突に 〔水〕
●01日目(5月24日) 知りすぎた人 〔木〕
●02日目(5月25日) 君んちへ行こう 〔金〕
○03日目(5月26日) ※欠番 〔土〕
○04日目(5月27日) ※欠番 〔日〕
●05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後 〔月〕
●06日目(5月29日) ガーリィステップ 〔火〕
○07日目(5月30日) ※欠番 〔水〕
○08日目(5月31日) ※欠番 〔木〕
●09日目(6月01日) ストレンジストロベリー 〔金〕
●10日目(6月02日) ストレンジストロベリーモア 〔土〕
●11日目(6月03日) インタールード 〔日〕
●12日目(6月04日) 君をおかわりしたい 〔月〕
●13日目(6月05日) インタールード その2 〔火〕
●14日目(6月06日) ファニーピンク 〔水〕
○15日目(6月07日) ※欠番 〔木〕
●16日目(6月08日) ファンシーパンク 〔金〕
○17日目(6月09日) ※欠番 〔土〕
○18日目(6月10日) ※欠番 〔日〕
●19日目(6月11日) 勝手にしやがれ 〔月〕
○20日目(6月12日) ※欠番 〔火〕
●21日目(6月13日) ままならぬふたり 〔水〕
●22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って 〔木〕
○23日目(6月15日) ※欠番 〔金〕
●24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵 〔土〕
○25日目(6月17日) ※欠番 〔日〕
●26日目(6月18日) ??? 〔月〕
●27日目(6月19日) ??? 〔火〕
●28日目(6月20日) ??? 〔水〕
●29日目(6月21日) ??? 〔木〕
●30日目(6月22日) ??? 〔金〕
●31日目(6月23日) ??? 〔土〕
●33日目(6月25日) ??? 〔月〕
●??? 〔土〕
●??? 〔土〕
●??? 〔月〕
●??? 〔火〕
●???