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15/28

【ファンシーピンク】■22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って 〔15/28〕

◆あらすじ◆

 毎日の学校生活を無為に過ごす、やさぐれ少年の楢崎くん。

 ふとした事からブログで一人ファッションショーを公開する、いちご大好き少女・仲原さんの隠された秘密を知ってしまいました。

 お互いの秘密を握り合う間柄になってしまったクラスメイト二人は、ひょんな経緯から渋々ながらブログの写真撮影をすることに。

 日ごと移り変わる仲原さんの華やかな衣装(いちご柄)。

 日陰者である二人が撮影を重ねる果てに、たどり着く終着点とは?


 まるで定点カメラでいちご柄の部屋を観測するかのように贈る、やさぐれ少年&いちご大好き少女、水と油の二人が織り成すポップ&キュートかつストレンジ&キッチュ、あとプチアダルトな放課後の……そして青春の日々。


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■ファンシーピンク■

作品概要


・ここは私、岩男ヨシノリが執筆した小説「ファンシーピンク」を掲載するスペースになります(注:pixivからの転載となります)。


・手慰みのように執筆していたものを、この場を借りて発表することにあいなりました。眠れない夜の暇つぶしにでもしていただければ幸いです。


・基本一日イコール一話というペースで、さながら主人公の日記のように展開していきます。

 そのため時系列的に、日付がたびたび飛びまくることになるのですが(例:03日目→06日目)、エピソードの順序が把握できない場合は後書きのもくじを参照くださいませ(もしくは各エピソードのキャプションに[*/28]との表記を設けておりますので、全体の進捗状況をそちらで確認いただけるようお願いします)。


・ご意見&ご感想、ファンアート、はたまたコラボ企画の提案などはお気軽にどうぞ~

 どこかしらのコミュニティや評価スレッドへの推薦なども、ご自由に。

 できるのであれば事後報告を後に頂ければ幸いです(なくても構いません)。


注)劇中の登場人物の極端な行動は、真似しないほうが賢明です。

  違いのわかる方のみお楽しみください。

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挿絵(By みてみん)

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■22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って■


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 単刀直入に云ってしまうんだが。

 一晩経過して昂揚から覚めた頭で、あんないつまでも残るものを書き込むんじゃなかった、なんて即座に後悔した。

 そんな日の放課後。

『あ』

 間抜けにも二人、驚きの声がまたハモる。

 俺と仲原は下駄箱で、靴を履き替えようとばったり出くわした。

 昨日書きこんだコメントにもう目を通しているんだろうか、こないだよりも別の意味で向かい合うのが気恥ずかしい。

「あ、あのね?」

 仲原も同様にほんのり顔を赤くして、不審なくらいに目線を泳がせている。

「どこ行くの、これから――」

 その言葉に俺は、俺なりの意思を持って応えてみせる。

「今日も撮影すんだろ、なに撮るんだよ?」

 え、と小さくない驚きのリアクション。

 だから露骨な反応してくれるな、こっぱずかしい。

「どこ行こうが、なにしようが俺の勝手だろ。それに云わなかったか? 三年計画で欧州全域を制覇してやるって、な」

 その言葉を聞いた瞬間、曇りがちの表情が一気に晴れわたる。

「うん!」

 飾り気のないその笑顔。

 それはいつかのコンピュータ室で、見せてくれた以来の表情。

 カメラのメモリに残ることのない隠された一面。

 ――本当、いつもこうだったら可愛いのになあ。

 なんて俺もつられて苦笑してみた。


 ずいぶん久しぶりな気もするけど、今日も二人して、仲原を先頭に道を往く。

 当の彼女はいつになく軽やかに、ともすればスキップしそうなくらい浮き足だっている。

「~♪」

 鼻歌混じりの奴の後を、やはり俺はチャリンコを押して続いていた。

 復帰を喜んでくれてるのかどうかは怪しいけど――こいつ自己中だからなあ。

 俺の心配や気遣いなんぞしていないのかもしれないが、まあいいさ。

 こいつの存在ありきの撮影、それはわかってるけど、同時に俺の仕事の成果でもある。

 そして常連連中に良いものを撮って、もっと褒められたいという思いもあった。

 誰かが自分のことを必要としてくれる、そんな環境はここにしかないわけで。

 だから俺自身の意思で仲原邸への道を歩く、今はそれでいいんじゃないかと思う。

 ――もうちょっとだけ、つきあってみるかな。

 嬉しそうな後ろ姿に、バレないよう苦笑してみた。

「……そうだ、ちょっと頼みがあんだけど」

 俺からの提案に、いまだ上機嫌の彼女が振り向く。

「あのギター。置き去りにしてんのもアレだしさ、時々でいいから触らせてくんないか」

 断られるのを覚悟しつつも、一応尋ねてみた。

 あれインテリアじゃないんだから、時々は弾いてやらないと可哀想だろう。

 本音を言えば俺が弾きたい、むしろくれ。

「んー……」

 仲原はちょっと考え込んで、

「いいよ? そのかわり、これからも可愛く撮ってくれる?」

 それは少し不安混じりで、俺が頼み込んでいるはずなのに、いつのまにか仲原の主張が勝っているように見えた。

「いつだって、きちんと撮ってんじゃんよ」


 ……そう、俺はいつもできる限りの努力を払っている。

 問題があるとするならば、こいつの衣装のチョイスしかない。

「しかしだな、この撮影にはまだ改善の余地が残っている」

 仲原の選んだ今日の衣装をあらためて眺めつつも、話を振ってやる。

 華やかないちご柄のワンピース。

 俺は今日初めて撮るんだが、仲違いした日にもこいつが一人でセルフ撮影頑張っていたらしい。

 しかし心残りの残る結果であったようで、仕切り直しに本日リテイクということになった――のだが。

「なになに?」

 全身鏡の前でくるくる回り、自分の姿を確かめながら聞いてくる仲原。

 こいつの性格上、撮影に乗り気なフリをすると、このように食いついてきてくれる。

 俺もだんだん扱い方がわかってきたな。

「……お前って、つくづくせくしー度に欠けるよな」

 これまで撮ってきた撮影を振り返りつつ、感想を述べてみる。

 ロリータに走ってみたり、ギター持って格好つけてみたり、お菓子までわざわざ用意するそのやる気と根性は認めよう。

 しかし可愛く着飾るばかりで、一向にせくしー度アップする気配がないよな。

 期待はしてなかったが、所詮これが限界か。

「そんなにいちごきっく欲しいの? 楢崎くん」

 ……だから身構えるな実力行使に走るな、仲原。

「力づくで解決してどうするよ。それかなにか? いつも武力に訴えるのは自信がないことの裏返しか?」

 ズバリ核心を突いてみた。

 すると仲原は苦々しい渋面で、飛びかかる寸前のままにこちらをにらんでいる。

 おお怖え。

「それみろい。くやしかったらそれっぽい格好で魅せてみろってんだ」

 これは腕づくでうやむやにする仲原への、牽制の意味合いもあった。

「だ、だってっ」

 なんて云いつつも、彼女は互いの人差し指をくるくるやっている。

 これも足らないおつむでピンク色の想像してる仕草だな。

「……は、恥ずかしいし」

 そうぽつりと漏らすと、ほっぺがいちご色に色づく。

 おいおい、今さらなにを云ってんだよ。

「いかん、いかんぞ仲原! もっとありのままの自分をさらけ出してみろ、それでこそ次なる扉は開かれるもんだ」

「なんの扉よ、なんの」

 さてどこの扉かな、さしずめ真夜中への入り口とかだろうか。

 もっともらしい出まかせをくっちゃべってみるが、全ては仲原夜のアイドル化計画(仮称)への布石にすぎない。

「今でこそ好意的かもしれんが、そのうち常連連中に飽きられるぞ? あのコメント欄を否定的な文面で埋めることになりかねん。今こそ新風をもたらす時じゃないのか」

 具体的な未来予想図を提示することで、彼女の気持ちを揺さぶる。

「『かわいい』とか『垢抜けてる』とか云われたいんだろ? 実は見られたい属性の仲原さんよ」

「そ、それはまあそうなんだけど……」

 いまだに仲原は照れながらも、両の指先を合わせてせわしなく動かしている。

 ええい、さっさと陥落しろっつーの。

「仲原……」

 俺はそれまでとは打って変わり、真面目な口調を作って語る。

「かわいいとかじゃなくて、『きれい』とか云われたくないか?」

 その言葉に、彼女はひときわ大きい反応を見せた。

「これまでにない魅力を引き出してやるって云ってんだよ。任せとけって、今までの枚数撮ってきた俺の腕前を信じろ」

「ほんと?」

 伏し目をあげて、すがるような目で俺を見る。

 ――ふっ、堕ちたな仲原。

「何度も云ってるだろ? この俺をそっち系だけの男と思うなって、な」

 その言葉が大きい後押しになったのか、ついに。

「んじゃ今度……ちょっとだけ」

 待ちわびた肯定の言葉に、俺は心の中でガッツポーズを挙げる。

「へ、変とか、笑ったりしないでね?」

「笑わない、笑わないって」

 だってお前が変なのは、今に始まったことじゃないだろうが。

「さて、まず頑張るのは今日の撮影だろ? 別に無理することじゃねえし、今後ゆっくり考えていこうや」

 仕出しのいちごアイスティーをグッと飲み干して、俺はカメラを構える。

 いちご柄のコースターと、氷だけ残したグラスを見て仲原も席を立ち、撮影の準備に臨む。

 まあこうやって気を逸らすのも、長期的な戦略の一端にすぎない。

 ここまできたら勝利は確約されたも同然だ。

 せいぜい俺のシナリオどおりに踊っているがいい、仲原!

 ――俺もつくづく悪役台詞が似合うよな、我ながら。


 しかし、このときの俺は知る由もなかった。

 小さい液晶画面の隅に写っている、恐怖の存在に。


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【→】 24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵[2013/7/9 更新予定]

    22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って

【←】 21日目(6月13日) ままならぬふたり

ファンシーピンク

次回予告

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「なんだか嬉しそうね、楢崎くん」

 仲原邸にお邪魔すると、着付けの手を一時止めた仲原母が出迎えてくれる。

「……浴衣ですか?」

「浴衣です」

 奥さんは即答した。

「お待ちかねは、もう少し待っててね?」

 俺の本心を見透かした言葉を残して、仲原母は二階の奥に消えていく。

 うっわ、俺そんなにも顔に出てたかな?

 面の皮を引き締めようとするも、思わず唇の端がニヤニヤしてしまう。

 リビングに通され、俺はいちごアイスティーを片手にしばし待たされる。

 平常心を装うつもりでいても隠し通すことは難しく、止まらない貧乏ゆすりが本心を表していた。

 ――まだか、ああまだか。

「おっ待たせ~」

「ちょ、ちょっとママ!」

 やがて嬉しそうな奥さんの声と、どこか遠慮がちな仲原の声に、俺は振り向いた。


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■24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵

[2013/7/9 更新予定]






◆もくじ◆ [全28回予定]



●00日目(5月23日) 始まりは唐突に 〔水〕


●01日目(5月24日) 知りすぎた人 〔木〕


●02日目(5月25日) 君んちへ行こう 〔金〕


 ○03日目(5月26日) ※欠番 〔土〕


 ○04日目(5月27日) ※欠番 〔日〕


●05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後 〔月〕


●06日目(5月29日) ガーリィステップ 〔火〕


 ○07日目(5月30日) ※欠番 〔水〕


 ○08日目(5月31日) ※欠番 〔木〕


●09日目(6月01日) ストレンジストロベリー 〔金〕


●10日目(6月02日) ストレンジストロベリーモア 〔土〕


●11日目(6月03日) インタールード 〔日〕


●12日目(6月04日) 君をおかわりしたい 〔月〕


●13日目(6月05日) インタールード その2 〔火〕


●14日目(6月06日) ファニーピンク 〔水〕


 ○15日目(6月07日) ※欠番 〔木〕


●16日目(6月08日) ファンシーパンク 〔金〕


 ○17日目(6月09日) ※欠番 〔土〕


 ○18日目(6月10日) ※欠番 〔日〕


●19日目(6月11日) 勝手にしやがれ 〔月〕


 ○20日目(6月12日) ※欠番 〔火〕


●21日目(6月13日) ままならぬふたり 〔水〕


●22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って 〔木〕


 ○23日目(6月15日) ※欠番 〔金〕


●24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵 〔土〕


 ○25日目(6月17日) ※欠番 〔日〕


●26日目(6月18日) ??? 〔月〕


●27日目(6月19日) ??? 〔火〕


●28日目(6月20日) ??? 〔水〕


●29日目(6月21日) ??? 〔木〕


●30日目(6月22日) ??? 〔金〕


●31日目(6月23日) ??? 〔土〕


●33日目(6月25日) ??? 〔月〕


●??? 〔土〕


●??? 〔土〕


●??? 〔月〕


●??? 〔火〕


●???

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